「お金が管理できている」ってどういう状態? ズボラさんは支出よりも貯蓄額を見るべし

お金管理に苦手意識を持つ人は多いと思うが、そもそも「お金の管理」はどうやるのが正解なのか。転職のタイミングで始めたいお金の管理について、ファイナンシャル・プランニング技能士・野口悟さんに教えてもらった。

公開 : 2022/10/03 更新 : ----/--/--

転職後ならではの懐事情に対応!
会社では教えてくれない「お金」の貯め方・増やし方

新しい仕事で新生活スタート!年収アップが期待できるこのタイミングで、貯金や投資を始めたいという方も多いのでは? 転職直後だからこそ気を付けたいポイントについて、お金の管理方法から貯蓄のノウハウまで詳しく解説します。

浪費グセがついてない?お金管理の意識をチェック

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――まず、「お金の管理」ってものすごく難しく感じるのですが、みんなできているのでしょうか?

いえ、お金の管理が完璧にできている人の方が圧倒的に少ないですよ。金融広報中央委員会の調査データによると、20代の約4割が「金融資産を保有していない」と答えています。30代でも3割近くがその状態です。

――思った以上に多いですね。

はい。収入が高い人ほど貯金がないなんてパターンもあります。というのも、自由に使えるお金が多い共働きのDINKS家庭は、結婚して子どもが生まれるまでの数年間で生活のレベルをぐっと上げてしまいがち。でも、生活レベルは一度上げると下げるのは大変なんですよね。その後、子どもが生まれて、妻が仕事をやめたり、パートになったりしても浪費グセが直らないと、「収入は高いはずなのに、なぜかお金がない」という状況になります。

――自分の浪費グセに自覚がない人も多そうです。

浪費グセがあるかどうかは、コンビニや外食の頻度が一つの目安になるかもしれません。さらに毎月の給料を使い切って、クレジットカードのリボ払いや分割払いまで利用しているような人は、かなり浪費の傾向が強いといえますね。リボ払いは将来の収入まで使っているということですから。

逆にいうと浪費グセがなければ、お金は管理しやすいと思います。今回、皆さんのお金の対する意識をチェックするために、こんなチャートを作ってみました。あくまでざっくりしたタイプ分けですが、みなさんはどのタイプでしょうか。ぜひ試してみてください。

チャート図

Aタイプ:お金の管理はパーフェクト!
貯蓄も増え、支出も把握し、定期的な積立もしているあなたは、絵に書いたようなしっかり者です。今後もその調子でお金の管理をしていきましょう。

Bタイプ:そこそこ管理上手だけど、もうひと頑張りできそう
ある程度お金の管理はできていると思われますが、支出の見直しをすることで、今よりも楽に貯蓄が増えるかも。

Cタイプ:ざっくり管理で何とかなっているように見えるだけ!?
ついつい使い過ぎてしまうあなた。クレジットカードの利用状況を月2回は確認するなど、「今月いくら使ったのか」を把握する癖を付けて。

Dタイプ:マイナス収支警報、発令!
お金の管理が苦手過ぎる可能性のあるあなたは大幅な支出の見直しが急務。この先6カ月はどうしても必要なもの以外は買わない、家賃が低いところに引っ越すなど思い切ったコストカットも必要かも。

貯金が増えていれば、お金管理はひとまず及第点

――自分のお金に対する意識のレベル感は分かったものの、そもそも「お金を管理できている」というのはどういう状態を指すのでしょう?

