香取氏 : 現在のGLADDの会員数は240万人、取り扱うブランドは4000以上にもなりました。
サービスを開始した当初は、アパレルやバッグ、シューズなどのファッションアイテムが中心でしたが、現在はコスメや香水、ホームキッチンウエアやフードまで、ライフスタイル全般に関わる幅広い商品を扱っています。最近は“モノ”だけでなく“コト”、つまり「体験」をご提供する機会も増えていて、1年前に設けた「シティ・エクスペリエンス」というカテゴリー内で、舞台公演のチケットやフィットネス、ホテルのスパ利用なども扱っています。
香取氏 : 取り扱う商品を「アパレル」「シューズ」「バッグ」など約15のカテゴリーに分け、それぞれ5段階から10段階でランクづけし、その優先順位にもとづいてバイヤーがブランド各社にアプローチしています。インポートとドメスティックの比率は50:50。現在はアパレルが売上全体のおよそ半分、ホームキッチンウエアが約10%を占めていて、それにシューズやバッグが続いています。
渡辺氏 : GLADDでは「いいものを自分の生活に取り入れたい」と考えるすべてのお客様に向けてサービスを提供しているので、ユーザーのターゲットを年齢や性別でこと細かにセグメントはしていません。ただし結果的には、“いいもの”への感度が高く、ものの価値を安さだけで判断しない30代女性の利用が最も多くなっています。
渡辺氏 : フラッシュセールサイトは今から15年ほど前にフランスでスタートしたビジネスで、弊社もフランス人起業家が日本で立ち上げた会社です。ただしサービス内容は、日本独自で発展させてきました。
例えばフランスでは、ユーザー登録をしなければサイトを閲覧できない完全なクローズドサービスとして始まりましたが、GLADDではサイトをオープンにし、まず商品を見て頂いてから、買いたいアイテムがあればユーザー登録をする形にしています。サイトの見せ方や使い勝手を工夫し、お客様にとって精神的なハードルになるものはできるだけ取り除いて、誰もが気軽に使えるサイトを実現する。そこに注力している点は、日本ならではだと思います。
香取氏 : ブランドとの関係性も、海外と日本では事情が異なります。海外のフラッシュセールサイトでは、「ブランドから商品を買い取ったら終わり」という1回ごとの取引が多いのですが、弊社ではブランド各社へレポーティングを行ったり、次回の売上につながるご提案をしたりと、長期的なパートナーシップを大事にしています。そのために弊社独自のレポーティングシステムを開発し、それをもとに売上の分析や販売戦略の立案を行っている点も、海外や競合他社との違いだと思います。
香取氏 : はい。「グラドア」というベンダーポータルサイトを開発していて、一部はすでに稼働しています。これは売上や在庫などの数字をリアルタイムに確認できるサイトで、在庫の追加も画面上で簡単にできます。アパレル業界はまだまだアナログなので、売上を確認するのにいちいち電話でやりとりすることも多いのですが、このポータルサイトがあれば、ブランド側はいつでも情報にアクセスできます。今後は発注や請求書の管理、サイトへの出品なども、このサイト上で処理できるようにしたいと考えています。
渡辺氏 : 先ほど香取が「ブランド側と長期に渡るパートナーシップを築きたい」とお話ししましたが、グラドアの開発は、それを言葉だけでなく、行動でも示すものになると考えています。競合他社でシステム開発にこれだけ力を入れている企業はほとんどありませんが、それは1回きりの取引であれば、そこまでコストをかける必要がないからです。
でも私たちは、そこに投資することで、ブランド側との信頼関係を厚くしていきたい。弊社を信頼して頂ければ、より良い商品を優先的にGLADDへ提供してくださるようになります。私たちがブランドを大事にすることで、GLADDを利用するお客様に提供できるバリューも最大化され、全員がWin-Winの関係を築けるのです。
香取氏 : 名前を変えた最大の理由は、以前の名称はスペリングが長く、日本人にとってやや複雑だったこと。一昨年は会員数も200万人を超え、テレビCMなどマスに訴求するプロモーションを始めたタイミングでした。
