SIerからコンサルティング会社への転職傾向について

SIerからコンサルティング会社への転職傾向について

五十嵐有紀
2019 / 5 / 28

SIerからコンサルティング会社への転職を支援させていただく事も多いのですが、コンサルタントの役割やコンサルティング会社の特徴をとらえきれないまま、転職活動を進めている方をお見受けするため、入社後のミスマッチを防ぐためにも、少しでも参考になればと思いSIからコンサルにキャリアチェンジをされる際の基礎知識や注意点をまとめてみました。

各社の特徴やコンサルタントの役割、役職を知った上でご入社をしないと、イメージしていたキャリアから離れてしまう事がありますので、注意が必要です。

1.どのコンサルティング市場においてキャリアを築くか

SIバックグラウンドをお持ちの方がキャリアを活かし、発展させることを考えた場合は、総合コンサルティングファームへの転職が多くを占める傾向になります。

特に30半ばからコンサルタントにキャリアチェンジした場合は、途中で万が一、コンサルタントとして方向性を変えたいとなった場合、軌道修正が大変になるので慎重に市場を見極める必要があります。その中でも大まかな傾向としては下記の通りです。

①業界知識を基点とするキャリア

担当顧客の業界は様々であれども、会計・SCM・CRMなどの特定業務におけるシステム導入・構築に強みを持った方が業界横断の業務・ITコンサルタントとしてご入社され、システム活用に加え、業務知識を深めていくようなコンサルスキルを高められている方もいらっしゃいます。

また、業界・業務知識における強みが明確でなくとも、システム開発における一連のプロセスをしっかりと経験してこられたSIer出身者の方については、プロジェクトマネジメント・品質管理などのスキル・経験を評価されて、PMOやRPA、クラウド活用、リスクコンサルなどのITコンサルタントとして特定分野に強みを持つコンサルタントのキャリアを始められる方もいらっしゃいます。

②総合力を強みに磨き込むキャリア

コンサルファームの中には、業界や業務を敢えて分けずに、顧客の課題に合わせて幅広い支援を行っている会社もあり、業界や業務にとらわれず柔軟性を持った幅広いコンサルティングを身につけたい方は、このようなファームを選ばれる場合もあります。

この場合、戦略、業務改革、ITなど様々なテーマに対応し、クライアントの業界も様々です。わかりやすい専門性は得にくくなりますが、専門知識に依存しない「本質的な問題解決スキル」で勝負するので、将来、メガベンチャーで経営企画や事業開発を担うキャリアを意識したい場合などにお勧めです。

他にもコンサルティング業務を主軸にしながら、自社で事業を運営している会社もあるので、コンサルタントとしてスキルアップしつつ事業創出や運営のチャンスに関わっていく方もいらっしゃいます。

その他、コンサルティングの入り口として、大手コンサルファーム出身者が志を持って始めた独立系のコンサルティングファームを選ばれる方も増えてきております。このような組織へ参画をされる方は専門性というよりも企業の経営理念や価値観に共感をされて入社を決定される方が多いです。

また、立ち上がり間もない組織や少数精鋭で行なっているファームも多い為、組織が整っていない場合もありますが、通常のコンサルティング会社だと長年コンサルタントとして活躍をされているようなベテランにアサインされる様なプロジェクトを早い段階でアサインをされることも多かったり、経営コンサルや新規事業などに挑戦できるチャンスもあるなど、組織が大きすぎない分、早い段階でコンサルタントとしての実績を残す事が出来るのが特徴です。

ちなみに、①②については、「専門性」だけではコンサルタントとして評価されず、コミュニケーションスキルが重要視されることに注意が必要です。

なぜかというと、お客様と対等に話せる業界や業務知識も求められますし、逆に専門性がない方へ納得してもらう説明スキルなど、相手に合わせた適切なアウトプットが求められてくるため。その他、わからないことに対して教えを請う誠実さや、クライアントと仲良くなるための関係構築スキル・ユーモアセンスなどを持ち合わせている方が評価されたりします。

2.転職直後の給与について

SI企業から総合ファームをはじめとしたコンサルティング会社に転職する上で、給与アップは魅力の一つですが、強気の給与を掲げることにより、入社後に苦労されるケースも少なくありません。特に30代後半~40代でMGRクラスの給与を希望する際は注意が必要です。

