「転機」に応じたキャリア形成を考える-4Sトランジション・モデル

「転機」に応じたキャリア形成を考える-4Sトランジション・モデル(byシュロスバーグ)

武藤卓麻
2022 / 06 / 15

弊社のミドル/ハイクラス専門チームにおいては、ご経験や在籍企業など様々なバックグラウンドの方と面談をしますが、ご相談のキッカケとしても多様な「転機」を抱えている方が多くいらっしゃいます。

今回は、スタートアップ企業様からの声も参考にしながら、「スタートアップへの転職」というテーマで記載をさせていただきます。その内容は現職での出来事からプライベートな事情まで人それぞれです。
特に変化の激しいビジネス環境、コロナ禍におけるライフワークの変化から転機に出くわす場面も多くなっているのではないでしょうか。

私も10年ばかりの社会人、人生ではありますが現職での昇進や異動、上司/同僚の変化、プライベートでの結婚、子供の誕生などいくつもの転機がありました。
その転機ごとに自身の人生観/価値観、興味の変化や得られたビジネススキルを実感しています。 そのような「転機」によってキャリアというものを考えられる方も少なくないのではないでしょうか。今回はそんな「転機」と「キャリア」という観点で書きたいと思います。

通常キャリアカウンセリングで用いられるものですが、「転機」を考えるうえで、シュロスバーグが提唱する「4Sトランジション・モデル」という理論をご紹介させていただきます。あまり理論をベースとして自身のキャリアを考えられる方は多くはないと感じていますが、時にはこういった理論をもとに原点回帰することも一つオススメです。
キャリア・アンカー理論、計画的偶発性理論(クランボルツ)もキャリア理論の一つです。

元全米キャリア開発会長のナンシー・K・シュロスバーグは、
人生はトランジション(転機)の連続からなり、人のキャリアは、それを乗り越えるプロセスを経て形成されていくとし、トランジションを乗り越えるための対処法(4-Sモデル)を提唱しています。

要するに誰もが人生で「転機」に見舞われており、それらを乗り越えたり、自身を変化させることによってキャリアが形成される。
そのために4S点検(※後述)が大切というものです。

また、その「転機」には、
① 予期していた転機(昇進、結婚、子供の誕生、転職など)
② 予期していなかった転機(急な人事異動、コロナ禍で影響を受けたものなど)
③ 予期(期待)していたけど生じなかった転機(昇進、人によっては結婚など)
の大きく3種類に分けられると言っています。
記載のとおり、人によっては転機の捉え方が異なるため、それぞれに当てはまる転機もあります。

更には、その転機によって
1.自身の役割、2.人間関係、3.日常生活、4.自己概念(価値観、興味)が変化していくとシュロスバーグは説いています。
この内1つの変化が生じるケースもあれば2つ以上が生じるケースもあります。この「変化」を感じられて転職を検討される方も少なくないかと思います。

そしてこの転機に伴う変化を受け入れ、乗り越えるための方法(対処法)が前に挙げた4S(自身の4つの資源)です。(ここでようやく4Sとは?)

4Sとは以下要素の頭文字をとったものです。
①状況(situation):役割、期間(一時的な状況、もしくは中長期担保されるものか)、
ストレスの程度など
②自己(self):仕事への価値観、興味関心の先など
┗ 仕事/家庭のバランス(価値観)もここに当たります。
③支援(support):同僚、上司、家族、友人、人脈など
┗ 例えば経済的、もしくは心理的援助は得られるか。
④戦略(strategy):転職、自己研鑽、優先順位、ストレス発散方法など

「転機」を乗り越える、またはよりプラスに転じさせるためには、上記4Sを点検し、次のアクションにどのような選択肢があるのかを具体的に自身で考えて取り組んでいくことが大切です。勿論、その選択肢の中に「転職」も一つの手段でありますが、必ずしも絶対というわけではありません。

面接でほぼ100%面接官から聞かれる転職理由。「転機」が起因して転職を検討される方については、転職理由の整理にも応用できる理論であるとも思います。
面接官に同調してもらえる転職理由であるか、不安を抱えられる転職者の方も多くいますので、その際には一度4S点検から整理してみても良いかもしれません。
いかがでしたでしょうか?

今回は「転機×キャリア」の観点から一つの理論を紹介させていただきましたが、4Sをもとに今対峙している「転機」の状況を整理し、プラスに転じる具体的なアクションを考えて実行してみるのも良いと思います。
自己完結での整理もなかなか容易ではありませんので、是非その際は一緒に相談をさせてくださいませ。