ドゥテルテ政権発足から2年を迎えるフィリピンのいま(前編)

ドゥテルテ政権発足から2年を迎えるフィリピンのいま(前編)

武藤卓麻
2018 / 5 / 16

最近、海外駐在されている方、海外駐在を希望されている方とのご面接をよくさせて頂きます。英語力を活かしたい、●●の国でビジネスがしたい、現法で仕事がしたい、等ご希望はマチマチなのですが、先日、会社の研修でフィリピン(マニラ)を訪ねる機会もありましたので、このタイミングで各社様採用ニーズもあるアジア(特にフィリピン)の環境に関して書かせていただきます。

ASEAN諸国の中でNo.1のGDP成長率を誇り、公用語も英語であり新しいビジネスのブランチ先として注目を集めているフィリピン。
実際に名だたるIT企業、メーカーが次々の進出していきています。

実質GDP成長率
(%)
名目GDP
(億ドル)
失業率
(%)
人口
(万人)
フィリピン 6.7 3,486 5.7 10,628
ベトナム 6.2 2,159 2.4 9,361
インドネシア 5.3 10,149 5.7 26,219
マレーシア 4.6 3,363 3.2 3,226
タイ 3.3 4,036 0.7 6,910
※「IMF, World Economic Outlook Database, October 2016」より引用

しかしながら政治的にも生活的にも社会問題が山積みである実情もあります。
例えば、マルコス独裁政権時から現在に至るまで多数の汚職事件、アンダーテーブル(賄賂)、国内に蔓延る麻薬の乱用、貧困などなど。。。

今回の研修テーマは、上記のようなフィリピンの過去の歴史と国民性から作り上げられてしまった社会問題と、その問題に対するドゥテルテ政権の政策と実情に関して、となりました。ここでは、あくまでも私の実体験ベースでの内容となります。

事前調査として、以下のような下調べをしました。

■2016年6月末に発足したドゥテルテ政権の政策

a)治安対策(麻薬組織の撲滅)

 ・麻薬撲滅戦争を断行し、捜査当局に抵抗する密売人、麻薬中毒者を射殺。
 ・1万3000人以上とも言われる超法規的殺人を実施。
 ・麻薬犯罪に関与したとみられる警察官、役人を吊るし上げ自首を要求。

b)汚職対策

 ・情報公開に関する大統領令を発布。
 ・大統領府の自由裁量で予算剰余分の使途、振り替え先を決める支出促進計画(DAP)の撤廃
 ・関税局、内国歳入局など政府機関職員の汚職調査

c)貧困対策

 ・インフラ投資
中国からの支援金も含めインフラ整備費をGDP比5~7%に引き上げとPPPの活用
 ・公立大学の学費廃止の法律に署名
 ・税制改革
所得税の対象は年間所得25万ペソ以上となり、国民の5分の4は免除される一方、500万ペソ以上の所得にかかる税率は、30%から35%に引き上げられる。自動車税や燃料税も上がり、車を持つ中間層~富裕層への締め付けも実施(全国民の5分の1程度が対象となる

 参考:1ペソ=2.3円(2018年4月時点)

下調べとしては上記のような政権の政策の内容です。
この政策後の実態として、実際にどう変化があったのか、現時に赴いて調べてきました。

次回は、実態の内容について書きます。