短いCMで消費者にサービス名を覚えてもらい、アプリをダウンロードしてもらうなどの行動につなげるには、「覚えやすさ」が非常に重要です。私たち役員もそのことを実感し、今後のプロモーション戦略も見据えて、名称変更という選択をしました。同時に、紫だったイメージカラーも、白と黒のモノトーンに刷新。ニュートラルな色使いにすることで、男性や20代の若者も取り込みやすくなりました。
渡辺氏 : 新しい名称を決めるにあたっては、社内からもアイデアを募集しました。その中で挙がってきたのが「GLADD」です。最初の3文字に旧名称が継承されていて、「慣れ親しんだ名前の一部を残したい」という社内の声に応えていること、「足す」という意味の「ADD」が入ることで、お客様にさらなる付加価値を提供するというメッセージが伝わること、「GLAD」には喜びや幸せというハッピーな意味が含まれることなど、私たちの思いがさり気なく表現された良い名前だと自負しています(笑)
香取氏 : ビジョンとしては、「No.1 Brand Inventory Solution」になること。ブランド独自の価値を毀損することなく、いかに在庫を消化するかは、ファッション業界における最も重要な課題の一つです。私自身もブランド出身なので、当時は在庫の問題に対する解決策を常に求めていました。その結果、辿り着いた答えが、オンラインでのフラッシュセールだったのです。ただし、今GLADDがやっていることは、数あるソリューションの一つでしかありません。
現在は発売から1〜2年経った在庫を扱う「ファミリーセール」が中心ですが、今後グラドアの活用が進めば、ブランドとのスピーディな在庫連携が可能となり、より鮮度の高い在庫を扱うこともできます。蓄積された240万人分の会員データを活用することで、ブランドから提供された在庫の価値を迅速かつ適正に評価できるようになり、早く現金化したいと考えるブランド側には買い取りでの対応もしやすくなります。あるいは、GLADDとしてオフラインのセールをやるのもいいかもしれない。いかにソリューションの種類を増やせるかが、「ナンバーワン」を実現するカギになると考えています。
渡辺氏 :同時に、重要戦略として掲げているのが「ユーザーエクスペリエンスの改善」です。
スマホの小さな画面でも快適にショッピングが楽しめるよう、これまでも操作性に優れたシンプルなサイト作りを意識してきましたが、この点をさらに強化したい。グラドアを活用してデータ分析の精度が上がれば、個々のお客様のニーズに合わせたパーソナライゼーションやレコメンデーションも可能になります。この戦略をさらに推進するため、この4月1日に「データ戦略室」を新設しました。COOである私たち二人の直轄とし、ビジネス全体のデータ収集や分析に取り組んでいます。
香取氏 : すでに採用には力を入れていて、一昨年より採用業務を人事部から独立させ「採用推進部」を立ち上げ、1年間で100名ほどを採用しました。昨年は主にMDと市川塩浜にある物流拠点のオペレーションスタッフを拡大しましたが、今年はシステムエンジニアとデータ分析の担当者、マーケティングプロデューサーの3職種で採用を強化する予定です。
渡辺氏 まだ小さなベンチャーだからこそ、大きな会社ではなかなか任されないような重要な仕事にアサインされる機会も多いし、ビジネス全体を見るリーダーポジションで仕事をするチャンスもたくさんあります。
私たちは創業メンバーですが、その後は多彩な経験や能力を持つプロフェッショナルがマネジメントに加わり、会社を成長させるために力を発揮してくれました。私たち役員も、常に他のマネジメントとディスカッションしながら情報を共有し、組織の方向性や物事の動かし方を決めるようにしています。
香取氏 : 会社が大きくなるにつれ、組織に階層が生まれやすくなりますが、私たちはできるだけフラットな組織を目指しています。立場に関わらず、自分の考えや意見を発信できる環境を作ることで、社員の一人一人が力を発揮できる組織にしていきたい。
GLADDは「ファッションフラッシュセールサイト」という小さなカテゴリーでは、すでに日本でナンバーワンになりましたが、在庫の問題を抱えるすべてのクライアントにソリューションを提供できる企業になるには、今後も新しいことにチャレンジし続けなければいけません。ぜひ挑戦意欲の高い人が私たちの仲間に加わってくれたら嬉しいですね。