IT人材が不足しているのは本当?その理由と未経験IT転職の注意点を解説

最終更新日 :2024.1.30

IT人材が不足しているのは本当?その理由と未経験IT転職の注意点を解説

「IT業界は人材不足というが、本当にそうなのだろうか?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。特に、業界への未経験転職を考えている場合、人材の充足率によって採用難易度が変化することから、気になるところだと思います。

そこで今回は、日本のIT人材の不足状況や、国の行っている対策、企業の採用状況、未経験転職の注意点などを解説していきます。

この記事の監修者
監修者の中嶋 千博

中嶋 千博キャリアアドバイザー部 部長

【保有資格】米国CCE,Inc.認定GCDF-Japan キャリアカウンセラー
航空会社で客室乗務員を経験した後、人生の重要な転機に関われるキャリアアドバイザーに魅力を感じ、「type転職エージェント」へ。以来IT領域専任のキャリアアドバイザーとして12年にわたり転職希望者をサポート。
卓越したIT領域のマーケット知識とインプットされた転職ノウハウを武器に、転職希望者と並走するパートナーとして新しいキャリアの可能性を提案し続けている。
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日本のIT人材不足は本当?

結論、日本のIT人材不足は本当です。経済産業省が発表した「IT人材育成の状況等について」では、2019年をピークにIT関連職種の入職者は退職者を下回ると見られ、同時にIT人材の高齢化が進んでいき、2030年には最大79万人の人材不足が発生すると試算が出ています。

IT人材の供給動向の予測と平均年齢の推移-type転職エージェント

出典元:参考資料(IT人材育成の状況等について)

実際に、2023年11月時点のIT職の有効求人倍率は2.88倍と非常に高いです。このことからも、IT人材の不足状況が分かります。

ただし、全てのIT人材の二ーズが高いというわけではありません。対象分野やスキルによってその需要に変化が起こっています。IT人材の4分類「従来型IT人材」「高度IT人材」「先端IT人材」「情報セキュリティ人材」それぞれについて需要の変化を解説します。

IT人材の種類

これまでのエンジニア未経験者の積極的採用が功を奏し、現在「従来型IT人材」は充足傾向にあります。しかし、他の三つの人材は依然として不足状況にあり、特に「先端IT人材」「情報セキュリティ人材」は、対象領域のニーズが高まっているものの、国内の技術者が非常に少ないです。そのため、技術需要に対して供給が間に合わず、人材不足はより深刻化すると予測されています。

日本がIT人材不足になっている理由

日本がIT人材不足になっている理由をまとめると以下のようになります。

日本がIT人材不足になっている理由

労働人口の減少

総務省が2022年に発表した「情報通信白書」によれば、日本の労働人口(15~64歳)は1995年をピークに減少を続けており、2050年には5,275万人まで減少すると予測しています。IT人材減少も比例して進むことは避けられないでしょう。

IT技術の需要が高い

労働人口が減少しているのとは反比例でIT技術の需要は右肩上がりに伸びています。そのため、IT業界に必要な人数が増えていってしまい、結果として人手不足が悪化してしまっています。

IT人材育成への投資が少ない

経済産業省が発表した「会社の教育・研修制度や自己研鑽支援制度に対するIT人材の満足度」の国別比較を見てみると、米国やインドでは約40%の人材が「満足している」と回答したのに対し、日本はわずか5.2%と、調査国の中で満足度が最も低いことが分かりました。

これには経営層や管理職のITリテラシーが低いことが大きく影響しています。「IT人材育成が大事なことは分かるが、何をすればいいのか分からない」「そもそも、ITリテラシーの高い社員がいない」といった課題を抱える中小企業が多く、教育投資などのIT人材育成で他国に後れを取っている大きな要因の一つと言えるでしょう。

IT人材の給与水準が他国よりも低い

最後に、IT人材の給与水準の低さです。厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「job tag(職業情報提供サイト)」によると、ITエンジニア(ソフトウェア開発技術者、プログラマー)の平均年収は「約550.2万円」です。

