2022年〜2023年版IT業界・Web業界の転職市場トレンド

最終更新日 : 2022.10.24

2021年 IT/Web業界の転職市場トレンド

コロナ禍による社会的・経済の混乱もようやく落ち着きを見せ始めた中、IT業界・Web業界の転職市場がどのように動くのか気になっている方も多いでしょう。本記事ではソフトウエアや情報処理システムなどを扱うIT業界と、ECやSNS、Web広告などを取り扱うWeb業界に分けて、2022年から2023年に掛けての転職市場のトレンドを解説します。

この記事の監修者
監修者の川島 達矢

川島 達矢クライアントサービス部 部長

15年以上にわたり、一貫して人材業界に従事。企業担当チーム複数のマネジメントを経て、現在はIT業界の求人企業を担当するクライアントサービス部の部長。IT・Web業界を得意とする。

2022年〜2023年 IT業界の転職動向

企業にとってDXや内製化、クラウド化の推進が急務となる中、IT業界では職種を問わず、引き続き採用ニーズの高い状況が続いています。業種で見ても、SES、ITコンサル、SIerのいずれも採用数を増やしています。

そのため企業間で人材獲得競争が激しくなり、2021年の採用数が目標に届かなかった会社も多く、その分を取り戻そうと2022年から来年にかけて、より高い採用目標を掲げているケースが多いです。企業が、なんとかして人材を獲得しようと採用要件を緩和する傾向も強まっています。例えば従来は「経験3年以上」としていた求人を「経験3年未満も可」としたり、給与や年収の水準をアップしたりする事例が増えています。

2020年頃までは、コロナショックにより先行きが見通せず、採用を一時的に縮小・停止する企業も少なくありませんでした。また転職を考える人たちも「このタイミングで動いて大丈夫なのか」と躊躇する傾向が見られました。

しかし2021年までの2年間で緊急事態宣言やまん延防止重点等措置を経験したことで、企業も転職者も新型コロナウイルス感染症との付き合い方が分かってきたこともあり、2022年現在は両者ともに人材採用や転職活動の動きが活発化しています。アメリカのインフレやロシア問題など世界経済で気になる部分もありますが、今後もこの傾向は続くと考えていいでしょう。

なお採用プロセスについては、コロナ禍以降、全てオンラインで完結する企業が多くなっていますが、2022年に入ってからは一部対面の面接に戻す企業も出てきました。この2年間はオンライン選考のみで採用してきたものの、入社後の定着率が低かったり、ミスマッチが生じたケースも少なくなかったため、「やはり実際に会ってみないと評価できない」と考える企業が増えたことが背景にあります。特に自社サービスを手掛ける職種では、本人の価値観や人柄が会社のビジョンや組織風土にマッチするかが重視されるため、対面の面接を希望する企業が多い傾向です。

ただしその場合も全てのプロセスを対面にするわけではなく、最終面接を対面にして、その他の選考はオンラインで行うといったパターンが主流です。コロナ禍を機に広まったオンライン選考は、すでに一般的な採用手法として定着したと言っていいでしょう。

IT業界の人材動向

PM/PL経験者のニーズは引き続き高い

すでに述べたように、企業がIT人材の採用を強化する背景には、DXや内製化、さらにはリモートワークの拡大に伴うセキュリティ対策の強化といったニーズの拡大があります。コロナ禍以降に加速した環境変化に対して迅速な対応を迫られる中、案件を確実に遂行できるスキルや実績を持つプロジェクトマネジャー(PM)やプロジェクトリーダー(PL)経験者を求める企業が引き続き多くなっています。

IT未経験者を積極採用する企業が増加

人材獲得競争の激化を受けて、未経験者の採用が加速しています。福利厚生としてプログラミングスクールと提携するなど、人材を社内で育成する仕組みや体制を整備する企業が増え、20代の若手であれば、前職が販売職やサービス職などまったくのIT未経験者でも採用しています。また技術職でなくても、その業界での経験が2〜3年あれば、業務知識が強みとなって採用されやすくなります。

