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最終更新日 :2023.12.27
あらゆる業界でIT化が進む今、テクノロジーの領域を担うITエンジニアの採用ニーズが高まっています。今は別の仕事をしていても、この職業に興味を持っている人は多いでしょう。とはいえ、未経験でITエンジニアに転職できるのかと不安や疑問を抱いている人がいるかもしれません。
そこで本記事では、ITエンジニアの職種やキャリアパスから、現在の転職市場における未経験者の採用動向、ITエンジニアになるために必要な経験やマインドまで、別の業界・職種から転職に成功するために知っておきたいポイントを徹底解説します。
青柳 真理子キャリアアドバイザー部 部長
約10年に渡り、営業職やITエンジニア職の転職支援を行う。新卒就職支援やIT派遣のアドバイザー経験もあり。現在はITエンジニア・クリエイター・マーケター職の転職支援を中心に行うキャリアアドバイザー部の部長。ITエンジニアとは、情報技術(Information Technology、略してIT)を用いて情報システムやソフトウェアなどの設計・開発・運用を行なう技術者の総称です。
自動運転やドローンを中心としたIoT、遠隔診療を含む医療系サービス、物流・倉庫業向けテクノロジーなど、すでに大きな伸びを見せている領域でもIT技術は欠かせないものになっています。
しかし、現在の日本ではIT技術を持つ人材の不足が大きな問題となっています。
経済産業省が調査を委託している、独立行政法人情報処理推進機構社会基盤センターが2021年に発表した『デジタル時代のスキル変革等に関する調査(2021年度)』によると、IT企業でIT人材が「大幅に不足」といった回答が前年比で大幅に増えていると発表されました。
企業だけでなく、国としてもIT人材を増やしていきたいという意向は、年々高まっています。そのため、IT人材が今後も社会で必要とされる職業であることは間違いないでしょう。
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ITエンジニアの仕事内容は幅広く、担当する領域や業務範囲によってさまざまな職種に分かれています。代表的なITエンジニアの職種には、次のようなものがあります。
コンピューターシステムやソフトウェアを設計・開発する職種です。どんなシステムを作るのかを考える「要求分析・要件定義」、「基本設計」、「詳細設計」といった業務がメインです。
業務系システムを開発する場合、クライアントから要望をヒアリングし、その要件をもとにシステムの仕様書を作成して、プログラミング業務を進めます。作業を担当するプログラマーへの指示出しや関係各所との連絡・調整、納期通りに仕事を進めるための進行管理なども、システムエンジニアの重要な仕事です。
また、システムエンジニアには社内のシステム構築・運用保守、社員からの問い合わせ対応を行う社内SEという職種もあります。社内SEは、自社の経営戦略や事業戦略を理解した上で、業績アップや業務改善、コスト削減などに最適なITシステムの導入を検討し、提案します。
プログラミング言語を用いて、システムやソフトウェアを作る職種です。仕様書を作成するのはシステムエンジニアですが、実際にプログラミング作業をするのはプログラマーの仕事になります。仕様書に基づいてコードを書き、設計のミスやバグのチェックなどを行ないながら、正確に作業を進めることが求められます。
プログラマーについて詳しくは下記の記事をご覧ください。
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コンピューターネットワークの構築、運用、保守管理を行う職種です。ネットワークを設計するだけでなく、仕様書をもとにコンピューターや周辺機器を配置したり、回線を設置したりする物理的な作業も発生します。運用を開始した後も、クライアントのニーズに合わせて設定や更新を加えたり、障害やトラブルに対応したりして、快適な通信環境を維持するのもネットワークエンジニアの仕事です。
ネットワークエンジニアについて詳しくは下記の記事をご覧ください。
関連記事:ネットワークエンジニアの仕事内容とは?転職成功のポイントなどを紹介
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コンピューターを運用するためのサーバシステムを設計・構築し、運用・保守まで行う職種です。運用に必要なサーバ機器の性能や台数などを検討してシステムを設計し、必要な機材の配置やケーブルの配線なども担当します。さらには、外部から悪意ある攻撃があった場合に備えたサーバの監視やセキュリティ対策などの保守業務も、サーバエンジニアの大事な仕事です。
