転職で「内定が出ない」に陥らないために! 応募時にできる企業選びの考え方【motoさんインタビュー】

最終更新 : 2024.02.28

転職で「内定が出ない」に陥らないために! 応募時にできる企業選びの考え方【motoさんインタビュー】-type転職エージェント

転職活動で苦労しないためには、入り口で「どこに応募するか」は重要です。しかし、応募先を絞り過ぎることで、逆に「内定が出ない」状況を作ってしまっているのかも。転職に成功するための企業選びの考え方とは? 20代の頃から50社以上の転職サイトと転職エージェントを利用し、7回の転職で年収を1500万円以上にアップさせた“転職のプロ”motoさんにお聞きしました。

お話を伺った方
moto(戸塚俊介)さんプロフィール写真

moto(戸塚俊介)さんHIRED株式会社 代表

1987年長野県生まれ。新卒で地方ホームセンターへ入社後、マイナビやリクルート、ベンチャー企業など7社へ転職。営業部長や事業責任者などを務めながら、副業で転職メディアを事業化し、2021年に上場企業へ売却。自身の転職経験を基にした書籍『転職と副業のかけ算』は10万部を超えるベストセラーとなった。 『転職アンテナ』 >>

内定が出ない根本的な理由

――転職活動で「内定が出ない」という場合、さまざまな原因があると思いますが、特に「企業選び」の段階でつまづいているということはないでしょうか?

それもあるかもしれませんが、僕が見ている限りでは、応募している企業数が少な過ぎるのが原因だと思います。どんなに受からない人であっても、20~30社くらい応募すれば、よほど問題がない限りは内定が出るはずです。「内定が出ない」という人に話を聞いてみると、多くの人が1、2社受けただけで「どこからも内定が出ない……」と嘆いているケースが多いです。個人的には行動量が足りていないのではないか、と思います。

応募数を多くすることで、書類選考のポイントが分かるようになったり、面接で緊張しなくなるなど、選考に落ち着いて臨むことができるようになり、内定も獲得しやすくなっていきます。

また、大前提として「内定がもらえる(転職ができる)とは限らない」という視点が抜けている人も多いです。応募する前から「A社に内定したらどうしよう」とか「今より高い年収でオファーをもらったらどうしよう」「A社とB社の両方から内定が出たらどちらに入社しようか」など、なぜか応募した企業に受かる前提で転職を考えている人が一定数います。こういう人ほど、第一志望の選考に落ちてしまったときに「次はどうしたらいいんだろう」と立ち止まる傾向が強くあります。

――並行してできるだけたくさんの企業に応募した方がいいということでしょうか?

そうですね。そもそも受かるかどうかは分からないので、最初から候補を狭める必要はないと思います。応募の段階では、自分は選べる立場にないと思っておいた方がいいです。

絞り込むのは書類選考や面接を通過してからの話。エージェントから紹介された求人を幅広く受けて、どういう企業なら書類選考を通過するのか、どういうことを書くと通過するのか、といったPDCAを回してみるのがいいと思います。

――とはいえ「内定が出たら必ずそこに入社したい」と思える会社にだけ応募したい気持ちも分かります。

気持ちは分かりますが、それで落ちてしまったら次どうするのか、という話です。もちろん受ける分にはいいと思いますし、受かるならそれがベストだと思いますが、幅広く求人を見てみることで、自分が知らなかった企業の中にも良い企業が見つかるかもしれません。なので、そうした企業もまずは受けてみて、選考過程で感じた雰囲気などを含めて判断材料とし、受かってから転職するかどうかを考えたらいいと思います。

「転職エージェントが出してくる求人には自分の希望と合っていないものが多い」と感じる人もいるようですが、「だから応募しない」というのは、もったいない気もします。「ちょっと気になる」程度なら、とりあえず応募して、選考プロセスを通じて判断していくのがいいと思います。

――「数は受けているのにまったく内定が出ない」という人はどうでしょう?

「企業が何を求めているか」という視点が抜けている人が多いと思います。

今いる会社で社内表彰を受けたとか、MVPを取ったなど、表面的な数字だけをアピールポイントにしてしまい、相手が求めているスキルや能力をアピールすることができていない人が多い印象があります。

企業側は「この人はうちでこんな成果を出してくれそうだ」と思われなければ、内定は出しません。社内MVPを獲得したという実績だけでなく、どのような点に注力したのかや、自分が工夫したポイント、どうすればより高い成果を出せたかなど、自分で考えて行動したことを伝えるのが大切です。

――企業が何を求めているか、どんな人を欲しがっているかを知るにはどうすればいいでしょうか?

