とあるCFOの方とお話した「新規事業」について

とあるCFOの方とお話した「新規事業」について

伊藤直也
2017 / 11 / 14

前回のグローバル人材と同じくらい多数寄せられている「新規事業関連」について記載致します。

普段、求人打ち合わせやカウンセリングなどの場面において、様々な新規事業に対する進め方・組織への考え方などをお聞きしますが、仕事とは全く別の機会でお話した某企業のCFO様がお話されていた件が印象的でした。

その方曰く、財務や経営企画などの管理部門の立場から言えば、上手く行かない・失敗する可能性がある新規事業に対して、最悪の場合、撤退・損切りの判断を申し出なければならない場面が出てくる。そしてこの「終わらせ方」については十分気をつけなければならない、ということを強調されておりました。

それは、当事者として成功を信じ、全力で事業の成長に邁進していた社員はもちろんのこと、他事業から見れば「自分達が必死に稼いだ利益を投資した」ということになることから、新規事業の行く末が当事者関わらず、会社全体の士気に大きく影響する可能性が高いためであるとのことでした。

そしてその為には、その事業が「いかにやり切ったか」であると。それは終わりに向けた説明責任の果たし方、という類のものではありません。事業の当事者に最大限裁量を与えてトライしてもらいつつ、一方的に任せて報告を受けるだけではなく、管理部門として、その新規事業が設定したKPIが相応しいものであったか?、PDCAを何回も回した上で限界と判断するものなのか?などを共に考え、時には事業サイドへ提案をしたりしながら、その事業の可能性を信じて追求した結果として、適切な存続・撤退の判断を行うべきである、ということがその方のお考えでした。

既に成立している市場において新規事業を立ち上げる際は、競合などをベンチマークとすることで、自らの事業ポテンシャルをわかりやすく図りやすい部分はありますので、上記はどちらかと言えば、前例の無い、あるいは市場が定まっていないが故に、勝ち筋を見つけることが簡単でないタイプの新規事業に当てはまるものと言えるかも知れません。

いずれにせよこうしたお話から、個人的には、この方の元で新規事業に取り組むことは、結果上手くいくか否かは別として、本当に有り難いチャレンジの場を提供してもらえるという意味で幸せだろうなと思いました。

新規事業に携わった方の中には、事業の進め方の不一致や、会社内での政治的な理由などを背景に「居辛くなった」方も少なくない為です。そしてこうした状況は、「新規事業担当」としてその会社に転職する時にも得てして起こり得ます。

次のキャリアとして新規事業の立ち上げにチャレンジされたいと考える方は、面接などの過程で「出資先」としてのその会社が、どのような方針でその事業を捉えているか?という切り口においても、慎重にコミュニケーションして頂ければと存じます。

もちろん、新規事業を積極的に展開する企業様の中には、新規事業の撤退ルールを明確に設けているところも少なくありません。ただし、ご自身で関心を持った会社様が必ずしもそうした明確なガイドラインが設けているとは限りません。当該事業の責任者・当事者のみならず、経営全体として、新規事業をどう捉えているか?という点でも相互理解を密に深めて頂くことで、よりご自身のご経験や思想にマッチしたチャレンジを選択して頂きたいと思っております。