なお、サーバエンジニアとネットワークエンジニアは、インフラエンジニアと呼ばれることもあります。
関連記事:サーバーエンジニアとは?インフラエンジニアとの違いや、仕事内容について解説
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Webサイトやモバイルサイト、Webアプリケーションなどの設計・開発、運用・保守を行う職種です。Webエンジニアの中でも役割が分かれていて、ユーザーが目にするWebサイト画面やアプリケーションの入力画面などの開発を担当する「フロントエンジニア」、決済処理や本人認証などユーザーから見えない裏側のシステムを開発する「バックエンドエンジニア」などがあります。
未経験者がITエンジニアとして入社した場合、まずは基本的な業務経験を積むことから始まります。システム開発の大まかな流れは、次のようになります。
上記のうち、一般的に要件定義から詳細設計までが上流工程、プログラミングやテストは下流工程と呼ばれます。未経験者は下流工程からスタートし、経験を積んでスキルを身につけながら、上流工程を目指すことになります。よって「テスト→プログラミング→詳細設計→基本設計→要件定義 」の順に業務経験を積むのが、代表的なキャリアパスです。
また、経験を積めば役職も上がります。例えば「プログラマー→チームリーダー→プロジェクトリーダー→プロジェクトマネジャー」とポジションアップしていくのが代表的なキャリアパスです。
ただし最近は、ITエンジニアのキャリアパスが多様化していて、プロジェクトマネジャー以外に下記のポジションや職種に進む人も増えています。
さらには、システムエンジニアからインフラエンジニアへ転身したり、逆にインフラエンジニアからシステムエンジニアへ転身するケースや、WebエンジニアからWebディレクターになる道もあります。ITエンジニアのキャリアパスは、さまざまな可能性が拓けていると言えるでしょう。
関連記事:ITエンジニアのキャリアプランはどう設計する?キャリアパスの例とスキルアップ方法を紹介
転職市場におけるITエンジニアの採用ニーズは高まっていて、IT業界はもちろん、それ以外の業界からの求人も増えています。医療や建築、ホテル業界などを始め、これまでIT化が進んでいなかった分野でもテクノロジーの活用が急速に進んでいるためです。さらには、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進や5G通信の開始、リモートワークの拡大などを背景に、社会全体でIT活用の機運が高まり、コロナ禍においてもITエンジニアの求人数は伸びています。
ITエンジニアを求める企業が増えたことで、「未経験可」の求人も多くなり、他職種からの転職でも採用される可能性が高まっています。ただし、「未経験可」といっても実務経験もなし、納得感のある動機もなし、努力の形跡もなし、ではなかなか企業も採用しづらいのが現実です。
よって未経験者がITエンジニアを目指すなら、ニーズの高い知識やスキルを学んでおくと、応募できる求人の幅が広がって、採用の可能性も高まります。
プログラミング言語であれば、さまざまな分野で開発言語として採用されているJavaやRuby、PHPやデータベース言語であるSQL、人工知能などに使われるプログラミング言語Pythonなどは、転職市場での需要が高く、求人も多くなります。未経験者はこれらの言語から勉強を始めると、企業側のニーズとマッチする可能性が高まるのでおすすめです。
未経験者がITエンジニアになるためには、どのようなスキルやマインドが必要でしょうか。求められる要件をまとめました。
「なぜITエンジニアになりたいのか」という動機は、ITエンジニアとして働いていけるかどうかを左右する重要な要素です。「手に職をつけたいから」という理由だけでITエンジニアを目指す人も多いのですが、技術が日々進化するITの世界では、常に新しい知識やスキルを習得し続けなければ、エンジニアという“職”を維持するのは難しくなります。
よって未経験者がITエンジニアへの転職を目指すなら、これから長期に渡って経験とスキルを積む覚悟が求められます。自分にその心構えがあるか確認するには、試しにプログラミング言語などを勉強してみるといいでしょう。実際にITエンジニアが使っている知識やスキルに触れれば、自分がこの世界でやっていきたいと思えるかどうかがわかります。転職後のミスマッチを防ぐためにも、ぜひ事前にこの確認作業をすることをおすすめします。
