私たちのキャリア入門
自分らしいキャリアはどうしたら作れる?
前回、キャリアを作るのは目標ではなく習慣だというお話をしました。では、どんな習慣を身につければよいのか?今回は、自分らしいキャリアを作っていくために必要な三つの習慣についてお伝えします。
公開 : 2024/04/15 更新 : --/--/--
自分らしいキャリアを作るヒントが満載!
私たちのキャリア入門
自分らしいキャリアを作っていくためのヒントを詳しくレクチャー。元慶應義塾大学大学院・特任教授の高橋俊介先生によるキャリア講座全15回です。
※このコンテンツは、転職サイト『type』の記事を転載したものです。
高橋俊介さん
元慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授
キャリア開発の研究で第一人者として知られる。東京大学を卒業後、日本国有鉄道に入社。1984年、米プリンストン大学工学部修士課程を修了し、マッキンゼーアンドカンパニーに入社。89年には世界有数の人事組織コンサルティング会社ワイアットの日本法人(現ウイリス・タワーズワトソン)に転職し、93年より同社代表取締役社長に就任。97年に退任、独立後も、人事コンサルティングや講演活動を続けている。
1.主体的ジョブデザイン行動
慶應のキャリアラボが実施した2400人規模のアンケート調査と60人以上の個別インタビューにより、「自分らしいキャリアを切り開いてきた」と感じている人は、「自分らしく仕事をする」という行動をとっているという結果が出ています。五つのポイントに分けて、より具体的に説明していきます。
■自分の価値観やポリシーを持って仕事に取り組む
多くの人は、仕事をしていく上で大切にしている「ポリシー」があると思います。私の場合は「仕事を通じた価値提供にこだわる」ことです。価値を出せないと感じた場合には仕事をお断りすることもあります。譲れないものがあることで、仕事における「自分らしさ」が鮮明になっていくのです。
■社会の変化やビジネス動向について、自分なりの見解を持つ
つまりは「自論を持つ」ということですね。「あなたはどう思いますか?」と聞かれた時に、誰かの意見の丸写しではなく自分なりの答えが言える。私はこれを「コメンテーター的な発想」と呼んでいます。テレビのコメンテーターは、例え専門外のことであったとしても意見を求められればすぐに答えなければなりません。同じように、世の中のあらゆることに興味を持ち、「自分はこう思う」と考える癖をつけておけると良いですね。
■部署・チームを越えて、周囲の人を巻き込みながら仕事をする
パソコンと向き合う仕事の場合は職場も静かですし、誰がどんな仕事をしていて、今何に悩んでいるかが見えづらくなります。すると、「これは自分の仕事だから」と抱え込んでしまい、自分のできる範囲だけで仕事をしようとする。それだと仕事が広がらないですよね。手間は掛かるかもしれませんが「手伝ってもらえませんか?」と声を掛けて人と一緒に仕事をしていった方が学びは多いはずです。人間関係も築けますし、人を巻き込む力が付いていきます。「人に助けてもらう」というのも一つの能力なのです。
■今までの延長線上のやり方ではなく、自分なりの発想を持って取り組む
「前任者はこうやっていたから」「こうやれと言われたから」といってその通りに進めるのではなく、自分なりのやり方を考えてみる。そうすることで、どんな仕事にも主体性が芽生えていきます。
■自分が満足できる仕事のやり方を工夫する
仕事のペースや順序、方法など、一人一人に向き不向きや好き嫌いがあります。だったら、自分の得意な土俵に持ち込んでしまいましょう。上司に言われたやり方というのは、その人にとってのやりやすいやり方でしかない。自分が一番気持ち良くできる仕事のやり方を、常に追及していきましょう。
2.ネットワーキング行動
とある人から声を掛けられたことがチャンスにつながる、といった話をたまに耳にしますが、そのチャンスを得るためには、たくさんの人に自分のことを知っていてもらわなくてはなりません。自分の思いをひた隠しにしていたら、得られないチャンスもあるということですね。新しいネットワーク作りに常に取り組んでいることが重要なのです。
次に、自分のネットワークを構成する人々が、どんなニーズを持っているか把握すること。そしてそれに応えようとすることも大切です。要するに「お役立ち」できるようにすることです。自分の都合だけ考えて、損得勘定だけで人間関係を築こうとしてはいけません。
エピソードを一つご紹介します。とある店舗で店長を務めていた方が、上司と衝突して大ゲンカをしました。その時、新規参入してきた外資系企業から引き抜きの声が掛かったのです。結果、「こんな会社辞めてやる!」と啖呵を切って、店長は意気揚々と転職しました。しかし数年後、伸び悩んだ外資系企業は日本から撤退。そのオペレーションが売却された先が、なんと前職の企業だったのです。つまり、ケンカ別れしたかつての上司が再び自分の上司になってしまった……。
一時の感情に任せて、この人は自分のキャリアに関係がない、と判断するのは非常に危険です。どんな相手であっても、ニーズを把握して力になれることがないか考える。そういった心構えが、巡り巡って将来に影響してくるのです。
もう一つ、自分の問題意識や考えを社内外のキーパーソンに共有していくことも大切です。勉強していることや努力していることを黙っている人も多いと思いますが、伝えていった方がよいのです。
役員や上司に対して「弊社はこの分野にもっと投資するべきです」「だからこういう商品の開発が必要だと思います」と、自分自身の考えを伝える。すぐにことが起きなかったとしても、言われた方は案外覚えていてくれるものなので、その分野について検討するタイミングがきた時に自分のことを思い出してくれるかもしれない。すると、チャンスが巡ってきやすいのです。
3.スキル開発行動
研修やセミナーなどの社会人教育の場は数多くありますが、自身の時間とお金を使ってまで勉強しようと思う人は、あまり多くはありません。しかし世界へと目を向けてみると、ホワイトカラーが自分自身のスキルアップに時間とお金を投資しないのは、日本くらいなのです。先進国はもちろんのこと、インドや中国といった新興国であってもスキルアップへの投資を惜しみません。競争社会だからこそ、振り落とされないように勉強に励むのです。
周囲を見渡して、みんなも同じだから、と安心してはいけない。このままでは、日本が世界から孤立してしまうという危機感を持つ必要があります。また、社外で勉強することで刺激が受けられるし、人脈も得られる。先に挙げた二つの行動習慣とリンクしていくはずです。
次回は、上記の中から「ネットワーキング行動」についてより詳しく解説します。具体的にどのような人間関係を構築していくべきなのか、考えていきましょう。
企画・撮影協力/ ビジネス・ブレークスルー(BBT)
※このコンテンツは、2016年にtypeメンバーズパークに掲載された動画を新たに記事化したものです。文中の組織名・肩書きは当時のものです。