求人票をよく読み、どんな人を求めているかを転職エージェントなどに確認することが必要です。また、可能であればIR資料を見たり、企業のインタビューを読むことで募集背景を推察することも必要です。給料や福利厚生だけでなく、募集の背景を理解することも非常に大切です。

特に「必要な経験」や「求める人物像」などの欄を注意深く見てください。「●●の経験を●年以上」などと書いてあったら、その経験において求められていることが何か、これまでの経験を活かしてどのような成果を求められているのかなど、一歩先まで考えてみることが必要です。求人票からその企業の課題に関する仮説なども立てられたら、より求めているポイントが明確に分かると思います。

ちなみに、求人票の情報量は、転職エージェントによって違うこともあります。企業との関係性が深いエージェントの方が多く情報量を持っていたりします。しかし、求人を出している企業側があまり多く情報を出していないこともあるので、転職エージェントごとに大きな違いがあるかと言わると難しいところです。

――転職サイトの方が一つの求人あたりの情報量は多い気もします。

表に書かれている求人票の内容だけで見たらそうかもしれません。ただし、求人票には載らない“裏”の情報量が、転職サイトと転職エージェントで大きく違います。

企業との関係性が良い転職エージェントであれば、求人が出された裏側には、そのポジションの人が退職したとか、新規事業の予定があって募集しているなどの、背景情報を持っています。こうした情報は転職サイトでは知り得ません。

また転職エージェントは募集背景だけでなく、どんな人が受かっているか、面接でどんな質問がされるかといった情報も把握している可能性があるので、せっかく転職エージェントを使うのであれば、企業の情報を詳しく聞いておくのがおすすめです。

応募先はどう決めたらいい?

――応募時点では候補を絞り過ぎず、たくさん受けた方がいいというお話でした。とはいえ、どこでもいいというわけではありません。転職先の選び方について、motoさんは「軸ずらし」を提唱していらっしゃいます。

「軸ずらし転職」は、あくまでも転職で年収を上げたいのであれば、という前提でのおすすめです。これまでの職種における経験を活かして平均年収が高い業界に転職する、というやり方で、自分が今いる業界の周辺業界、かつ、より上流に位置する業界を選んでいくのがおすすめです。周辺の業界であれば、ある程度は特徴も分かりますし、アピールもしやすいはずです。

私自身は、小売業界で採用などをしていた経験を活かして、人材業界に転職しました。その後、人材業界で営業経験を身に付け、より平均年収の高いIT業界の営業に転職、その後も同じように平均年収の高い業界に転職することで年収を上げてきました。

軸ずらし転職は難しいのではないかと言われますが、例えば保育士を例にすると、保育士は保育業界で動く以外にないと思われがちですが、そうとは限りません。保育用品のメーカーや教材の会社に転職して年収を上げている人が実際にいます。保育現場の知見が生きるので、営業やマーケティング、企画職なども選択肢に挙がります。他にも、公務員の場合には、地方自治体や官公庁にサービスを提供するベンチャー企業を選ぶことで、営業先として地方の官公庁を開拓する際にこれまでの公務員の経験を活かすこともできるはずです。

――「保育士と教材」「公務員と自治体」、そのくらいざっくりした接点でも転職先の候補になるのですね。

在籍する企業で、自分が営業を受けてきた相手側の業界を見ていくのが分かりやすい次の転職先の探し方の1つかもしれません。「そこで自分がやれることは何だろう?」と考えていくと、応募先の選択肢が広がっていくはずです。

しかし、ITエンジニアの場合はちょっと事情が違います。業界をずらしても、使う技術が同じで、業務も同じだと大きく年収が伸びることはありません。そのため、経営に近い立場や業務を経験していくことが大事になります。「このシステムを開発することで、どれだけの売り上げにつながるか」など、経営視点を持って考えられるエンジニアになることが大切です。

