現職で充実してきた方にこそ必要な内省の機会

現職で充実してきた方にこそ必要な内省の機会

伊藤直也
2018/ 4 / 17

※前提として、これから記載する内容は「転職において、かくあるべし」といった内容ではなく、ここ最近に実施したカウンセリングでお会いした方々との関わりの中で得られた一つのものの見方とお考え下さい。

あくまでも偶然なのですが、特にこの2月・3月の間、「大手有名企業へ新卒入社し、幾つかの部署で長らくキャリアを積み重ねてきた中で、現在転職を検討している」という方とお話させていただくことが多く見られました。

ご経歴は様々ですが、皆様ご年齢で言えば35〜40歳くらいまでの方であり、いずれの方も、いわゆる優良企業にいらっしゃることもあり、「会社都合で転職せざるを得ない」というよりも、「仕事・同僚から刺激や成長実感を感じられなくなってきた」「昇進昇格(あるいは給与UP)の機会が頭打ちになってきている」「何となくこのままでいいのか不安に感じる」といった思いをきっかけに、転職を一つの選択肢として考えたい、具体的に意識していきたいということでお会いさせて頂いたような形でした。

実際、皆様とのキャリアカウンセリングの進め方・流れは人それぞれなのですが、上記のようなバックグラウンドをお持ちの方々の複数に見られる共通点として、「経験を活かしたい」という思いは明確にあれど、「自身の将来に向けて、そこまで強いこだわりがない」という印象を受けました。

表現を変えると、皆様、これまで仕事には充実して取り組んできており、実績を築くことも出来ています。しかし、「これまで何を目指してやってきたのか?今後、どのような仕事がしたいか?」という問いに対して、明確な回答を得られた方は少なくありませんでした。もちろんそれがクリアで無いが故に相談頂いているということもありますが、中には実際に転職活動をしている中で、先に述べた問いへの回答がネックとなっているが故に、書類選考は通過するが面接で合格しない、という方もいらっしゃいました。

ちなみに皆様、本当に優秀であり、過去の実績や培った知見もさることながら、端的かつ論理的な受け答えや、誠実さ、成長意欲など申し分ない方々です。それゆえに何かしらの共通する背景があるのではないか?とここ最近考えていたのですが、一つ下記のようなことが言えるのではないかと思いました。

お会いした方々は、業界や職種は異なれど、下記の点が共通しています。

・入社配属時から、会社の花形や経営の中核となる部署、あるいは重要PJTにアサインされている。
・各部署で実績を残した次のステップとして、更に魅力的なor醍醐味のある仕事を任され続けてきた。

そのため、これまでのキャリアで充実しながら成長実感も得て続けてきていると言っても過言で無い方々なのですが、一方で、上司や組織から「自分のやりたい仕事は何か?」を問われるような機会がほぼ発生すること無かった、むしろ丁寧に育てられたことで、「何がやりたいか?」を自身で考えさせられる機会に恵まれなかったのでは?とも言えるのではと思ったのです。

得てして、大手企業の35〜40歳はまだまだ管理職前後で実績を積むことが求められる年代であり、評価されている方であれば何も言わずとも、それなりのアサインが自動的に降ってくることは十分にあり得ることです。また、魅力的な・重要な部署での仕事を任された本人にとっても、その期待に応えたいと思い、強いコミットメントで取り組むことは当然のことと思われます。

ただし、上記のような形で、”面白い仕事が向こうからやって来続けてきた方”が、いざ転職をしようとなったとして、面接の場で「あなたは何をしたいのですか?」と問われても、当惑してしまうことは十分に考えられるのではとも思いました。

実際、何名かの方に上記の可能性をお尋ねしたのですが、「確かにそういう節はあるかも知れない。今まではどの部署・仕事にも熱中して取り組んできたし、疑問を持つことも無かった。」「これまでどの上司からも『あなたは将来何をしたいのか?』と問われたことは無かった気がする。」といったようなコメントが複数挙がりました。

もちろん、どのような方でも、会社側から与えられる機会を断わる理由は当然ありません。課せられたミッションに全力でコミットすることで、新たな視座や成長が得られるためです。ただし、もし先々に転職を考える必要性が出てきた場合、「これまで何を目指して仕事に臨んできたか」「今後に向けてどのようなキャリアを目指したいと考えているか」という2つのテーマに必ず向き合うことになります。

その為、転職するしないはもちろん、今の仕事に満足しているしていないに関わらず、

・これまで取り組んできた仕事がご自身のキャリアにとってどのような意味を持つか?
・今後、自身が取り組むべき課題や伸ばしていくべき領域はどこにあるのか?
・このまま自身が今の会社でキャリアを築いた際にどのような状態が待っているのか?
・これまでのキャリアにおいて何か叶えたい・解決したいと思うテーマはあるのか?

といった点は節目節目で考える機会を持っておくに越したないのではないかと思った次第です。

そうした機会は、上司同僚の方と持つことも大切だと思いますし、切り口を変える意味では、私たちのようなエージェントを利用して頂いても良いかもしれません。また、最近では様々な同業・異業種交流会なども有効です。

そしてその中でぜひオススメしたいのは「自分との対話」です。

もちろん他者との対話によって得られるものは多分に存在しますが、その前に、他者へ対して自分自身を的確に説明することは、なかなか難しい作業とも言えます。その為、まずは自己対話(内省)をするところからスタートして頂くことも有効なのではと思います。