「経験を生かしたい」というコメントはひと手間が重要
既に色々な経済・ビジネス系メディアで取り上げられている通り、かつて、「転職は35歳くらいまで」という風に言われていた現在ですが、ここ最近では急ピッチな事業拡大や新たな事業機会を目指して、40〜50歳の経験豊富な方を採用していただける機会が増えてきました。
もちろん、個人・企業の双方において影響の大きいご縁であるだけに、若手中堅層を採用するよりも、カルチャーフィットの面をはじめとしてお互い慎重に見極めてもらう必要があります。その為、マッチングは決して簡単にはいかず、一人のビジネスパーソンのご支援、あるいは一つのポジションの決定まで、半年近くかかってしまうことも珍しくありません。
そうした中で、テクニック論ではないのですが、経験豊富なビジネスパーソンの方が転職活動に臨まれる上で、陥りがちな「落とし穴」について述べてみたいと思います。
それはご自身の「経験を生かす」ということの表現の仕方です。
例えば、面接にて下記のような回答になってしまっている場合は要注意です。
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Q.「転職理由は何ですか?」
A.「より『(◯◯◯の)経験を生かせる』ところに転職したいと思いました。」
Q.「志望動機を教えてください」
A.「これまでの私の『(◯◯◯の)経験を生かせる』と思ったためです。」
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これらは決して、誤ったメッセージではありません。しかし、面接官側から見た場合、「経験を生かすこと」は手段にしか過ぎないという点には注意が必要です。
面接官側が求めるのは、応募者様が「経験を生かすこと」を通じて、応募先の事業・組織にどう貢献したいのか?(=成果)となります。
その為、「経験を生かす」ことに留まったメッセージでは、面接官側が消化不良(十分な情報を得られていない状態)に陥りがちであり、その先の面接の展開も、あまり生産的でなくなるリスクがございます。
その結果として、面接後における企業様側のコメントとして、「ご経験や知識は大変豊富な方であるものの、当社でどのようにご活躍いただけるかあまりイメージを描くことができなかった」といったような内容となってしまうことが珍しくありません。
こうした状況を防ぐ上で気をつけていただきたいことは、あえて「これまでの経験を生かすこと」は前提条件であると割り切っていただいた上で、
①応募先の事業にどのように貢献したいのか?
②入社後に応募先から何を学び、どのように成長していきたいか?
この2つをメッセージとしてわかりやすく伝えることがポイントです。
①については、経験を生かした末の成果として、売上や生産性の向上、組織活性化など、どのような成果に寄与したいのか?あるいは、応募先の抱える課題解決にどう貢献したいのか?という点にまで深く踏み込んだメッセージになっている必要があるということです。
応募先の抱える課題については、IRや経営者インタビューなどから推察することも可能ですし、より詳細な課題やその背景などについては、エージェント側で把握していることもあります。
上手く情報収集をしていただくことで、十分に対策を行うことが可能です。
②については、「経験を生かす」時間軸を指しています。
いくら経験豊富な方であっても、転職して間もないタイミングで、過去の経験・知見を押し付けてしまうようなイメージを与えてしまうと、受け入れ先の企業として不安を感じてしまうことが珍しくありません。
しばしば、若手中堅の方の転職理由で見られるケースとして、鳴り物入りで入社した経験豊富な部長さんが、それまでの会社のやり方をとにかく否定し、自分の価値観や方法論を、とにかく強引に押し付けてくるので現場が混乱しているのが辛い…といったお話も見られます。
もちろん、求人の中には入社後に急ピッチに、戦略の見直しや業務改善、組織の建て直しなどをミッションとして求められる場合もありますが、これらは割と稀なケースです。
大抵の場合は、どれほど経験豊富な方であっても、入社直後からしばらくは、その会社のやり方や組織風土の理解・順応にそれなりの時間を使いながら、必要に応じて経験・スキルを発揮しつつ、少しずつ実績と人間関係を築いていくことが好ましいとされやすいです。
そして、会社の方法論(+その背景)や風土を理解したタイミングで、これまでの経験・知見を発揮してインパクトのある仕事を徐々に増やし、過去の経歴ではなく、結果の面から周囲の信頼を築くことによって、より大きなチャレンジに繋げていくようなイメージです。
ブログにつき少し大まかですが、こうした①②の要素を踏まえストーリーを描き、面接に臨んでいただくことによって、面接官側も、具体的な活躍のイメージに加え、安心して長期的に活躍してもらえるイメージを持ってもらうことが可能になります。
いかがでしょうか?
キャリアが成熟するほど「求められるところに行きたい」とお考えになられる方も少なくありませんが、求人企業様に対し、自らが「経験を求められること」を求め過ぎてしまうことは、得てして裏目に出やすい部分でもありますので、ぜひご注意いただければと存じます。