国税庁が2023年9月に発表した「令和4年分民間給与実態統計調査」によると、国民の平均年収は約458万円(男性:約563万円、女性:約314万円)のため、ITエンジニアの平均年収は全体の平均よりも約100万円も高いことが分かります。

日本で見ると給与水準が高まっているとはいえ、他国と比較すると、まだまだ低いのが現状です。経済産業省が発表した「我が国におけるIT人材の動向」によれば、日米のIT人材の年代別の年収分布に大きな差があることが分かりました。

日米のIT人材の年代別年収分布

こうした背景から、日本企業ではなく外資企業で働くIT人材も増えています。こういったことも、国内のIT人材不足に拍車をかける要因と言えるでしょう。

IT人材不足がもたらす影響とは

このままIT人材不足が加速していくと、多方面で影響が発生していくと考えられます。予想される影響の例は以下の通りです。

IT人材不足がもたらす影響-type転職エージェント

既にIT業界で働いている人の負担が増える

今後、IT製品のニーズが無くなることは考えられず、むしろさらに高まっていくでしょう。しかし、IT人材不足が増加し続けると、その需要にも対応しきれない可能性が高いです。足りない人材の穴埋めは既存社員で行わねばならず、負担増による残業時間や、離職者の増加が懸念されます。

システム開発が遅れる

人材不足は、開発スケジュールの進捗にも影響します。結果として、企業のDX化が進まなかったり、私たちが日々の生活で使用するのに必要なIT製品・サービスの供給が遅れたりと、国内の経済活動の鈍化にも繋がり兼ねません。

セキュリティがおろそかになる

サイバーテロの脅威もあります。昨今では、クラウドで構築されたシステムも多いですが、クラウドサービスの内容を理解し、かつセキュリティ知見の高いエンジニアはまだまだ少ないです。このまま人材不足が続いてしまうと、リスクマネジメントがおろそかになり、不正アクセス、個人情報の漏洩など、重大なセキュリティインシデントが発生する恐れもあります。

他国に技術面で後れを取る

国内のIT人材の不足が加速すれば、他国と比較してデジタル推進に後れを取ることになるでしょう。

実際に、デジタル技術をビジネス、政府、社会における変革の重要な推進力として活用する能力を測定、比較した「2023年IMD世界デジタル競争ランキング」では、日本は前年調査よりも三つランクを下げ、32位と過去最低記録を更新しています。評価項目の一つである「人材」では、「上級管理職の国際経験」(64位)、「デジタル/技術的スキル」(63位)、「高度外国人材への魅力」(54位)の三つが、かなり順位が低い結果となってしまいました。

ここから、高度IT人材や先端IT人材の不足や、外国からの人材獲得の難易度が高いことが分かります。

参考元:2023年世界デジタル競争力ランキング 日本は総合32位、過去最低を更新

IT人材不足の対策

前述したような、予測される影響を未然に防ぐために、国や企業で対策が行われています。それぞれ解説していきます。

国の対策

文部科学省のもと、小学校で2020年度から、プログラミング教育が必修化されました。規定のカリキュラムがあるわけではなく、学校によって授業内容は異なります。

また、プログラミングスキルを身に付けるというよりは、コンピューターシステムの仕組みを知り、主体的に活用できるようになることを目的としています。即効性のある対策ではありませんが、プログラミングに触れる機会を増やすことで、「ITエンジニア」がキャリアの選択肢の一つにもなるというメリットもあり、長期的に見れば効果があると言えるでしょう。

また、義務教育課程以降の国民を対象にした対策もあります。2022年に発表された「デジタル人材の育成・確保に向けて」という資料では、2022年度からの5年間で230万人のデジタル人材の育成を目標に掲げ、経済産業省、厚生労働省、文部科学省の三省が連携を行って、育成・確保の施策を行っています。各省の施策内容は以下の通りです。

