出世したくない自分はダメですか?管理職のキャリアに迷ったら考えたいこと

ご自身のキャリアを考えるとき、「管理職」にチャレンジするべきか悩んだことはありませんか?今回は少し先に転職された方からのご相談ですが、転職後1年目から気にしておいてもよい内容と感じましたので取り上げています。部下を持ち、新たな責任を伴う立場に不安を覚える方も多いはず。管理職になる・ならないをどのように決めるといいのか、本記事でキャリア形成のヒントをお伝えします。

公開 : 2025/04/30 更新 : ----/--/--

新しい職場・仕事で活躍するには何が必要?
転職1年目、なんでも相談室

本連載では、転職後のさまざまな壁を乗り越えて、新しい職場で活躍するためのコツをアドバイス! 入社直前の不安な気持ちから、入社後の仕事・人間関係のトラブルまで、転職後1年目に起こりうる「あらゆるお悩み」を取り上げていきます。

今回のお悩み

管理職を打診されました。正直やりたくないです……

先日の1on1ミーティングでの出来事です。上司から『新しいチームリーダーのポジションを、できれば〇〇さんにやってほしい。』と言われてしまい、反応に困ってしまいました。あいまいな返事をしてその場は逃れたのですが、管理職になると責任は重くなるし、残業も多そうで、正直やりたくないです。どうしたらいいですか?

管理職のキャリアを“イメージだけ”で否定していませんか?

管理職のキャリアを“イメージだけ”で否定していませんか?のイメージ-type転職エージェント

こんにちは、『転職そのあとLABO』のはたけです。

私の知人にも出世に興味がない人が一定数いますので、お悩みに共感する方は多いのではないでしょうか。

最初に考えたいのは、管理職に対するネガティブなイメージが先行していないかという点です。「責任が増えて大変そう」「ワークライフバランスが取りにくそう」「上司と部下との板挟みで人間関係に悩みそう」「管理職になった親が辛そうにしていた」など、どうしてもネガティブなイメージを抱いてしまいがち。ですが実際は、業界や企業風土、直属の上司の考え方などによって管理職の役割や働き方は大きく異なります。

なりたくない気持ちの奥にある感情が「なんとなく嫌だから」ではありませんか?キャリア選択に納得感を持つためには、下記のような方法で「なんとなく嫌」と向き合っていくことが大切です。

上司(管理職)の考え方を参考にする

少々気が引けるかもしれませんが、自分のキャリアを決めるかもしれない大事な機会です。実際に管理職を経験している上司に、メンバー時代との違いを聞いてみましょう。自分で調べる以上に、リアルな情報がわかります。

聞くタイミングは人事考課や1on1で今後のキャリアを話しているときがベスト。管理職になるかをまだ決めかねていることも伝えつつ、キャリアの参考のために経験談を聞かせてほしいと補足すれば、真剣に説明してくれると思います。

とはいえ『管理職って大変ですか?』のようなざっくりした質問では、ふわっとした答えしか返ってこないことも。『管理職である●●さんのミッションは?』『プレイヤー時代と比べて、管理職になって一番変わったことは?』『意思決定で何を大切にしているか』『意思決定に迷ったらどんな軸で整理するか』『やりがいを感じる瞬間は?』『管理職をやってみて感じたポジティブな面・ネガティブな面』など、意思決定の方法や役割の違いを話してもらえるような質問をしましょう。

視点を変えると、新たな一面が見えてくるかも

「なんとなく嫌」の感情をプラスに代替できるものはないでしょうか。例えば、失敗したくないけれど、チャレンジが歓迎され上司が定期的にフィードバックをしてくれる会社に所属している。あるいは、管理職として責任が増える半面、自分の判断で物事を進められるのはいいなと思えるなどです。

こうして見つめ直した結果、単なる恐れから嫌がっていたのだと判明して一歩を踏みだし、意外と楽しく管理職を続けている方も多くいます。あなた自身も過去を振り返ってみて、完璧すぎるリーダーよりも悩んでいることを共有してくれるリーダーに親近感を覚えたり、ときには素直に『ごめん』と言ってくれる上司を信頼していた経験がありませんか?

