「今まで最も苦労した経験」の考え方について

「今まで最も苦労した経験」の考え方について

伊藤直也
2020 / 8 / 05

今回は少しテクニック的ですが、中途採用の面接でしばしば聞かれる下記について述べてみます。

「今までの仕事で最も苦労した(or大変だったor困難だった)経験を教えてください。」

中途採用の面接に臨まれた方は、割と上記に遭遇することが珍しくないのはないでしょうか?新卒採用でも聞かれることはあるかもしれません。

そのため、このケースに慣れている方もおられるかも知れませんが、人によっては訊ねられて少し戸惑った…という方も少なく無いような印象です。

こんな話を普段はすることは稀だと思いますし、なんだか「何かスゴイ話をしてください」と言われているようで、変にプレッシャーを感じてしまう難しさもあるかも知れません。

ただこの質問に限らないのですが、面接においては、「相手が何の意図で、どのようなことを知ろうとしているのか」をイメージして、これまでのご経験を整理いただくことでそこまで臆することなく対応可能です。その考え方について少しまとめてみたいと思います。

まず、面接官の方は、これまでで一番「苦労/困難/大変」であった、あるいは「成功/失敗した」エピソードから聞きたいことは主に下記の通りです。

・自分の能力では簡単でない/難しい仕事に積極的にチャレンジしているか?
・そのチャレンジの過程や結果から何かを学び、次に活かしているか?
・その出来事が事業/組織にどのような貢献/影響を及ぼしたかに言及出来ているか?

もちろん、候補者様が直面した困難や苦労、成功失敗そのものに対してもきちんと関心が向けられているはずですが、そのエピソードの過程から、少なくとも上記2つが読み取れるかどうかを知ろうとしていると思っていただいて良いかと思います。

この手の質問になると、

「何かよほど尖ったエピソードを述べないと意味がないのでは?」と、

戸惑ってしまう、あるいは少し投げやりになってしまう方もいらっしゃいますが、「凄そうな何か」を述べねばと力んでいただく必要はありません。

もちろん、稀有な体験をされているに越したことはないのですが、大事なことは「エピソード自体の凄さ、希少性」ではなく、ご自身にとっていかにチャンジングな出来事に向き合ってきたかであり、その出来事が会社や顧客に大きなインパクトのあるものであれば好ましい、 くらいに捉えていただいて良いかと思います。

より具体的な考え方としては、

・なぜその仕事を担うことになったのかという背景・経緯
・その仕事を成功させるために観察・分析・工夫をした過程
・そのチャレンジ(正否問わず)を通じて学び、現在活かしていること

という部分が揃っていることがポイントとなります。 反対に、この質問で避けたい回答はこのような内容です。

・相当のハードだが耐え凌ぐしかない類の苦労/困難であり、その先に学びが無いエピソード (困難・苦労=トラブル/クレーム対応、と誤解される方もおられるのでご注意ください)
・成功はしているが、難しかった点、工夫した点の抽出が難しいエピソード (大きな外部要因で成否が決まってしまった等。これはこれで貴重な経験ですが…)

上記のような内容ですと、原因と結果がシンプルなことが多いので、面接官の方も色々と掘り下げてインタビュー展開することが難しく、物足りなさを感じて終わってしまうリスクがあります。

こうしたテーマは、中堅メンバー~ミドルクラスの方や管理職になって間もない方、経験やエピソードが豊富な40~50代の方によって整理の仕方も多少違ってくるものの、今回のように意図や聞きたいことをイメージして言語化されたエピソードは汎用性があるため、転職活動を効果的かつ生産的に進めていくことが可能となります。

面接に臨む前はもちろん、職務経歴書作成の時点から進めておくこともオススメです。よろしければご参考ください。