お金の管理の定義は難しく、チャートでAタイプでも「全然管理できていない」と感じている人もいるはず。逆にDタイプでも「使ってはいるけど、管理はしている」という人もいるかもしれません。

細かいことが苦にならず、完璧にお金を管理したい人は、家計簿アプリなんかを使うといいと思いますが、私の経験上、家計簿アプリをちゃんと使い続けている人って、一割もいない印象です。

――最近はクレジットカードや○○Payなど支払い方法も多様化し、どこで何を使ったかますます管理しにくいですし、やっぱりお金の管理ができている状態のイメージがわきません……。

お金の管理と言われると、「何に使ったか」という支出管理を連想する人が多いと思うのですが、支出ではなく「貯金を管理する」という考え方もあります。収入から貯金分を先取りして、残りは好きに使うというやり方です。支出を細かく管理するよりラクだし、余った分を貯蓄に回すより確実に貯まりますよ。

――先ほどのチャートでも、一問目は「一年前と比較して貯蓄が増えているか」でした。とにかく貯金が増えていけばOK、ということでしょうか。

そうですね。もちろん、マイホームの購入や子どもの進学など大きなお金を使うタイミングによっては貯金できないこともあるでしょう。なので、「貯金が増えていない=お金を管理できていない」ということではないです。

ただ、そういったライフイベントがなく、普通に収入があって普通の生活をしていれば、貯金は少しずつでも増えていくはずだとは思います。

節約の勘所は? 正しい貯金の始め方

――転職したあとの人におすすめの貯金方法はありますか。

転職すると収入に変化があるはずなので、まずは現状を把握しましょう。1カ月分でいいので支出を洗い出して、支出額が大きい項目トップ5から見直すのがおすすめです。これは単純に元の金額が大きいほど見直し効果が大きいから。例えば、1カ月換算で数千円の水道費をどんなに節水しても半額にはできないでしょう。それなら総額5万円の洋服代を4万円に抑える方が簡単に貯金1万円を捻出できるわけです。

もう一つは王道ですが、固定費の見直しですね。1回見直せば、ずっと効果が続きますから貯金に回せるお金を生みやすいです。一方、食費のような変動費は意外と削減しづらい。毎日スーパーの値引きタイムを狙うのも大変ですからね。

――たしかに。でも具体的にどう見直していけばよいか分からない人も多そうです。

どこを削るべきかは分かっても「どう削るか」に悩みますよね。そんなときは、「自分の人生にとって重要度が高いか」を判断基準にするといいと思います。「生きていくのに必要か」を基準にすると、おそらくほとんどのものがなくても生きていけるので。

例えば支出トップ5に自家用車の維持費が入っていたとする。よほど交通の便が悪い地域に住んでいない限り、車はなくても生きていけますが、車が趣味・生きがいな人もいるわけです。そうしたものを無理に削る必要はないと思います。

「自分の人生にこれは必要」だと判断したら、次は本当にそこまでのスペックが必要かどうかを考えてみてください。少しスペックを下げることで費用を抑えられるものも多いはずです。もしスペックも妥協できないなら、スペックをキープしつつ、もっと安く入手できる手段はないかを探してみましょう。お店で買うのか、インターネットで買うのか、などですね。そうやって少しずつ支出を削り、浮いたお金を先取り貯金で貯めていくのがよいと思います。

通信費の見直しに盲点あり! 機種代、課金、見逃してない?

確定拠出年金のほったらかしで資産が目減りイメージ画像

――固定費の見直し方についても詳しく教えてください。

転職後ならまずは住居費から。働く場所が変わるので、住む場所も見直す好機です。転職先がリモートワーク中心なら、通勤の便の優先順位は下げてもよいかもしれませんよね。「月に1回の通勤は片道1時間半掛かるけれども、物価も家賃も安いエリアに住む」という選択肢も出てくるのではないかと思います。

もちろん引っ越し代、敷金・礼金などの費用は掛かりますから、2、3年先まで計算し、どちらが得かを比べて判断してください。

持ち家の方は、ローンの借り換えを検討してもいいかもしれません。特に10年以上前にローンを組んでほったらかしの人は、今はだいぶ金利が下がっているので、一度見直してみてほしいですね。ただし、2022年現在、『フラット35』などの固定金利型住宅ローンの金利が上がってきているので、変動金利で借りていて、金利が高くなったら固定金利に借り換えようと思っている人は、タイミングに要注意です。

――住居費以外に見直せそうなものはありますか?