つまり管理職は、最初から完璧でなくても、誰かの見本にならなくてもいいんです。やらない後悔よりやる後悔、”とりあえずやってみよう”の気持ちを大切にしてみてもいいのではないでしょうか。必要なのは、“完成度”より“誠実さ”や“改善力”だと、やってみて初めて気づけるはずです!経験してみてどうしても合わなければ、もう一度プレイヤーに戻るという選択肢もありますからね。

また前提ですが、管理職は誰もがなれる役職ではありません。そして、誰かがやらなければならない役職でもあります。『マネージャーを目指してみないか?』と打診されたあなたは、会社から評価されていることを素直に喜んでみてもよいと思います!

最初から完璧な管理職はいない!スキルや経験を求めて選んでもよい

キャリアの検討時に、業種や職種を超えて活かせる汎用的なスキル=ポータブルスキル(持ち運び可能なスキル)が身につくかを重視することはおすすめです。管理職として得られるスキルや経験は想像以上に多く、プレイヤー経験だけでは習得しがたいスキルも確実に存在します。

管理職経験で身につくポータブルスキルの例

■限られた情報の中で最善を選ぶ意思決定力
プレイヤーは「決める」より「やる」立場であることが多いですが、管理職を経験すると曖昧な中でも判断・決断する力が磨かれます。

■組織や会社全体の業績視点・数字感覚
「なぜその数値目標にするのか」「達成するにはどんな打ち手か」を考える立場として、設計と分析能力が向上。さらに個人でもチームでもなく、組織の成長を意識して行動する経験を積めます。

■上位層との折衝スキル・提案力
経営に近い層とのやりとりを経験することで、目線や話し方が自然と磨かれます。

■対人マネジメントスキル
相手に合わせた伝え方やモチベーションの引き出し方はもちろん、利害が対立したときの調整力は、プレイヤーではなかなか身につきません。

■リスク管理・トラブル対応力
リスクを考える範囲が自分のタスク内に集中しているプレイヤーと比較して、チーム全体、さらには対外的な信用まで見据えたリスクを想像できるようになります。

ポジションが変わると見える景色が変わるため、意識しなくともスキルや考え方はアップデートされます。中でも、どのように相手を動かし、任せた仕事で成果を出させるか。すなわち「人材育成力」を身につけられるのは管理職ならでは。終身雇用制度の維持が難しくなっている中、どの会社でも使える汎用的なスキルを習得することはキャリアの安定につながるだけでなく、あなた自身の視野を広げ、人間性を育むという意味でもプラスになります。

非マネジメント志向が活躍できる場もたくさんある

ネガティブなイメージだけで判断せず、”とりあえずやってみる”という選択もよいのではないかと提案してきましたが、とはいえ、「絶対に管理職は嫌だ」と決意が固まった方もいるでしょう。そんな方に向けて、違う角度からキャリアの可能性をみてみます。

「管理職にならない=専門性を極める」「マネジメント志向かスペシャリスト志向か」のように、二択で考えてしまいがちかもしれませんが、決してそれだけではありません!

スペシャリストを目指す場合は、専門職の評価体制まで確認するとGood

業界の第一人者・プロフェッショナルを目指し、専門性で貢献していくスペシャリストのキャリア。好きな仕事を続けられる・市場価値を高めやすいといったメリットがある反面、場合によっては昇給・昇進が限られることもあります。管理職コースと比較して冷遇されないように、「スペシャリスト職」「エキスパート職」「プロフェッショナル職」などの呼称がある場合は、管理職コースと同等の評価が受けられるのかを確認しましょう。評価制度がない場合は導入を検討しているのか、いつ頃導入予定なのかまで聞けるとベストです。「管理職が嫌だから専門職!」とイメージで結論づけるのではなく、冷静に意思決定することをおすすめします!

