エンジニアリングマネージャーにおける“課題”マッチングの難しさ

エンジニアリングマネージャーにおける“課題”マッチングの難しさ

伊藤直也
2021 / 01 / 27

2021年もいよいよ始まった…と思ったのもつかの間、アッという間に1月が終わろうとしているような状況でして、有難いことにデジタル関連は多数の求人ご依頼を頂いております。転職希望者様、採用企業様のいずれにおいて、まだお役に立てていないお客様も少なく無く、本当に何とかせねばと日々感じている次第です。

今回はそうした中で、なかなかマッチングが難しいものの一つ、エンジニアリングマネージャー(以下、EM)について言及してみます。私もまだまだ膨大なケースを経験したとまでは全く申せないのですが、色々な求人やEMの方とお会いさせていただくなかで感じたことを記載します。

この2年ほどで、VPoEを含むエンジニアリングマネージャーの求人はだいぶ増えたという実感があり、おそらくそれはEMの皆さまも同様なのではないでしょうか。また、カンファレンスやミートアップにおけるテーマとしてもEM関連は多数見られていますし、書籍はもちろんnoteやポッドキャストなどのコンテンツの充実も含めて、多くの人が「組織としてのシステム」に向き合おうとされているように感じます。

私はエージェントとしてEMのオーダーを頂く、あるいは実際にEMを担っておられる方にお会いすることがしばしばあるのですが、EM領域において特に難しいなと感じるのは、“マネジメント”という定義/解釈の曖昧さです。これは実際、エンジニアに限らず、営業部門や管理部門などのマネジメント職でも同様なのですが、特にEMについては「優秀なEMを採用すれば今までの苦労がすべて解消される」という期待を抱いている募集が見られたりするなかで、お互い相思相愛で採用に至ったものの、「思っていたマネジメントが期待できない」と双方が感じてしまうようなケースも見られます。

そのため、EMのマッチングにおいては、その会社様がどのような課題を抱えており、それをどのような時間軸・優先順位で解決していこうとしているのか、またそれを踏まえ、EMにどのような課題解決経験を特に期待するのか?という部分を整理したうえでの相互理解が必要であると感じています。

ちなみに以下は、EM求人にしばしば見られるミッション・テーマです。

1)アジャイルの導入あるいはアジャイルの推進(プロセス改善+風土変革)
2)大がかりな技術負債の返却/解消
3)ビジネス側と開発側の橋渡し/交通整理
4)2段階以上のレイヤーの組織作り(リーダーやミドルMgrの育成など)
5)新組織立ち上げに伴う体制構築の主導

また、こうした課題の裏側にある背景まで含めて理解いただき、ご自身の経験とマッチしているかはもちろん、背景や課題から想定される解決に向けたアプローチの方向性がご自身のポリシーや組織観とマッチしそうかどうか?なども予め予想出来ていると、面接の中で効果的なやり取りが展開されやすくなります。

ちなみに、エージェントとしてこのような事を申し上げるのは微妙かもしれませんが、実際に求人オーダーの際に頂く「求人企業様の課題」は、もちろん当該の候補者様にお伝えするものの、課題/問題は見ている人の立場によって見え方が違うので、その課題/問題の設定のされ方が本当に正しいのかは、ぜひクリティカルに見極めるくらいのスタンスでお臨みいただければと思います。特に上記の2や3については、立場によってモノの見方が変わること少なく無いため注意が必要です。EMだからエンジニアのみとコミュニケーションを取ればいいとは限りませんので、必要に応じて、企画や営業などのステークホルダーとも接点を持っていただけると良いかと存じます。

なかなかマッチングは慎重になる求人ですが、ぜひこうしたことをご参考いただきつつ、より良い機会を模索していただけますと幸いです。