まったく知識のない未経験者でも応募可能な求人はありますが、やはりプログラミング言語は勉強しておくといいでしょう。自分がなりたい職種に必要な言語、市場のニーズにマッチした言語などの習得や自宅でサーバを立ててみるなど、自己研鑽していることを書類選考や面接でアピールすれば、転職への高い意欲が伝わります。
知識を身につけるには、オンラインスクールや専門の講座を受講したり、書籍やインターネット上のコンテンツを活用して独学する方法などがあります。プログラミング言語だけでなく、ハードウェアやソフトウェア、ネットワーク、セキュリティなどIT領域の基本的な知識を学んでおくと、転職後も仕事に活かせます。
ITエンジニアに必要なのは、コミュニケーション力と進捗管理のスキルです。技術職というと、一人でひたすらパソコンに向かっているイメージがあるかもしれませんが、実際の仕事はチームで進めます。特に未経験者は仕事の中でわからないことがたくさん出てくるので、周囲の人に的確な質問をし、必要な情報やアドバイスをもらいながら問題を解決できる力が求められます。またプロジェクトは社内外の関係者と連携して進めるので、誰にでもわかりやすく正確に伝わる話し方を心がけ、立場の違う人とも壁を作らず、自発的にコミュニケーションをとる姿勢が大事です。
加えて、納期を守ってスケジュール通りに仕事を進めていく進捗管理の能力が必須です。計画通りに作業を進めるのはもちろん、予定外の変更やトラブルなどにも臨機応変に対応しながら、確実に仕事をこなすスキルを身につけましょう。
当然のことながら、ITに興味がないとモチベーションは上がらず、仕事がつらくなってしまいます。テクノロジーやプログラミングに対して「面白い」「楽しい」といった感覚を持てることが何より重要です。
また、新しいことを学ぶのが好きな人もITエンジニアに向いています。技術は日々進歩するので、一度覚えたら終わりではなく、新たな知識を学んだり、実際にコードを書いてみたりしながら、積極的に新しい技術を学ぶことが求められます。ITエンジニアは業務時間外に自己研鑽に励む人が多く、セミナーや勉強会、技術者が集まるコミュニティに参加して、新しいスキルを身につけたり、最新の技術について情報交換したりしています。自分の時間を使ってでも新しいことを学びたいと思える人は、ITエンジニアに向いているでしょう。
ITエンジニアの仕事はチームワークで進めると説明しましたが、プログラミングなど一人で黙々とやらなくてはいけない作業も多いのが現実です。特に未経験者が最初に与えられる仕事では、誰とも話さずコードを書く時間が長いケースが多いため、一人の作業が苦にならないこともITエンジニアの条件と言えます。
転職活動をするにあたって、資格は必須ではありません。ただし未経験者が資格を取得すれば、ITエンジニアへの転職意欲が高いことを裏づける材料として評価されます。未経験可の求人では、特定の資格が必須、または「あれば尚可」を条件にしているものも多いので、資格を取得するメリットは大きいと言えます。
未経験者が取得すると転職で有利になる資格としては、次のようなものがあります。
ハードウェアやソフトウェアの基礎知識から、データベース、ネットワーク、プロジェクトマネジメントまで、IT業界で働く上で必要な知識が集約されている資格なので、未経験者におすすめです。正答率60%以上で合格できるため、実務が未経験でもしっかり勉強すれば取得可能なレベルです。
世界最大手のネットワーク関連機器メーカーであるシスコシステムズ社が実施する、ネットワークエンジニアの技能を認定する試験です。世界共通基準の資格であり、取得すればネットワークエンジニアとして基本スキルが備わっている証明になります。
Linux技術者しての技術力を認定する「Linux Professional Institute Certification(LPIC)」のうち、最も初歩的な「レベル1」を認定する資格です。取得すれば、Linuxを扱うための基礎的な技術と知識があることが証明されます。
未経験からITエンジニアへの転職で成功する人には、いくつかの共通点があります。
企業が未経験者を選考する際は、「なぜこの業界・会社で、ITエンジニアとして働きたいのか」を重視します。面接でも必ず質問されるので、面接官が納得する回答ができるように、きちんと準備することが大事です。またプログラミング言語などを自己学習している人や資格を取得した人は、必ず応募書類に記載しましょう。「経験はないが意欲は高い」と企業側にアピールできます。