I型ではなくT型のキャリアを目指してみる

深い専門性をもつ「I型」人材は市場価値が高く目標としたいところですが、「優秀な人に追いつける気がしない…」と怖気づいてしまうことも。そんな方には、「T型」のキャリア形成(ジェネラリスト志向)を提案します。これは、もともとの職種で培った専門性を保ちつつ、周辺知識や経験を広げることで市場価値を高めていくキャリアです。

 

■営業職のT型キャリア例
・専門性:顧客との関係構築
・周辺知識や経験:マーケティングやCRMツールの理解
・新たな強み:売れる仕組みを理解し、顧客データを活用した施策提案までできる

■販売サービス職のT型キャリア例
・専門性:接客スキル
・周辺知識や経験:VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)、SNS発信
・新たな強み:売り場作りや集客も担い、店舗全体の売上に貢献できる

■事務職のT型キャリア例
・専門性:正確な受発注やスケジュール管理
・周辺知識や経験:業務フローの見直し、マニュアル作成、新ツールの導入
・新たな強み:ミスなく・早く・仕組み化して回しつつ、他部署にまで横展開して業務改善ができる

■エンジニア職のT型キャリア例
・専門性:自身の担当領域における技術力と実務経験
・周辺知識や経験:ユーザー運用時のUIやセキュリティまで意識
・新たな強み:仕様書に書かれていない使い勝手や業務の背景まで踏まえて提案できる

■マーケティング職のT型キャリア例
・専門性:Google広告やSNS広告運用
・周辺知識や経験:LP改善やトラッキング整備
・新たな強み:グロースハックに近い立ち位置で成果を出せる

副業も視野に入れる

たとえ社内で出世しなくとも業界での地位を築くことが可能な時代になっています。好きなことをお金に変えられる副業は人気の働き方。とはいえ頑張りすぎて健康やメンタルがやられたり(最悪の場合は副業も本業も一時停止)、成果が出ないときのプレッシャーや孤独がダイレクトに来るといった点では、変化に強くセルフマネジメントが得意な方に向いているといえるでしょう。

管理職以外で「教える」「伝える」を楽しめるキャリアも!

例えば、社内トレーナー、ナレッジマネージャー、育成担当などを目指すことで、管理職とは違う方向から人を動かす力を培うことができます。人の支援にやりがいがある方は、教育系のキャリアで影響力を持っていく未来も検討してみてください!

まとめ

まとめのイメージ-type転職エージェント

管理職になる・ならないは、どちらが正解でも不正解でもありません。あなた自身が納得して選択し、その道を丁寧に歩んでいく覚悟があれば、どちらのキャリアにも価値があります。

ただし、ひとつ意識しておきたいのは、「管理職の打診を断る」という選択が、組織の人事計画に影響を与える可能性があるということです。直前の辞退は上司やチームの再調整を必要とする場合もあり、意図せずあなたの評価を下げることにもなりかねません。

転職時点では管理職を目指したいと思っていても、実際に働いてみて、仕事ぶりをみて、志向が変化するのはよくあることです。「そもそも自分はどんなキャリアを望んでいるのか」「目指したいキャリアが入社後にどう変わったのか」を、普段から上司と共有しておくことが大切です!

キャリアは“決断の瞬間”だけで作られるものではありません。小さな対話の積み重ねが、あなたらしい道を築いていくはず。日頃から将来を振り返る癖をつけておくことが、キャリア選択では大切になりそうです。

相談室の人
かずえ

はたけ

『type』『女の転職type』の求人広告制作を担当。エンジニア、営業、接客販売、事務、ものづくり系など、約5年間で200社以上の中途採用に携わる。人事をはじめ代表や社員といった幅広い方々に取材をおこない記事を制作してきた経験から転職そのあとLABOチームにジョイン。好きな食べ物はだし巻き卵。ほっと一息つくような情報をお届けしたい。

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