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更新 : 2023.7.31
雇用保険の被保険者が会社を退職した際には、一定の要件を満たすと失業手当が支給されます。失業手当を受け取るには再就職への意思を持ち、初回の支給までには1回、それ以降は2回以上の求職活動が必要です。 しかし、退職理由によっては再就職への意思があっても、すぐに求職活動できない方もいますよね。その場合、求職活動ができる状態になるまで延長できないか気になる人もいるのではないでしょうか。
本記事では失業手当の受給期間は延長できるのか、延長するにはどのような要件が必要なのかなどを解説します。や延長を解除する方法もお伝えするので、該当する可能性がある人はぜひ参考にしてください。
田中 祐也人事課 課長
【保有資格】社会保険労務士、第二種衛生管理者雇用保険の被保険者が、自己都合や会社都合によって退職したときに国から支給される手当です。正式名称は「雇用保険の基本手当」で、雇用保険の被保険者が生活の心配をすることなく求職活動できるようにするのが支給の目的です。 支給額は退職日の直前の6カ月間に支払われた賃金や退職時の年齢によって変動します。
失業手当は雇用保険の被保険者が退職した後、すべての人に自動的に支給されるわけではありません。失業手当を受け取るには、次の要件をすべて満たす必要があります。
受給要件の一つは、離職の日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12カ月以上あることです。1カ月の考え方は、退職日から遡って1カ月ごとに区切った期間に、賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上または時間数が80時間以上ある月を指します。
なお、特定受給資格者および特定理由離職者は、受給要件の被保険者期間が通算6カ月に軽減されます。特定受給資格者とは、会社の倒産や解雇などで退職した人です。一方の特定理由離職者は、有期雇用契約の終了や正当な理由のある自己都合で退職した人です。詳しくは、ハローワークインターネットサービスに記載されているので、ご確認ください。
二つ目の受給要件は、本人に再就職する意思や能力があることです。本人の再就職への積極的な意思を確認するために、ハローワークでは求職申込みを求められます。求職申込みとはハローワークに行った人が最初に行う手続きです。求職申し込みをすると、「失業手当を受け取る」「求人に申し込む」「窓口で相談する」といったことができるようになります。
失業手当の受給期間は、原則として退職日の翌日から1年間です。給付日数は退職理由や退職時の年齢、雇用保険の被保険者期間によって異なります。給付日数が残っていても、受給期間を過ぎてしまうと残った日数分の失業手当を受給することが出来なくなるため注意しましょう。
失業手当の初回申請の基本的な流れは、次のとおりです。
退職後、元勤務先から離職票を受け取ったら、ハローワークに行きます。ハローワークの窓口で離職票や写真、本人名義の預金通帳またはキャッシュカードなどの必要書類を提出し、求職申込みをしましょう。
ハローワーク側で失業手当の受給要件を満たしていることを確認できたら、受給資格が決定します。このときに、雇用保険受給者初回説明会の案内を受けます。日程は指定されているため、必ず出席しましょう。
雇用保険受給者初回説明会では、雇用保険の仕組みや手続きなどの説明を受け、雇用保険受給資格者証と失業認定申告書を受け取ります。失業認定申告書には初回の認定日が記載されているので、当日は忘れないようにハローワークに行きます。
受給資格決定日から7日間は待期期間となり、この期間中は失業手当が支給されません。さらに、自己都合で退職した場合は2、3カ月の給付制限期間が設けられています。給付制限期間は待期期間と同様に、失業手当が支給されない期間です。
また、初回の認定日までに、求人への応募や職業紹介などの1回以上の求職活動が必要です。
【失業手当に関連する記事はこちら】
ここからは、失業手当の受給期間を延長できるのかを解説します。やむを得ない事情により、上記で説明したスケジュールで求職活動ができない方は参考にしてくださいね。
失業手当の受給期間は、原則として退職日の翌日から1年間です。一定の要件を満たした場合に限り、退職日の翌日から4年以内で延長申請ができます。
従来、失業保険の受給期間を延長したい場合、退職日の翌日から30日後から1カ月間の申請期限までに手続きしなければ、受給期間を延長できませんでした。しかし2017年に制度が見直され、延長後の受給期間の終了日までであれば、延長申請ができるようになりました。つまり、退職から30日後から最大4年まで受給期間の延長ができるのです。
