社内SEの求人の変化について

社内SEの求人の変化について

佐竹和浩
2019 / 6 / 5

私が担当しているtype転職エージェントでのミドル・エグゼクティブチームでは、SIer、コンサルティング会社から社内SEへの転職を支援させていただく事も多いのですが、社内SEの役割や変化の特徴をとらえきれないまま、転職活動を進めている方をお見受けするため、入社後のミスマッチを防ぐためにも、少しでも参考になればと考え、社内SEを目指す際の基礎知識や注意点をまとめてみました。

◆社内SEの求人の変化について

今まではユーザ企業がSIerに依頼をしシステムを開発していましたが、コスト面や社内でノウハウの蓄積ができない等の理由から、SIerから離れ、自社内でシステムを開発しようとする流れが近年活発化しています。

①社内システム内製化の背景、特長

現在では、全ての業界や業種において、ITの存在が日に日に大きくなり、ITの活用がないと業務に支障をきたす時代になってきています。以前はコスト面や人員の問題から独自のシステムを開発するわけにはいきませんでしたが、近年ではIT技術の進歩により、以前に比べ個人レベルでもシステムが開発できるようになっています。

内製化の目的はスピードであり、新しい機能が欲しい時や機能を改善したい時、障害が発生した時、全てを外部に依頼するよりも自社内で対応ができる体制があるほうが迅速な対応が可能となります。

システム開発は新規でシステムを構築すれば終了ではなく、その後もシステムが稼動している限りは運用・保守、メンテナンスと業務が付いてまわるので、保守の対応が遅れる=ビジネスがストップする可能性もあるので、対応は早ければ早いほうがいいので、システム開発は内製化が理想といわれています。

②求人傾向

上流工程のみを内製化

上流工程のみを内製化している企業に関しては、自分たちでプログラミングはしていません。また、システムリリース後の運用・保守も基本的にはベンダーにアウトソーシングしています。しかし、自分たちでRFPを書き、業務設計を行い、そしてユーザインタフェースの設計までをユーザ主体で実践しています。さらに重要なのは、どのケースもベンダーからもたらされたソフトウェアを自分たちの手でしっかりとテストしていることです。

超高速開発ツールを導入して開発・運用の全てを内製化

超高速開発ツールを活用した内製化では、ツールの持つ特性を引き出し、より開発生産性を高める、ツールの向き不向きに合わせて設計を柔軟に調整するといった部分はベンダーに一任することが多いようです。

いくら有能なツールを用いての開発とは言え、大規模な開発養成や、スタッフの退職・異動等で一時的に人手が足りなくなることも出てきます。

そんな時に、自社のことをよく理解しているベンダーであれば、一時的なヘルプを依頼することもできます。このようにして、内製化を成功させている企業は外部ベンダーを非常にうまく使っているという印象があります。

メインストリームにある開発プラットフォームで全フェーズを内製化

超本格的な開発体制を構築しての内製化では、自社のプログラマだけでは対応しきれない緊急性の高い開発案件、及び難易度の高い実装要求が出てきた場合のみベンダーへ一任していることがあるようです。

外部ベンダーに仕事を依頼する時に「何をどのように依頼すれば、どういった品質・スピードでアウトプットが得られるのか」を委託側がしっかりと理解し、そしてコントロールすることが重要となります。

ただし、会計システムや給与計算システムは、恐らく内製化しているのではなく、パッケージシステムを使っている企業が多く見受けられます。

内製化しているのは、あくまでも自社の競争優位性を伸ばすソフトウェアであり、収益性の向上に貢献するシステムであり、これに該当しないシステムをいくら内製化しても、そこから得られるビジネス的なメリットはあまり無いと思います。

③求められるスキル面について

適切なポートフォリオを組む

内製化はあくまでも企業の収益性向上のため、企業の競争優位性向上のための「手段」となるため、投資となっていく以上は、ポートフォリオを最適化することは極めて重要となります。

自社の全てのシステムをアウトソーシングすることに大きなリスクがあるのと同時に、全てのシステムを内製化することも大きなリスクを伴います。

あくまでも達成すべきゴールは、自社の競争優位性を伸ばすことに貢献するソフトウェアを利活用して、実際に収益性を向上させることが重要となります。

適切な開発プラットフォームの選択

世の中の流行廃りでプラットフォームを選択していく思考は全く戦略的ではありません。実装まで含めた内製化を求めていくのであれば、開発プラットフォームを調査・研究し、内製化の目的を具体的に達成するための最も適した開発プラットフォームを選択するという戦略思考です。

変化を受け入れる思考

2015年~少し前までにかけて、ネットワーク専任や言語のスペシャリスト全てを社内で行うには膨大な人件費が必要になったため、アウトソーシングという考え方が主流になっていった背景もあり、当時は「戦略的アウトソーシング」という言葉が頻繁に使われ、アウトソーシングこそが企業の競争力優位になると謳われていました。

当時は、一人の技術者にネットワーク設計、データベース構築、サーバ構築、データモデリング、プログラミングといった広大なスキルを短期間で獲得させることは非常に難しい時代であったため、分業化を進めることで技術者の育成を早め、その結果がアウトソーシングにつながりました。

実際に動くソフトウェアが情報システム投資において価値が有るものと認識するのであれば、フルアウトソーシングでは、受託者・委託者お互いのリスクを軽減するため、契約プロセスを慎重に進めていくため、ビジネスの変化・スピードに対応できなくなってしまいます。アウトソーシングも内製化もスピードを求めて、行われた施策となるのです。

◆内製化社内SEの面接

ここまで述べたように、内製化の特徴について理解をしないまま、「内製化をすることが主流の時代である」「事業会社側での勤務で全ての流れを担当したい」などといった、転職の動機となった理由のまま進めてしまうことで、「ご本人の希望している事が出来ない。」「スキルミスマッチ(プロジェクトマネジメント経験のみで開発スキルが見受けられない)」などといった理由でお見送りとなってしまう可能性があります。

面接では所属部門の担当者が面接官を担当することもあり、会社の特徴やご自身の強みや将来伸ばしていきたい分野を明確にした上で面接に臨まれる事が重要です。これは、入社後のミスマッチも減らし、入社後の早期の立ち上がりも見込めます。

◆最後に

大規模な企業でシステム構築・運用やITインフラの設計・保守といった一部門の担当者として仕事をするのか、あるいは内製化を進めている企業でビジネスよりの観点でシステムに関するすべての業務に携わるのかなど、企業によってキャリアプランの考え方は変わります。

社内SEを目指すうえで、どのようなメリットが提供できるのか、悩まれていらっしゃるようであれば是非企業とのコネクションを持つエージェントとご相談いただければと思います。

企業分析に加えて、ご自身のキャリアパスについてもしっかり考えておくことが、重要となります。