事業会社のDXキャリアにおける難しさ

事業会社のDXキャリアにおける難しさ

伊藤直也
2020 / 1/ 30

今回はなかなかの盛り上がりを見せている、DX関連の転職・キャリアについて少し感想を述べてみたいと思います。

ここ最近における求人や転職希望におけるトレンドとして、「AIやIoT などの先端テクノロジーを活用した事業開発や業務改革」というキーワードの盛り上がりを強く感じます。

現時点で、DXに関連するキャリアについては、

①コンサルティングファームやITベンダーにおけるDX専門部隊
②AIなどの先端テクノロジーに精通したスタートアップ
③特定の業界・業務に対応した製品展開を担うSaaSベンダー
④事業会社におけるIT企画・DX専門組織

といった選択肢が存在されますが、特に最近は、④事業会社の機会における難しさを特に感じています。

直近において、事業会社に参画したテクノロジー人材の方々が、入社後しばらくを経てジレンマを感じられている場面が見られるためです。

具体的には、

”テクノロジー活用に向けた企画→承認までに時間がかかる”
”実証実験までは進むが、本格導入に至るまでの心理的・予算的ハードルがかなり高い”
”システムの内製化を進めているというが実際はまだまだベンダー依存である”

など、体制面を掲げられるケースが多いのですが、特に気になるストレス要因として「レガシーシステムへの対処」があります。

仮にAIやSaaSを活用して何かPoCや新規ビジネスを進めようにも、AI活用に最適なDBやインフラが整っているわけではなかったり、データの中身がAI学習に適しているとは言い難い状況であることが、「新しい取り組み」の障害となりストレスを感じる…とうイメージです。

また、そうした事情を経て、

・既存システムへの対処に時間を取られ、本来やりたいことが出来ていない…
・AIやIoTの活用が進まない=評価されないor居づらい状況が続いている…

といった考えに至ることで、当初大きな志を持って入った会社に対し、転職を考えている、というご相談も残念ながら見られています。

もちろんこうした状況についてはお察しせざるを得ないのですが、仮にこうした背景から転職を考える際に注意いただきたい点があります。

それは、現時点においてどの企業様もレガシーへの対処については、相当の時間と費用を掛けざるを得ない状況であるということです。

もちろん予算や人員などのリソース投入度合いにおいては、各社様の間における差異は見られますが、少なくとも数年の時間及び、相応の予算を投資して、AIやIoTの活用に最適なシステム基盤を整える、というプロセスに向き合う必要なあるのはどこも変わりありません。

こうした状況を踏まえず、「うちの会社はIT活用への理解やスピード感が無い」という解釈で、別の会社様へ転職したところで、同じようなジレンマを感じてしまう…というリスクを孕んでしまうので注意が必要です。

メディアでも色々なAIやIoT活用事例が取り上げられる中で、そうした試みに携わりたいという方も少なくありませんが、実際にはまだまだ既存システムへの対処の方が優先課題として残っていることが多いという点はぜひご理解いただきたいです。

それでもなお、AIやIoTなど先端テクノロジー活用における専門性をこの時点で築き上げていきたい、という方については、技術力の高いコンサルやITベンダー、スタートアップなどに身を置き、様々な事例を経験していく選択肢のほうがリスクは少ないと思われます。

もちろん、事業会社側で内部から会社を変えていくことや、中長期的に様々な取り組みを積み重なていく醍醐味は無いのですが、この数年で専門性を築くことができれば、数年先において、既存システムのモダナイゼーションを実現した企業様が増えた際に、色々な選択肢を持てる状態が期待できるかもしれません。