フルリモートを希望する転職者が増加

転職者側の動きとしては、リモート勤務を希望する人が増えています。コロナ禍で一時的または一部業務でリモートワークを経験した人たちが、フルリモート可能な転職先を希望するようになったためです。

ただしその希望を叶えるには、受け入れる企業側に社員がリモートで活躍できる仕組みが整っていることが必要です。過去にそういった実績がある企業以外では、なかなか希望が通らないのが現状です。

年収アップを希望するなら武器となる強みが必要

転職者側のもう一つの傾向として、「現職より高い年収」を条件に挙げる人が増えています。これは昔に比べ、SNSなどを通じて、身近な人が転職によって年収が上がった体験談を聞く機会が増えたことが要因と推測されます。

ただし現実には、どんな人でも年収が上がるわけではないので注意が必要です。転職で年収を上げるには、それに見合う成果を出せる人材であると証明する必要があります。最近の事例では、SIerからITコンサルタントへの転身で年収が200万円アップしたケースもありますが、それは前職で高い実績を残していたり、特定領域の専門性を極めていたりと、何らかの「年収が上がる根拠」を持っていたからです。

年収アップを望むなら、現在の自分に武器となるスキルや経験があるのかを知る必要があります。転職市場に詳しいキャリアアドバイザーに相談し、客観的な視点から自身の市場価値を評価してもらうといいでしょう。

IT業界のトレンドキーワード

TX(トータル・エクスペリエンス)

「UX(ユーザーエクスペリエンス)」「CX(カスタマーエクスペリエンス)」「EX(エンプロイーエクスペリエンス)」「MX(マルチエクスペリエンス)」を連動させ、顧客や従業員などを含めたステークホルダー全員の満足度を追求する考え方です。2020年に米国のガートナー社が発表したテクノロジートレンドで、高い注目を集めています。

NFT

ブロックチェーン上で構築できる代替不可能なトークンです。唯一無二の価値を生み出せるため、フィンテックやゲーム、不動産取引やアートなどの領域で実用化が進んでいます。

AIOps

AI(人工知能)やML(機械学習)、ビッグデータを組み合わせて、IT業務の効率化や自動化を図り、システムの安定的な運用を支援する運用手法です。データ処理の速度・正確性の向上や、コストやリソースの削減につながるノウハウとして注目されています。

CoE(Center of Excellence)

もともとは組織横断の取り組みを行う際に中核となる部署や研究拠点を意味する言葉で、企業がDXを推進する際にも使われます。大手企業ではCoEを担う専門チームを立ち上げ、そのメンバーが外部のコンサルタントなどと協力しながらデジタル改革を進めるケースが増えています。

2022年〜2023年 Web業界の転職動向

Web業界も採用ニーズが高まっています。2020年はコロナ禍の影響で多くの企業が売上を落としたものの、2021年は一転して過去最高益を出す企業が続出しました。そのため中途採用についても、2021年にかけては感染状況を見ながら少しずつ採用数を増やす企業が多かったのに対し、2022年に入ってからはより多くの人材を獲得しようとする動きが多く見られました。採用要件を緩和する企業も増えており、この流れは2022年後半以降もさらに加速すると見られます。

最も採用数を伸ばしているのが、インターネット広告系の企業です。広告業界は過去にも未経験者を採用していた時期がありましたが、今またその流れが戻ってきており、広告業界での就業経験がなくとも、販売サービス業でのSNS担当、ECサイトに関する業務担当、オンラインでの接客経験がある人材などの採用事例が見られます。

SaaS系の企業も事業フェーズによって差はありますが、異業界出身者、未経験者の採用が加速しています。Web業界全体でコロナ前より未経験者が採用されるチャンスは広がったと言えるでしょう。

Web業界の人材動向

働き方に制約がある人も積極採用

コロナ禍で先行き不透明だった時期は、企業側も人材を採用する体力をどれだけ維持できるか見通しが立たなかったため、働き方に制約があるなど、リスク要因を抱えた人材は採用を見送らざるを得ませんでした。

しかし2022年に入ってからは、多様な人材を柔軟に受け入れる企業が増えつつあります。例えば時短勤務を希望するワーキングマザーをあえて採用するなど、時間の制約があっても優秀な人材を積極的に獲得する事例が見られるようになりました。また転職者側から時短勤務やリモートワークなどの希望を伝えた場合も、できるだけその働き方を実現できるように企業側が相談に乗ってくれるようになっています。