未経験であっても自分なりに業界や職種について理解し、入社後のギャップを少なくする努力をしている人は、面接でも的確な受け答えができます。単なる憧れだけで選考を通過するのは難しいので、事前にIT業界やエンジニア職について情報収集し、実際の仕事についてある程度のイメージができるようにしてください。
業界や職種と同様、応募する企業について理解していることも大事です。会社のホームページや採用ページ、メディアで紹介された記事などを読み込んで、理解を深める努力が求められます。
これまでのキャリアがIT業界やエンジニア職とはまったく違っていたとしても、その中からITエンジニアの仕事と親和性があったり、活かしたりできるポイントを見つけておくことで、自分の強みとしてアピールできます。例えば前職が顧客との折衝が多い仕事であれば、そこで培ったコミュニケーション能力を活かせるでしょう。チームのスケジュールや納期を管理していた経験があれば、進捗管理能力を活かすことができます。
企業が求める人物像を理解した上で、こうしたポイントを伝えれば「未経験でもITエンジニアの仕事に活かせる能力やスキルが身についている」と評価されます。面接で強みとして伝えるには、その能力やスキルが前職のどのような場面で活かされたのかをエピソードとともに具体的に伝えるといいでしょう。
転職するときは「年収も上げたいし、通勤時間は30分以内、残業なしで土日休み、年間休日は120日以上欲しい」などとあれこれ条件をつけがちですが、転職ですべての希望が叶うことは稀です。特に未経験転職の場合、年収は下がると考えておいた方がいいでしょう。
よって大事なのは、転職で叶えたいことを整理して、優先順位をつけること。「なぜ転職するのか」「転職後にどうなっていたいのか」を明確にして、「必ず叶えたいのはITエンジニアになること。次に譲れないのは土日休み、年収は最低350万円」といったように、自分が重視する軸に沿って優先順位をつけてください。優先順位がはっきりすれば、その条件にマッチする応募企業とも出会いやすくなります。
以上が、未経験からの転職で成功するポイントです。もしうまくいかない場合は、上記のいずれかが足りていないと考えられますので、職務経歴書や面接での受け答えの内容を見直す、企業や業界への理解を深める、意欲の証明となる自己学習を積むなどの対策を行ってください。
とはいえ、自分一人で対策できるか不安だったり、準備をしている中でわからないことが出てくる時もあるでしょう。その場合は、転職エージェントに相談するのもおすすめです。希望する業界や企業、ITエンジニアの仕事について、転職のプロであるキャリアアドバイザーから詳しい情報やアドバイスをもらうことができます。
未経験からの転職に成功してITエンジニアになる夢を叶えたにも関わらず、「実際の仕事はイメージとは違う」「こんなはずじゃなかった」などとミスマッチが生じてしまうのは大変残念です。そうならないためにも、すでに説明したように、希望する業界や職種、仕事内容についてきちんと調べた上で「本当にITエンジニアになりたいか」を確認することが大前提です。また転職先を選ぶ際は、「その会社に入れば、転職で叶えたいことのうち優先順位の高い項目が実現するか」を確認することも忘れてはいけません。
加えて未経験者の場合は、できるだけ具体的に入社後の仕事をイメージするために、次の点も確認してください。
自分が想像する働き方とギャップがないかをチェックするには、先に未経験での入社した人たちがどのような仕事をして、どんなキャリアを描いているかを確認できるとベストです。ITエンジニアになったものの、「休日出勤が多い」「プロジェクトにアサインされず待機が続いている」「やりたい仕事ができない」などの理由で再び転職するケースがよくあります。面接で未経験者の働き方やキャリアを質問するなどして、自分のイメージとずれていないか確認するといいでしょう。
また未経験者はどのように評価されるのか、入社後に研修は受けられるかなど、評価制度や教育制度について確認しておくと、転職後のキャリアをより明確に把握できます。
ITエンジニアは社会全体でニーズが高まっており、未経験者の採用も活発です。IT業界やエンジニア職に興味がある人は、経験がなくても夢を叶えるチャンスと言えます。転職を成功させるためには、ITエンジニアの仕事や目指す業界について理解を深め、自己研鑽を積むなどして、未経験者でも採用したいと思わせる強みをアピールすることが大事です。本記事で紹介したポイントを踏まえ、しっかり準備・対策をして採用選考に臨んでください。
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