401k、iDeCo、NISA……どこまで理解してる? 貯金以外のお金の増やし方を正しく知ろう

401k、iDeCo、NISA。最近よく聞くこれらのワードは、どれも投資の一種。貯金以外でお金を増やす方法だ。人生100年時代、貯金だけで充分な老後資金を用意するのはかなり大変だが、リスクを嫌う日本人は「投資」に対して及び腰。しかし転職で収入が安定し、貯金が一定額貯まったら、次は投資デビューの絶好のチャンス! 投資に対する苦手意識や「何となく怖い」を克服して転職後の「お金を増やし時」を逃さないための知識を、ファイナンシャル・プランニング技能士の野口悟さんにレクチャーしてもらおう。

公開 : 2023/01/17 更新 : ----/--/--

転職後ならではの懐事情に対応!
会社では教えてくれない「お金」の貯め方・増やし方

新しい仕事で新生活スタート!年収アップが期待できるこのタイミングで、貯金や投資を始めたいという方も多いのでは? 転職直後だからこそ気を付けたいポイントについて、お金の管理方法から貯蓄のノウハウまで詳しく解説します。

「老後資金のために」なら今すぐ投資を始めない方がいい人も

「老後資金のために」なら今すぐ投資を始めない方がいい人もイメージ画像

――よく万一のための生活防衛資金(3~6カ月分の生活費)が貯まったら、投資を始めようと聞きます。

そうですね。すぐに引き出せる貯金で一定金額を用意できたら、ぜひ中長期的にお金を増やす投資にも目を向けてみてください。ただ、老後資金のための投資は余裕がなければやってはダメですよ。

――と言うと?

最近は「老後資金2000万円問題」などを耳にして危機感を抱き、「老後のための」資産形成に興味をもつ人が増えています。ですが、老後のお金は人生のかなり終盤で必要になるお金です。それよりも前に、住宅の購入や教育費など大きなライフイベントが来ますから、まずは直近のライフイベント用の資金から準備していくことが大事です。

例えば、老後のための投資ができるiDeCo(個人型確定拠出年金)は60歳になるまで引き出せません。老後の準備を優先するあまり、今の生活に余裕がなくなって、子どもの教育ローンを銀行から高い金利で借りるようなことになったら本末転倒ですよね。

「投資は怖い」で思考停止すると事実を見過ごしてしまう

――とはいえ、やっぱり貯金だけでは老後資金は不十分なんですよね?

はい、貯金だけで老後に必要な資金を貯めるのはかなり難しいと思います。今の普通預金の金利は0.001%なのですが、これが絶望的に低いということをまずは理解していただきたいです。

何年お金を預ければ元本の2倍になるかが分かる「72の法則」をご存じでしょうか。「72÷金利」で、お金が2倍になる期間が算出できます。この式に当てはめると、金利0.001%の場合、元本が2倍になるのは実に7万2000年後です。

――ちょっと気が遠くなるくらい未来ですね(笑)

ですよね。仮に金利が100倍の0.1%だとしても、720年。鎌倉時代に預けたお金がようやく今2倍になる頃です。1%でも72年ですから、生まれたときに預けたお金が72歳でようやく2倍……。

このことからも分かるように、1%以下の金利は、はっきり言ってしまうと運用になってないんですよね。

――たしかに……。

少なくとも物価の上昇以上に増やしていかなければ、お金の価値はどんどん下がってしまいます。今の普通預金金利ではまったく対応できませんから、やはりリスクをとってでも投資をする必要はあると思います。

会社員が知っておきたい401kの基本

確定拠出年金のほったらかしで資産が目減りイメージ画像

――それではまず何から始めればいいのでしょうか。

会社員なら、まずは年金制度の一つである確定拠出年金(401k)について理解しておきましょう。

401kには、企業型確定拠出年金(企業型DC)と個人型拠出年金(iDeCo)があります。企業型DCは厚生年金に加えて、会社が独自で用意している企業年金で、企業が掛金を払い、社員が運用します。昔は、会社が運用して全員に横並びで同額を払う「確定給付企業年金」が一般的でしたが、企業型DCの場合、運用成績次第で一人一人将来もらえるお金が変わります。

企業型DCには掛金を会社が出すタイプ以外に、社員が給与の一部を拠出する「選択制確定拠出年金」もあり、こちらは利用するかどうかを社員が選択できます。また、会社が出す掛金に社員が自分の給料から掛金を上乗せできる「マッチング拠出」というタイプもあります。まずは転職先の企業が確定拠出年金を導入しているか、導入しているとしたらどのタイプかを確認しましょう。

――選択制確定拠出年金は自分で利用するかどうか選べるんですね。自分で掛金を出すという点が気になる方はいそうですが、やった方がいいのでしょうか。

基本的にはやることをおすすめします。と言うのも401kの掛金は所得税や住民税控除の対象となり、運用益も非課税だからです。

――ただ、自分で運用するとなるとやり方が分かりません。

そうですよね。選択制に限らず、確定拠出年金は自分で運用しなければなりません。ただ、各金融機関の401kのポータルサイトには、質問に答えていくとリスク許容度を分析して、おすすめの商品を紹介してくれる自己診断チェックが付いています。まずはこの結果を参考にしてみてください。

運用の仕方についても少しお伝えしますと、401kの運用商品にはリスクの大きい「価格変動型」とリスクのない「元本確保型」があります。このうち「元本確保型」は銀行へ預けているのと大差なく、お金はほとんど増えません。にも関わらず、401kの約53%が「元本確保型」で運用されているのが日本の現状です。

――どうしてでしょうか?

