【社労士監修】転職後の住民税はどうなる?納付方法やその他に必要な手続きは?

今回のお悩みは「転職後の住民税」について。会社員であれば給与から天引きされていて普段は意識していない方が多いのではないでしょうか。いざ転職後を迎えるとどうしたらいいのか分からない……そんな方のために今回は転職後の住民税のあれこれとその他の必要な手続きも合わせて徹底解説します。

公開 : 2024/03/19 更新 : ----/--/--

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本連載では、転職後のさまざまな壁を乗り越えて、新しい職場で活躍するためのコツをアドバイス! 入社直前の不安な気持ちから、入社後の仕事・人間関係のトラブルまで、転職後1年目に起こりうる「あらゆるお悩み」を取り上げていきます。

今回のお悩み

転職したら住民税ってどうなるの?

初めての転職活動で無事新しい職場が決まり退職交渉も終え、来月退職する予定です。取り敢えずはホッとしたのですが、初めての転職ということもあり手続き系がよく分かりません。特に住民税がややこしそうで、もしよければ教えてください。

住民税は退職する時期によって納付方法が異なる

住民税は退職する時期によって納付方法が異なるのイメージ-type転職エージェント

こんにちは、『転職そのあとLABO』のかずえです。

住民税って普段意識することが少ない分、いざ自分で手続きをしないといけないとなるとよく分からず不安ですよね。

そこで今回は社会保険労務士をお持ちの田中さんに住民税の納付方法は退職する時期によって異なるので、まずは、どうして異なってくるのか住民税の仕組みとともに説明していただきました。

住民税の基本について

住民税は都道府県に納める「都道府県民税」と市町村に納める「市町村税」(東京23区は「特別区民税」)を総称した税金のことです。1月〜12月の収入に対して課税され、その支払いは翌年の6月から始まり、1月1日時点で住民票がある市町村区に納付します。年金や健康保険の場合、支払いが厳しい場合では減免されることがありますが天災などを除いて住民税は原則減免されることはありません。

住民税の徴収方法と内訳について

◆住民税の徴収方法

「特別徴収」
会社が給与から住民税を徴収し納める方法のことです。6月に支給される給与から翌年の5月までの1年分の住民税を12分割した金額が給与から天引きされます。

「普通徴収」
納税通知書が届き、金融機関の窓口やコンビニ・口座振替などで自分で住民税を納付する方法のことです。年4回(6月末・8月末・10月末・翌年1月末)が納付期限で、全額まとめて納付したい場合には6月末までの一括払いでもOKです。

◆住民税の内訳

住民税=「所得割額」+「均等割額」

「所得割額」:前年1年間の収入に応じて課税
所得割額=(所得額-所得控除額)×所得割税率-税額控除額
所得割税率は都道府県や市町村区によって税率は異なってきますが原則都道府県税が4%、市町村税が6%の合計10%の自治体が多いです。また所得控除額は、給与額ごとに控除割合が決められています。

「均等割額」:所得と関係なく均等に課税

住民税はこのように前年の収入をもとに納税金額が決まるため転職してすぐに住民税額が変動するということはありません。つまり転職後の給与が下がると負担が大きくなり、給与が増えると負担が軽くなるということですね。

【退職日別】納付方法の違い

先ほどお伝えした通り住民税は1月~12月の収入に対して課税され、その支払いは翌年の6月からとなります。そうなると途中で退職した場合、本来特別徴収で引かれるはずだった住民税の残額はどうしたらいいのでしょうか。

退職日別のパターンに分けて納付方法の違いについてご説明します。

退職日が1月1日~5月31日の場合

原則として、退職月〜5月末までの住民税は退職した月の給与や退職金から一括で徴収されます。つまり5月に退職した場合、残りの住民税は5月分のみとなりますのでこれまでと同じ住民税額が最後の給与から徴収されます。

ちなみに一括徴収額が給与や退職金を上回る場合には、その分の金額を普通徴収で納めなければなりません。

退職日が6月1日~12月31日の場合

翌5月までの住民税を会社に一括徴収してもらうか、普通徴収として自分で納めるか選んでいただくことになります。

【よくある質問】退職日よりも前に次の転職先が決まっている場合の今後の住民税の納付方法は?

今後転職先での住民税の納付に関しては、質問者さんのように退職日より前に転職先が決まっている場合には転職前の会社に「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を発行してもらい転職後の会社に提出すればこのまま転職先でも特別徴収を継続することが出来ます。

【よくある質問】離職期間が発生する場合の今後の住民税の納付方法は?

