「急ぎでは無い」転職活動を進めるときのポイント

「急ぎでは無い」転職活動を進めるときのポイント

伊藤直也
2018/ 5 / 15

type転職エージェントでのミドル・エグゼクティブ担当チームでは、現在、40代前後の候補者様をご支援することが多いのですが、お会いする多くの方々は「今すぐに転職する必要がある」のではなく、中長期的なスパンで「転職という選択肢」を考えておきたい、というご希望であることが殆どです。

そこで今回は「今すぐ転職は考えていない」、「でも将来のキャリアは色々考えている・・・」といったご意向をお持ちである40代以上の経験豊富な方々に向けて、オススメしたい活動の進め方をまとめてみました。

一般的に、40代を過ぎてますとマッチする求人数には限りが出てきやすいことから、送られてくるスカウトメールが減ってきた…ということもあるかも知れません。

こうしたこともあり、経験豊富な方においては、転職の必要性に関わらず、転職活動を通じて、

1)自身の価値の源泉は何か(経験・実績・スキル・専門性など)
2)自身の価値が評価される市場の有無とその傾向

という2つを常に押さえておいて損はないかと思います。

逆にここまでクリアにすることなく、エージェントと話して、求人見て終わり…となってしまうのは非常に勿体無いです。

1)自身の価値の源泉は何か(経験・実績・スキル・専門性など)

市場価値というと、年収●●●万円!、どこでも通用するorしない!といった表現で一括りにされがちです。ただし、まず押さえておくべき点は、これまでのキャリアにおける特徴を因数分解したうえで、何が「価値の源泉」であるかを把握しておくことです。

例)
・会計・人事・SCMなどの特定業務知識
・金融・製造流通などの業界知識
・品質を担保するためのプロジェクトマネジメント
・大手企業の意思決定・行動力学を理解している
・成長企業における社内の問題解決を経験している

上記のように、市場価値は何か1つの価値に限定されるのではなく、業界固有のものもあれば、業界や職種をまたいで評価されるもの(よくポータブルスキルと言われます)などで構成されます。

また、上記の掛け合わせによって評価されることもあります。

特に40代以降など経験豊富な方においては、長いキャリアの中でいくつかの要素を築かれていますが、業界経験や専門知識以外のスキル・知見・経験などにおいて、「当たり前に出来て当然」「何の苦もなくやっていた」ことが実は特定の人材市場で評価されるものであった、ということも、決して珍しくありません。

業界や業務、技術の知識などわかりやすい専門性はもちろん、どのような性質の顧客、組織、課題に強いか、といった点も含め、様々な切り口で予めキャリアを整理しておくことによって、いざ本格的に転職活動をしようとした際にも、効果的/効率的に進めることが可能になります。

2)ご自身の価値が評価される市場はどこか

1)で整理した価値の源泉を、どのような市場で評価されるのか?というところまで具体的に検証するところまで進めることによって、転職の是非に関わらず、ご自身の可能性/選択肢をより現実的に考えることが出来ます。

多くの方が「経験を生かせるところで活躍したい」と仰いますが、その「経験を生かせるところはどういうところなのか?」を、具体的にしていく作業というイメージです。

ちなみに、現在頻繁に取り沙汰される「市場価値が高い」という言葉は、「どの業界でも高い価値を評価されるスキル/経験」という形で述べられることが多いのですが、実際の転職市場は業界/職種/役割などで細かく分かれます。

例)社内SEの転職市場、SaaSの転職市場、PM人材の転職市場など

そのため、まずは「どこの市場を狙うのか?」が分かれば、その市場に詳しいエージェントや業界人にコンタクトを取りつつ、更にご自身の可能性を見出していくことが可能となります。

また、市場は「需要と供給」によって成立されることから、求人先や転職者のトレンド次第では、市場価値が上下するなど、影響を受ける可能性があります。

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例1)ソーシャルゲーム業界のエンジニア

黎明期の頃は、SIで業務系のSE人材を積極採用してきたものの、市場が成熟し、経験者が増えるにつれて未経験者募集の間口は狭くなった

例2)社内SEにおける内製化の影響

社内SEの求人市場では内製化の動きが目立つなかで、業務知識やベンダーコントロールのみならず、アーキテクト人材や、アジャイル開発に強い人材が求められるようになっている

例3)セキュリティ人材の需要の高まり

あらゆる産業でサイバーセキュリティの需要が高まっているなかで、社内ITにおけるセキュリティ人材の採用ニーズも活況となっているため、従来、日系の老舗企業では敬遠されがちだった転職回数の多い人材でも、採用される事例が目立ってきている

例4)UXディレクター<UI/UXデザイナー

様々な企業でデジタルサービス/サブスクリプションサービスが進むなか、UI/UXをプロデュース出来ている人材のニーズが高まっている一方で、求人各社においては、ディレクションや品質管理やプロマネなどが出来るUXディレクターよりも「手を動かせる」UIUXデザイナーの需要が強い

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特に昨今は、世の中の動きに合わせて組織の変化も激しいため、自分の経験が活かせる、希望している求人市場も変化している、と思っていただく必要があります。

そのため、ご自身の市場が特定できた先には、
・求人側のニーズはどのような傾向にあるのか?
・転職者側(ライバルとなり得る人々)にはどのような状況が見られるのか?
などを把握しながら、転職するか否かに関わらず、
・自身のキャリアで狙える市場はこの先どうなっていくのか?
・自身の市場価値に影響を受けるリスクがあるとすれば何か?
・今後、どのような経験やスキルを身に付けるべきか?

といったことを考え続けることが大切です。

転職はしなかったものの、上記のような情報収集を、複数のエージェント面談や採用企業とのカジュアル面談を通じて、現職先でどのような目標を掲げて仕事を続けれけばいいのか?といった方向性がよりクリアになった方もいらっしゃいます。

あるいは、こうした仮説に基づいて幾つかの選考を受け、実際にご自身がどのような評価を受けることになるのか?を予め確かめることが出来たことによって、”急遽転職せざるを得なくなってしまったが、スムーズに準備をして転職活動を進めることが出来た””たまたま魅力的な求人に遭遇したものの、短い準備期間で的確に自身の市場価値をアピールし、内定に至ることが出来た”といった体験に繋がっている方もいらっしゃいます。

もちろん無理に転職活動や求人応募を強いることはいたしません。

ただ、転職サイトやエージェントなどで情報収集をしよう、と思われたことだけでも、大変行動力のある話ではありますので、現職やご家庭に支障を来たさない程度で、ご自身に広がる市場や、その中での立ち位置を確かめることはぜひ試していただきたいなと思います。