「よく分からない」「お金が減るのが怖い」という人が多いからではないかと私は思います。確かに、「元本確保型」ではお金が減るリスクはありませんが、大きく増えることもありません。せっかく運用しても老後の資産形成にはなっていないということに気付いていないのはもったいないですよね。

――運用商品の選び方に失敗しないコツはありますか?

運用商品をどう組み合わせるのがよいかは、年齢や許容できるリスクによって変わってきます。基本的に投資は運用期間が長いほどリスクをとることが可能です。

20代~30歳前半なら退職まで30~35年あるので、海外株式中心のかなりアクティブな運用でもよいでしょう。40~50代になると残りの運用年数も短くなるので、もう少しリスクの少ない組み合わせにする人が多いですね。

投資は長期でお金を増やすものなので、基本的に一度設定したら、ほったらかしでOK。ただ、最初はよく分からず選んでしまうこともあると思うので、数年して理解が深まった頃に一度見直してみてもいいと思います。

――転職先の企業に401kがない場合はどうしたらよいですか?

その場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo)、あるいはつみたてNISAのいずれかが選択肢になってくると思います。いずれも税制優遇がありますが、特徴が違います。

まずiDeCoは、掛金も課税所得から引かれるので節税効果を得やすいメリットがあるものの、60歳まで引き出せないのがデメリット。一方、つみたてNISAは、掛金は所得控除にならず、運用益が非課税になるだけなので節税効果は小さいですが、好きな時に解約できるメリットは大きいです。掛金の上限も違い、401kのない会社員ならiDeCoは月額2.3万円(年間27.6万円)まで 、つみたてNISAは誰でも年間40万円まで。2024年以降のNISA制度改正で、非課税投資枠の拡大と制度の恒久化等が予定されていますので、状況に応じて自分に合ったものを選び分けてください。

ちなみに元の会社に401kがあって、転職先でなくなった場合は、iDeCoへ移行しておきましょうね。

小学生も金融教育を受ける時代! 頑張らないと情報格差は埋まらない

――こういう話、なかなか教えてもらえる機会がありません。

本来、401kを導入している企業は年1回従業員に教育するという努力義務があるのですが、本格的にやっている会社は少ないかもしれませんね。それで、とりあえず元本保証型の運用商品を選ぶ人も多くなっているのでしょう。

それも仕方ないことかなとは思うんですよね。今の社会人は金融教育をまったく受けてこなかった世代で、むしろ「お金の話は下品」くらいの意識を持つ人もいるかなと。でも今は金融庁が小学生への金融教育をしている時代。誰もが自分で学ばなければなりません。

――金融庁もおすすめしているということは、投資にリスクはないということでしょうか?

いえ、リスクがないとういことではありません。中高生向けの教材では「長期・分散・積立」の3本柱でリスクとうまく付き合いましょう、という考え方が分かりやすく解説されていますよ。

例えば、特定の会社の株を買うのはリスクが高いですが、iDeCoやつみたてNISAなら、低額の掛金で値動きの違う国内外の複数の銘柄に分散投資ができます。また、決まった金額を定期的に積み立てていくと、値下がり時はたくさん買い、値上がり時は少なく買うことになるので、最終的に平均購入単価が下げられます。長期であればあるほど、一時的な市場の変動に左右されにくくなるので、なるべく早いうちから正しい知識を身に付けてほしいのです。

――投資にリスクはあるけれど、うまく付き合うことが大事だということですね。

その通りです。そもそも日本人はリスクを嫌う傾向がありますが、リスクは「危険」ではなく、「可能性」だと思ってください。いたずらにリスクをとる必要はないけれど、上手にリスクと付き合わなければならない時代。転職して収入が安定し、貯金がある程度貯まったら、次は投資に目を向けるとき。まずは月々3000円など少額でもいいので、資産運用にチャレンジして、若いうちから投資に慣れていきましょう。

本日のまとめ
・転職後はまず貯金、投資は余裕資金ができてから
・超低金利の時代、貯金だけでは老後までの物価上昇に対応できない
・まずは税制優遇がある401k、iDeCo、つみたてNISAから
・少額でもいいので早いうちから投資に慣れることが大事

取材・文/古屋 江美子

お話を伺った方
柳澤美由紀さん写真

野口 悟さん

2級ファイナンシャル・プランニング技能士/トータル・ライフ・コンサルタント(生命保険協会認定 FP)

関東学院大学工学部卒業。ピーシーエー生命保険株式会社、東京海上日動あんしん生命保険株式会社、保険代理店を経て、現在に至る。経済・金融・税務等に関する幅広い知識と豊富な経験をもつ、保険、金融、リスクマネジメントのプロフェッショナル

シェアでみんなの仕事活躍を応援!