反対に転職先がまだ決まっていない場合もしくは入社まで期間が空き、空白期間がある場合には普通徴収となります。市区町村区から納税通知書が送られてくるので、期限までに納付することをお忘れなく!

【よくある質問】転職と同時に引っ越した場合、二重支払いされてしまうのか?

また、転職と同時期に引っ越しをした場合、旧住所と新住所でそれぞれ徴税されてしまうのか?という不安もよく耳にします。結論、二重支払いになることはありません。なぜならば1月1日時点に住民票に住所がある市町村区に納めるためです。新住所の市町村区で住民税を納めるのは翌年の6月からになります。

年金や健康保険の手続きはどうなる?

まとめのイメージ-type転職エージェント

と、ここまで住民税のお話をさせていただきましたが、退職時って他にも書類を提出したり何かを申請しないといけないのか?と心配になりますよね。

その他の手続きとして主な必要手続きは、年金や健康保険といったものがありますが、離職期間が1日もない、つまり退職後すぐに転職する場合なら基本的には簡単なことが多いです。結論から申し上げると、退職後にすぐ転職する場合、年金や健康保険などの手続きは基本的には会社が行ってくれます。

まずは年金の手続きについて。退職日と転職先の入社日が同じ月もしくは、月末に退職して翌月に入社の場合には、引き続き厚生年金に加入するため転職先に年金手帳を提出すれば、会社が手続きを行ってくれます。

期間が空く場合には国民年金への切り替えが必要となります。退職日の翌月から14日以内に住民票に住所のある市町村区役所の国民年金担当窓口で手続きをしなければなりません。詳しくは日本年金機構の情報をご覧ください。

次に健康保険について。会社単位での加入となっているため退職日の翌日から保険証が使用できなくなります。健康保険の切り替えの手続きが必要となってきますが方法は大きく分けて4つあります。ご自身の当てはまる健康保険をチェックしてみてください。

①転職先の健康保険に加入する

転職先の会社で新しい健康保険証の発行手続きをします。また扶養家族がいる場合には被扶養者の分も同時に申請します。申請時には原則マイナンバーや扶養家族がいる場合には世帯の住民票や収入証明(非課税証明書等)などを提出する必要があります。会社の担当者の指示に従い必要な書類や情報を提出します。転職先が決まっている場合には基本的にこちらのパターンになるかと思います。

②国民健康保険に加入する

退職日の翌月から14日以内に住民票に住所のある市町村区役所の国民健康保険窓口に出向き、加入の手続きを行います。その時に前職の会社を退職したことの分かる書類が必要となりますので発行してもらいましょう。また国民保険は扶養の概念がないため扶養家族がいる場合には家族全員加入する必要があり、その分の保険料も支払う必要があります。

③転職前の会社の健康保険を任意継続する

退職日以前に継続して2か月以上の被保険者期間があることと退職日の翌日から20日以内に手続きをすることを条件に転職前の会社で加入していた保険を最長2年継続することができます。ただし会社が負担していた分も保険料を支払う必要があるので在職時より2倍程度上がることになります。

④家族の扶養に入る

珍しいケースかと思いますが今まで被扶養者だった家族が会社で働くことで保険証を持つこととなった場合にはその扶養に入るのも方法の1つとしてあります。被扶養者になるには書類をそろえて審査に通る必要がありますので事前に確認しておきましょう。

いかがでしたでしょうか。手続きする種類が多くややこしく見えますがこうして分解してみると1つ1つやることがはっきりしてきませんか。後回しにせずこのタイミングでしっかり片付けてすっきり新生活を始めましょう!この記事を通してややこしい退職手続きについて少しでも理解が深まっていただけたらうれしいです。

相談室の人
かずえ

かずえ

『type転職エージェント』の企業担当として約3年間に渡り、大手、中小、ベンチャーと幅広い企業の採用活動をサポート。 WEB業界やIT業界を中心に70社以上の中途採用を支援してきた経験を活かし、転職者のその後の活躍を支援するチームで活動を始める。 好きな業務は、企業の人事との意見交換。周りからよく言われる性格は「スーパーポジティブ」
ゲスト
田中 祐也/人事課 課長

田中 祐也/人事課 課長

【保有資格】社会保険労務士、第二種衛生管理者
前職ではHRBPのアウトソーシング会社で事務や法人営業の業務を経験。その後type転職エージェントを運営する株式会社キャリアデザインセンターへ中途入社をし、人事部人事課課長として、全社の給与計算や産休育休などの各種社会保険手続き、人事制度設計や運用に携わる。経営の屋台骨となる人事制度の立案などに携われることにやりがいを感じている。

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