――自分の何を軸に、どうずらすかを自分一人で考えるのは難しそうです。

だからこそ、転職エージェントから出された求人を「自分の希望に合っていないから」と無下にしてはいけないんです。どういう共通点で自分に合っていると思われたのかを確認してみてください。自分が気付いていないだけで、実は合っている、ということもあります。

「いいように踊らされるのでは」と警戒する方もいますが、転職エージェントもそんなに邪悪な存在ではないはずです。もちろん、中にはそういう人もいますが、受けたくない求人を無理やり受けろ、なんてことはほとんどないと思います。仮にあったとしても、きちんと断りましょう。

私自身、過去に利用した転職エージェントで、とんでもない幅広さで求人を提示されたこともありましたが、それを見て視野が広がったこともあるので、エージェントに提案された求人をきっかけに、その業界を調べてみるというのもいいかもしれません。

「本当にここでいいのか」悩んだら

――転職活動の最終局面では、内定を複数得て、その中からどこに決めるかという「企業選び」をしなければなりません。

「この会社に決めていいのかな」という悩みはよく聞きます。「もっと良い会社があるかも」「むしろ今の会社の方が良いのかも」など悩んでしまうのです。

こうした悩みを解決する上で大事なのは、最終的にどうなりたいかという視点です。転職のゴールは「入社」ではなく、「入社後の活躍」なので、入社後に活躍し、自分の市場価値を上げられるか、という視点で考えることが大切です。

さらに言えば入社後どうしたいかだけでなく、その次の転職でどうしたいかという、さらに先のイメージまで持っていれば、内定後の選択で迷うことは少ないのではないでしょうか。

――いくつか内定が出ている中から選ぶのと、一社だけの内定でそこに決めるのか、ではまた違った考えもありそうです。

いろいろな意見があると思うのですが、仮に年収アップを狙うなら、複数の会社から内定をもらった中から選択するのがいいのではないかと思っています。「他社さんではこれくらいの年収でオファーをいただいているので、御社でこれくらい出していただけるなら御社に決められます」という感じで交渉もしやすくなります。

また、選択肢が一社だと現職との比較しかできなくて悩んでしまうこともあります。転職しようと思っていたにも関わらず、未知の環境への不安が勝ってしまい、「やっぱり現職も悪くないかも」となってしまって、結局転職できずに終わる人もいます。そういう意味でも、複数内定を持っている方が比較検討はしやすいのではないかと思います。

――そう考えると年収アップに限らず、複数内定の中から選ぶ方がロジカルに判断できそうですね。

一社から内定をもらってから他社を受け出すと、内定承諾期限内に間に合いません。その点でも、入口の応募の時点でたくさん応募しておくのはやはり大事でしょう。この行動量を保つことが内定を掴むには必要です。

ただ、どれだけ比較して最終決定しても、入社後に「企業選びを間違った」ということもあるんです。

最良の企業選択のために普段からできること

――と言いますと?

自分が求めていたことを見誤っていた、というケースです。どういうことかと言うと、例えば「年収を上げる」を最優先にして年収アップ転職をしたが、ワークライフバランスが下がってしんどい、という方がいます。それは、自分の中でワークライフバランスの優先順位が思ったより高かったと転職後に気付いたということです。

転職活動中は「年収アップ」が一番大事だと思っているので、企業選びではミスっていないんです。だから事前に気付くのは難しい。転職して、経験して、初めて気付く。失って初めて気付くので。

「年収とワークライフバランス」は想像しやすい例かもしれませんが、他にも、役職アップを目指して大手有名企業からベンチャー企業のCFOに転職したけど、無名の企業で働くことが思ったよりストレスで、戻りたくなってしまったなんて例もあります。

その状況になってみないと分からない、自分が大事にしているものが違った、というのは人間なら誰しもあるんだと思いますね。

――なってみないと分からないから避けられない……それでも、なるべく見誤る可能性を減らすには?

あとは何より、最終的に自分がどうなりたいかを定めることが大切です。目先の話ではなく、1年後、3年後を考えてみてください。そうすることで、いろいろな選択肢が見えてくるはずです。

 

自分がどうなりたいかを考える上では、普段からいろいろな求人を見ておくことも大切で、行きたいと思える求人が出ているかどうかは常にウォッチしておくのが良いです。自分が転職したいタイミングでしっかり行動を起こせる態勢を整えておくことが大事なのではないでしょうか。

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