事業会社のDXに関心がある方向けのオススメ書籍
今回は、GW中に読んで参考になると思った書籍について記載してみました。
結構、話題になったかと思うので既にご存じの方も少なくないかと思いますが、事業会社でDXに携わる機会を希望・検討されている方には色々な示唆を得ていただけるのではということで、ご紹介させていただきます。
“みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」”
著者 日経コンピュータ 山端 宏実、岡部 一詩、中田 敦、大和田 尚孝、谷島 宣之
日経コンピュータの掲載記事を全面的に加筆・修正して作られた書籍であり、『ついに完成した「IT業界のサグラダファミリア」、その裏側に迫る』といったコピーの通り、みずほ銀行の合併直後から、新システム「MINORI」の完成までに至る壮大なスケールのビジネスノンフィクションとしても十分に読み応えのある内容です。
また、後書にて記載されている通り「システム担当者だけでなく経営トップやすべてのビジネスパーソンがシステムについて問題意識を持ち、主体的に行動しなければ、企業は「2025年の崖」から転落してしまう(そのまま抜粋)」という意図のもと、今後DXに臨む多くの人々にとって参考になるような内容が書かれています。
今回はその中で、エージェントとしてDX関連の求人/転職希望者様と接していく中で、個人的に印象的であったものの一つである「時間をかけてレガシーシステムに向き合うことへの重要性」を取り上げてみたいと思います。
本書では、新システム「MINORI」の設計思想や、東日本震災後の大規模障害において、基幹システムの仕様を正しく把握している人材が不在であったことが、障害を悪化させる背景の一つであったこと、そして長年にわたり着手すべきとされていた基幹システムの刷新の決断が経営によって敬遠されてしまってきたエピソードなど、大規模かつ時間をかけて複雑化してしまったレガシーシステムに向き合うことの難しさ・大変さを感じさせる内容が多数見られました。
そしてエージェントとしてこれらの内容を見て思うのは、「レガシーシステムへの対応」は企業にとって重要であるものの、実際にこうした機会に向き合っている方の多くが「長期にわたってシステム刷新に関わってしまうと、技術者として潰しが利かなくなってしまうのではないか?(このまま数年この状態でいることで市場価値は大丈夫なのか?)」という不安や懸念を抱えている方が少なくないことに難しさを感じることです。レガシーシステムの刷新・最適化にはどうしても数年の時間を要してしまうことから、途中で不安や停滞感や閉塞感を感じてしまう方もおられるような印象です。
実際問題、基幹システムの刷新についてはその内容や方向性にもよりますが、かなり時間を要することから、仮に転職してその機会に臨む場合は「その刷新PJに自身の数年間を費やす」という意思決定を迫られることになります。もちろんリリース前、プロジェクトの途中で転職をすることも理論上可能ではありますが、その場合、在籍中におけるご自身の実績も部分的となってしまうリスクがあるので注意が必要です。スキル経験のフィット感や働き方・条件面はもちろんのこと、会社のシステム投資やIT活用に対する方向性、数年単位でどのようなビジョンを描いているか、ユーザー側のITリテラシーや共通認識などを細かに確認いただいたうえで、ご自身の数年間を投資すべきか否かをご検討いただくことが好ましいです。
具体的には、そこまで目新しいものでもないのですが、ITシステムの責任者様のお人柄や考え方や経営ビジョン、事業戦略に基づいた基幹システムの構想・考え方、所属組織(自身の所属先及び周辺のチーム含む)がIT戦略・方針に基づいて設計されているかなどがセオリーかと思いますが、個人的には「ここまでその会社のシステムがどういう変遷によって運営・開発されてきたのか」というエピソードを聞いていただくと、よりリアリティを感じていただけるような印象です。なかなか生々しい話なので、開示いただけるかは会社様によるのですが、前途の通り、ご自身の数年を投資することになるだけに、可能な限り理解いただくことを心がけていただくことをお勧めします。