注意しなくてはならないのが、満額で失業手当を受給できずに期間満了を迎える可能性があるということです。受給可能日数はすでに勤続年数などで決まっているので、期限内に延長申請したとしても、その申請が遅かったらすべての失業手当を給付できない恐れがあるので、申請は早めに行うことがおすすめです。
たとえば、所定給付日数を90日残した方が、退職の日の翌日から3年11カ月経過したタイミングで受給期間延長を行った場合、退職した日の翌日から4年に到達するまでの残りの1カ月(30日分)は失業手当を受給出来ますが、残った60日分は受給出来なくなります。
失業手当は、働ける状態の人が、生活に不安を抱えることなく求職活動に専念するための制度です。再就職の意思があるにもかかわらず、やむを得ない事情で働けない期間は、受給の延長が可能になります。
ただし受給期間の延長は、あくまでも本人が働けるようになるまで失業手当の支給を保留しておくものに過ぎません。そのため、延長申請しても、所定給付日数が増えるわけではないので注意が必要です。
失業手当の受給期間を延長できるのは、退職後すぐに働けない状況にある人です。「働けない状況」に該当する主な理由は、次のとおりです。
上記の理由で退職し、働けない状態が30日以上続いた場合、申請によって受給期間の延長ができます。
親族の介護は、6親等内の血族と配偶者および3親等以内の姻族のみです。60歳以上の定年による退職後、しばらくの間休養する場合は継続雇用制度で雇用され、制度の終了をもって退職した人も含まれています。
延長申請には、ハローワークに受給期間延長申請書の提出が必要です。
ここからは、失業手当の受給期間を延長するために必要な書類と手順を解説します。
延長申請に必要な書類は、次のとおりです。
受給期間延長申請書は、ハローワークの窓口または郵送で受け取ることが可能です。失業手当の受給手続きの前に延長申請をする場合は、離職票を準備しておきましょう。離職票は、元勤務先が退職手続きを完了した後、本人に直接または郵送などで渡されます。
失業手当の受給手続き後に延長申請する場合は、雇用保険受給資格者証が必要です。雇用保険受給資格者証は、雇用保険受給者初回説明会で配布されます。
延長申請の際には、延長理由を証明する書類の提出が求められます。例えば病気の場合は診断書や医療明細書、出産の場合は母子手帳などです。このほかには、印鑑も忘れずに持参しましょう。
延長申請の手順は、窓口に行く場合と郵送の場合で異なります。
ハローワークの窓口で手続きする場合の手順は、次のとおりです。
手続きに必要な受給期間延長申請書は、ハローワークの窓口または郵送で受け取れます。必要書類を準備したら、管轄のハローワークに持参し、窓口に提出しましょう。
なお、やむを得ない事情で本人がハローワークに行けない場合は、委任状を用意すれば代理人による申請もできます。
郵送で手続きする場合の手順は、次のとおりです。
ハローワークの窓口または郵送で受給期間延長申請書を受け取り、必要事項を記入します。管轄のハローワークの「雇用保険給付・教育訓練給付窓口」に電話連絡し、申請書を郵送する旨を伝えましょう。必要書類を郵送し、延長申請の手続きは完了です。
60歳以上の定年などで離職した後「しばらく休養したい」方は、受給の延長が可能ですが、通常の申請方法と異なります。
受給期間延長の申請手続きは次のとおりです。
延長申請の期限は、退職日の翌日から2カ月以内です。延長可能な期間は、元々の受給期間1年と休養したい期間を合わせた期間になります。休養したい期間は、最長でも1年間です。
申請に必要な書類は、受給期間延長申請書と離職票の2点です。ほかのケースと異なり、郵送での申請には対応していません。原則として本人が直接ハローワークに行き、書類を提出する必要があります。
働ける状態になった場合は、管轄のハローワークで受給期間延長を解除する手続きが必要です。手続きの際に必要な書類は、次のとおりです。
受給期間延長通知書は、受給期間の延長が認められた際に交付される書類です。受給期間の延長が不要になったときには、それを証明できる書類を準備しましょう。例えば育児が落ち着いた場合には母子手帳、病気が完治した場合には診断書などです。解除後は、すべての人に7日間の待期期間が発生します。給付制限がなければ、申請日を含む7日間の待期期間満了日の翌日から失業手当が支給されます。
失業手当の延長は、やむを得ない事情がある場合に限られます。そのため、まずは自身のケースが延長要件を満たしているかの確認が必要です。延長は失業手当の支給を保留するための期間になるため、失業手当を受け取れる期間が長くなるわけではありません。
やむを得ない事情に該当しなければ失業手当が支給されるため、再就職に向けて積極的に求職活動を行いましょう。求職活動の実績を残すには、転職エージェントの利用がおすすめです。ハローワークが認める求職活動の範囲には、民間職業紹介事業者が実施する職業相談や職業紹介も含まれています。
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