SNS発信など個人の実績が買われて採用される未経験者も

前述の通り、未経験者の採用も活発化しています。前職が非マーケティング職でも、個人としてSNSで発信をしていて大勢のフォロワーがいる人が、そのノウハウを買われてデジタルマーケティング系の企業に採用されるケースなどがあります。

転職活動で提出する書類にこうした実績を記載しない人も多いのですが、仕事以外の出来事でもWeb系サービスに関する経験や成果があればアピール材料になるので、忘れずに書くようにしましょう。

未経験者でも前職の実績や数字を見られる

未経験者であっても、採用選考では前職の実績や数字をしっかり見られます。特にコロナ禍以降はどの業界・業種も大きな環境変化にさらされ、この1〜2年は自分が担当する業務でも変化への対応を求められたはずです。

それに対し、どのような工夫や努力をして乗り越えたのかを面接などで伝えることにより、「環境が変化しても成果を出せる人材」として評価につながります。

経験者採用の2大トレンドは「PM経験者」と「プログラミング技術者」

経験者採用には2つのトレンドが見られます。1つは、PM経験者を求めるケース。Web業界では開発を外注する企業も多いため、プロジェクトを取りまとめられる人材のニーズは引き続き高い傾向にあります。

もう1つは、プログラミング技術を持った人材を求めるケース。外注するケースが多いとはいえ、コストを抑制するために内製化を図る企業も増えているため、手を動かせる技術者を採用したいというニーズがあります。

人材確保のため業界全体で選考基準が下がる傾向に

経験者採用における採用要件の緩和も大きなトレンドです。業績が伸びている企業では、エンジニアが増えないと自社のサービスを拡大できないため、とにかく人数を確保したいと考えます。しかし人材獲得競争が激しくなっているため、大手が選考基準を下げたら、中小も下げざるを得ないのが現状です。その結果、業界全体で転職者に求める経験年数やスキルの引き下げが続いています

ただし選考基準を下げたとしても、現場で活躍するには一定のスキルが必要になるため、入社後の育成に力を入れる企業が増えているのも最近の傾向です。

「Web系スキル+コミュ力」で総合的に評価される

一方で転職者側は、学習意欲の高い人が増えています。未経験者でも独学で資格をとったり、Webデザインやマーケティングを勉強したりする人が多くなりました。経験者でも、未経験の領域や技術を業務外の時間で勉強している人が少なくありません。

ただし企業の採用選考では、Web系のスキルやデザインセンスだけで評価されるわけではありません。Web開発は社内外の人たちと連携して仕事を進めなくてはいけないため、コミュニケーション力や人間関係を構築する力なども重視されます。転職活動では、こうしたヒューマンスキルを含めて総合的に評価されることを心得ておく必要があるでしょう。

Web業界のトレンドキーワード

クラウドインフラ

Web業界でもDXを推進したいというクライアントニーズがますます高まっており、サービス開発だけでなく、ITソリューションに近い領域への対応が求められるようになっています。例えばインターネット広告の企業に対し、以前なら「キャンペーンサイトを作って欲しい」とオーダーしていたクライアントが、「自社内のデータを有効活用したい」「営業活動を効率化したい」といったビジネス上の課題解決を求めるケースも増えています。

そのためにはWebサイトの企画・開発だけでなく、システム導入やクラウド対応から引き受けなくてはいけません。Web業界でもAWS(Amazon Web Service)などのクラウドインフラは、もはやトレンドではなく主流となっています。クラウドを使ったシステム構築はIT企業が行い、それを活用してクライアントのビジネスやサービスを成長させるのがWeb系企業の役割です。

まとめ

2022年は、IT業界・Web業界の採用ニーズは高い状態を維持し続けています。採用要件が緩和され、経験者はもちろん、経験の浅い若手や未経験者も転職のチャンスが拡大しています。選択肢が広がったからこそ、自分の強みや前職で培った経験を活かせる転職先を見極めることが大事になるでしょう。

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