デジタル人材の育成・確保に向けて-type転職エージェント

出典元:デジタル人材の育成・確保に向けて

企業の対策

企業でも人材獲得に向けた対策を取っています。経済産業省が発表した「我が国におけるIT人材の動向」では、新卒であれば、大学時代にAI分野などで優秀な成績を収めた学生に対し、年収1,000万円を提示するなど、他職種で入社する学生とは切り分けて年収テーブルを設ける企業が、大手を中心に増えています。

中途採用の場合でも、優秀なIT人材であれば1,000万円以上、中には3,000万円近くの年収を用意する企業もあるそうです。

他にも、今後起こりうる人材不足の対策として、2022年から2023年にかけて、多くのIT企業で業務未経験のポテンシャル層の採用が盛んに行われました。

今なら未経験でもIT業界に転職しやすい?

結論、2024年はIT業界への未経験転職のハードルは高いと言われています。前述したように、2022年から2023年にかけてポテンシャル採用を積極的に行ったことで、プログラマーといった従来型IT人材は充足し、求人の募集を締め切る企業が増えてきました。これらの職種は、未経験でも挑戦しやすかったことから、必然的に未経験転職のハードルは上がってしまっているのです。

ただし、全ての未経験可求人の募集を締め切っているわけではありません。SES企業を中心に継続して募集をかけている企業もあります。求人数は少なくなってしまっているので、他の応募者との差別化を図るためにも、きちんと対策をして転職活動を行う必要があります。ポイントは以下の通りです。

  • ・業界知識を身に付ける(仕組みや構造、業種など)
  • ・スクールなどに通って勉強している
  • ・ITエンジニアとしてのキャリアプランを設計している

未経験でIT業界に転職する際の注意点

IT業界への未経験転職は、業界や仕事の特性上、注意しなくてはならないポイントもあります。それぞれ解説していきます。

適性があるか確認してから転職する

ITエンジニアとして働く場合、気を付けたいのが適性の有無です。ITエンジニアには、システムの構造を理解できる論理的思考力や、ミスの無いコードを書くために細かい所まで気を配れるといった適性が必要です。なんとなく「手に職を付けたい」といった気持ちだけで転職してしまうと、入社後に「業務に全く付いていけなかった」と早期退職につながってしまうことも。

時間をかけて転職しても、結局すぐ転職活動することになっては本末転倒ですよね。後悔のない転職にするためにも、自分自身がITエンジニアとして長く働けるか、適性を確認する必要があります。

転職の決断は早めにする

前述したように、2024年以降は未経験転職のハードルが高くなると言われています。残っている好条件の人気求人から、どんどん締め切られていくと考えられるので、転職するかしないかの決断は、なるべく早めに行った方が良いでしょう。

判断に悩む場合は、IT業界で働く友人や転職エージェントに相談してみるのもおすすめです。実際に、業界に関わっている人達の話を聞くことで、より自分がIT業界で働くイメージが湧きやすくなるでしょう。

関連記事:転職の相談は誰にすればいい?おすすめな相談先と注意点を解説

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IT業界への転職は転職エージェントの利用がおすすめ

IT業界への未経験転職を考えている方は、転職エージェントを利用して転職活動を行うのもおすすめです。転職エージェントとは、人材を獲得したい企業と、転職をしたい求職者をマッチングさせる仲介者です。キャリアの相談から、求人紹介、選考対策、企業とのやり取り代行など、転職活動のあらゆるフェーズをサポートしてくれます。

IT業界で働いた経験が無いと、企業の良し悪しや、自身との相性などを正確に判断するのは難しいもの。業界に精通した転職エージェントにサポートしてもらうことで、効率良く転職活動を行えるでしょう。

type転職エージェントでは、IT業界への転職サポートに強みを持っています。業界ならではの選考対策が充実しており、面接対策や書類添削も可能です。未経験転職をすべきかどうか、といったキャリア相談も承っています。サービスは無料で利用ができるので、お気軽にご登録してください。

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