パフォーマンスを構造化することの大切さ

パフォーマンスを構造化することの大切さ

伊藤直也
2018/ 7 / 31

とあるご縁がきっかけで、この2ヶ月ほどでアスリートの方の講演を聞く機会があったのですが(その競技において国内外で活躍されているような方です)、個人的にかなり学びに溢れた機会となりました。

内容を詳しくは記載しませんが、共通するポイントとしては、

・競技自体や自身(もしくはチーム)のパフォーマンスを客観視する意識を持つ
(感覚や競技における前例・慣例・当たり前などに捉われない)
・自分の競技やパフォーマンスの構造を因数分解して、本質として言語化する
(一連の動作やチームの動きがどういった要素で成立しているかを理解する)
・競技の構造と自身の客観視に基づき、適切な目標設定と改善、評価をサイクル化する(定量・定性面においてどのような目標設定や評価指標が必要なのかは個人で異なる)

といったような内容です。個人競技向けに解釈されるかも知れませんが、チームスポーツにもしっかりと当てはまる内容です。勝利・好記録を達成した後に「次の再現性」に向けて客観視・構造化・改善余地の検討を重ね続けることが重要であること、そして、こうした経験・姿勢・習慣を幼少期に身に着ける機会を提供できることが「スポーツの社会的価値」であるというメッセージでもありました。

このお話はスポーツ選手のみならず、一般のビジネスパーソンにも該当すると思います。得意分野やスキル、過去の成功体験などを客観視・構造化しておくことで、「自身のキャリアを通じた提供価値」、あるいは「今後(のビジョン・目標に向けて)何をなすべきか?」といったことを明確化することができ、それがより良いキャリアを築いていくことに繋がっていると思うためです。

営業職であれば、自身の営業スキルを「営業戦術の策定」「日々の営業活動の行動管理」「個別商談の対応」に分解し、そこからそれぞれの構造を導き出し、成果をあげる上で重要なポイントを抽出するといった形も一つの方法です。システム開発のプロジェクトマネージャーであれば、プロジェクトの開始前・進行中・終盤といったフェーズ毎や、プロジェクトにおける各ステークホルダーへの対応なども構造化の切り口になりそうです。

もちろん上で述べたものはあくまでも切り口として一つの例に過ぎず、人・組織によって構造化・分解の仕方は様々と言えるでしょう。いずれにせよ、自身がビジネスパーソンとしてどのような仕組みで価値を発揮しているのか?を客観的に理解し、構造化することは、転職や部署異動といった形で環境が変わったとしても「何を活かすことができて、何は学ぶ必要がある(あるいは何を周囲にサポートされる必要がある)のか」ということを、より具体的に見出すことに繋がると思います。

また、こうした構造化によって、伸ばしたい強みや補強すべき能力、あるいは自身が大切にしたい仕事のスタイルや価値観が明確にすることに繋がるほか、職場の上司や面接官に対し、「自分のキャリア」をより正確に伝えるための手助けにもなり得るのではないかと思います。

このようなキャリアの客観視・構造化は、もちろん我々のような転職エージェントとディスカッションすることも一つの方法ではあるのですが、それを宣伝したいのではなく(笑)、普段から職場の上司やメンター、あるいは知人など継続的に取り組むほか、自身の内省を通じても十分に得られるものであって欲しいと思います。一度構造化して終わりという訳ではなく、構造化したフレームワークが有効であるかを見直し続ける必要があると考えるためです。

ちなみに、アスリートの方がここまで述べたような構造化を見出すともう一つ変化が起こるそうです。それは「外の世界からも色々な学び・刺激を取り込むことが出来るようになる」そうで、他競技に関わらず、様々なジャンルで成功されている方々の方法論・考え方などをヒントに繋げられるようになるとのことでした。

私も自身の価値や役割を客観視・構造化した上で、エージェントとして日々、色々なビジネスパーソンやエグゼクティブの方からお話を伺い、多くの素晴らしい会社様とお付き合いさせていただいている訳ですので、こうした貴重な機会を、自身の学びにしっかりと繋げていきたいと改めて思った次第です。

最後に、この講演を通じて面白かった点がもう一つあります。上記の概念において、AIやIoTといったデジタル技術を活用することで、客観視・構造化・PDCAのサポートなどは更に発展・進化を遂げる可能性があるというお話もあったことです(余談ですが、総合ファームやITベンダーなどがここ数年を通じて、次々にスポーツ支援に加わっているのは非常に頼もしい限りですね)。

個人のキャリアという複雑な概念も、こうしたデジタルテクノロジーによって構造化・可視化されるような世界がくるのではと思いますし、それによって多くの方のキャリアが発展するような機会に繋がればと思いました。HRTech分野においては今のところ組織診断系が多い印象ですが、こうした個人向けの領域でのサービス展開も、ぜひ期待したいと思います。