通信費の見直しもおすすめです。とくに携帯の料金プランは見直し効果が大きく、格安スマホに変えるだけで、ぐっと下がります。面倒な方は大手のサブブランドを選べば手続きも比較的簡単です。

通信費は、「携帯・自宅のインターネット・固定電話」の3つをまとめて検討すると、セットで割引が適用されることもあります。その際は、「そもそも携帯があるなら固定電話は不要では?」「一人暮らしで外出先でもネットをよく使うなら、自宅にインターネット回線を引くよりモバイルWi-Fiルーターの方がお得かも?」といった観点も持つとよいですね。

あとは、毎月の固定費ではないですが、スマホ本体の買い替え頻度について。2年くらいで買い替える人も多いですが、もう少し間をあけてみてはいかがでしょう。電源のもちが悪くなったらバッテリーを交換してもらえば、数千円の出費で済みます。

通信費の中でも見逃しがちなのが、ゲーム課金や配信への投げ銭です。変動費の要素が強いので意識すれば費用を抑えられます。課金自体が悪いわけではないので、上限を決めて使うのがいいですね。

――課金や投げ銭は、つい熱中してしまい、あとで請求をみてビックリする人も多そうですよね。固定費で見直すべき項目はこれくらいですか?

余力があれば、生命保険や損害保険の見直しも一度はしてみるといいでしょう。できれば「○○生命」のような特定の会社ではなく、複数の保険会社を比較検討してくれるところに相談してみてください。というのも、保険会社ごとに得意商品や目玉商品が違い、すべてがお得な商品ばかりではないので。せっかくなら、各社のいいところ取りができるといいですよね。

――これらの固定費を見直すだけでも、だいぶ支出が減りそうですね。一度見直せば、本当に毎月の支出は細かく管理してなくてもよいのでしょうか。

先ほどもお話ししたとおり、貯金がちゃんとできていれば基本的には支出管理は不要ですが、しいて言うならクレジットカードなどの利用状況は月に2回チェックすることをおすすめします。月1回は明細が届くと思いますが、それに加えて月の半ばあたりにもアプリなどで確認してみると、「もうこんなに使ったんだ」と自覚できて、後半の支出をセーブする意識が生まれます。

転職はお金管理の始め時

――ズボラな人も挫折せずに、お金の管理を続けるコツはありますか。

楽しみながらできる方法を自分で見つけることが大事です。「食べたいけどガマン」「ほしいけど買わない」ばかりでは辛くなりますよね。

例えば、ペットボトルをマイボトルへ変えるのも、節約目的だと面倒に感じるかもしれませんが、「環境に良いこと」という気持ちでやるとポジティブになれるのではないでしょうか。生活のいろいろな場面で、そういうことを見つけられるとよいのかなと。

「お金の管理を見直さなくては」と気付くきっかけは人によって違いますが、中にはいつまでもきっかけがなくダラダラ使い続けてしまう人もいます。もちろんそれで本人が幸せならよいですが、知識がなかったばかりに「こんなはずじゃなかった……」とあとで思うのは不幸せですよね。転職でお金のことに目が向いた今は、絶好の貯金の始め時。ぜひ、今日から実践してみてください。

今回のまとめ
・支出を管理するより、貯金を管理した方がお金は貯まる
・まずは支出のトップ5と固定費から見直す
・支出を削るかどうかの判断基準は「自分の人生に重要かどうか」

取材・文/古屋 江美子

お話を伺った方
柳澤美由紀さん写真

野口 悟さん

2級ファイナンシャル・プランニング技能士/トータル・ライフ・コンサルタント(生命保険協会認定 FP)

関東学院大学工学部卒業。ピーシーエー生命保険株式会社、東京海上日動あんしん生命保険株式会社、保険代理店を経て、現在に至る。経済・金融・税務等に関する幅広い知識と豊富な経験をもつ、保険、金融、リスクマネジメントのプロフェッショナル

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