まず、コンサルティング会社にはタイトル(役職)があり、このタイトルによっても任される内容が変わってきます。

コンサルタントやシニアコンサルタントに関してはプロジェクト成功にコミットする役割が期待されますが、その上のタイトルであるマネージャーやシニアマネージャーの役職で入社した場合は、プロジェクトの責任者になると同時に数字目標がつきクライアントから案件を取ってくるという責任を持つ事も珍しくありません(タイトルが上がるにつれて営業活動の割合は大きくなります)。

その分、年収も高くなっていきますが、相応のプレッシャーや覚悟が必要となります。また、採用側においてもタイトルにふさわしいパフォーマンスが早期に上げられそうかという観点で面接が行われますので、これまでコンサルタントとして活躍してきた既存社員からの信頼を得てチームを束ね上げていける力量があるか、クライアントワークが問題なくできる方かどうかという厳しい視点で選考をします。

その為、コンサルティング未経験者の場合はシニアコンサルタントとしてまずはプロジェクトに対してパフォーマンスを上げることに専念してもらい、入社後にマネージャーを目指すキャリアパスを提案されることも珍しくありません。

また、コンサルファームの中には営業組織を別部門に置き、コンサルタントはコンサルティング業務に専念できる環境を作っている企業もありますが、その場合は営業担当者にコンサルタントのアサイン決定権がある為、コンサルタントは営業担当者に対し、自身の得意分野ややりたい事をアピールする必要があります。

3.面接において、SIからコンサルへの転職を目指す理由を述べる際の注意点

ここまでに述べたようにコンサルファームの特徴は多岐に渡るのですが、この特徴を理解せず、また自分自身の強みや将来を明確に描ききらないまま、「スキルを活かしてキャリアアップしたい」や「年収をアップさせたい」、「将来は事業会社で経営に近い立ち位置に行きたいからコンサルを経験したい」、「同僚がコンサルティング会社に転職をしているから受けてみよう」などといった、転職の動機となった理由のままコンサルティングファームへの転職活動を進めてしまうと、せっかく面接まで進んだのに、「やる気は感じられたが、何が出来て何がやりたいのか不明瞭」「話にまとまりがない(しっかり自己分析ができていない為、質問に対して考えながら回答してしまう方に多い)」、「うちの会社(またはチーム)だと希望している事が出来ない。」などといった理由でお見送りとなってしまったり、別部門での再選考となり、選考の長期化が起こり、他の企業との進捗が合わなくなってしまい、選考を受けきれずに辞退・・・といったことも発生します。

これは大切な転職活動において機会損失を生んでしまい、大変勿体ない事です。また、コンサルティング会社の面接官はほとんどが現場のコンサルタントであり、一緒に働くメンバーや上司となる方です。面接の中でお互いが有意義な話をする為にも、コンサルティング会社の特徴やご自身の強みや将来伸ばしていきたい分野を明確にした上で面接に臨まれる事が重要です。これは、入社後のミスマッチも減らし、入社後の早期の立ち上がりも見込めます。

最後に・・・

現在では、企業の課題が多種多様になってきている背景もあり、SIerでもコンサルティング業務を行っていたり、コンサルティング会社でもSI業務を行なっていたりします。

コンサルタントの名前につられて入社したものの、システム開発やPMOの案件にずっとアサインされ続け、SIにいた時とあまり業務内容が変わらない・・・といった事や、反対にSIからSIのコンサルタント部門に転職をしたけれども、クライアントに深く入り込んでコンサルタントとして仕事ができている、といった事例も往々にしてございます。

その為、業界の研究はもちろん、自分は今何が出来て、次のキャリアではどんな専門性を身につけて行きたいのかといった、キャリアパスをご自身なりに描かれることをお勧めします。

個人的にはそのキャリアパスは将来変わっても問題ないと思っています。「将来どうなるかわからないから考えない」や「将来といってもそんな長くないし考える必要はない」ではなく、現時点の自分はどうなりたいのか、どんな時にモチベーションが上がるのか、ということなどを内省し、目標を設定してみてはいかがでしょうか。もちろん働きながらの転職活動においては十分は情報収集ができない場合もありますので、そのような場合は弊社のような転職エージェントに相談をしてみてください。