転職市場におけるSaaS業界の魅力

転職市場におけるSaaS業界の魅力

齋藤健介
2023/12/26

近年、急成長を遂げており、よく耳にするようになった「SaaS」。採用ニーズも活発で、大手もベンチャーも業績が伸びている稀有な業界です。

私としては激推ししたい業界なのですが、転職者の方とお話していると、「他の転職エージェントで紹介されたけどよく分からなかった」「聞いたことのないポジション名で自分の経験が生かせるか判断できなかった」と、転職の選択肢から除外してしまっている方も少なくないようです。

確かにSaaS業界ならではの独特な職種は多いです。そこで今回は、SaaS業界の基礎知識やポジションの特徴などについてご説明し、ミドル・ハイクラス層の転職先としての魅力をお伝えしていきたいと思います。

そもそもSaaS業界とは?

SaaSは、「Software as a Service」の頭文字が由来。簡単に言うと、企業や個人が、インターネットを利用して使うソフトウェアのサービスを指します。例えば、オンライン会議システムの『Zoom』、チャットツールの『Slack』、会計ソフトの『マネーフォワード』、顧客管理ツールの『Salesforce』などが有名ですね。

もとは海外で生まれた概念のため外資系企業が多かったですが、現在は国内企業も多く生まれ、テレビCMなども多く見かけるようになりましたよね。インターネットがあればオフィスでも自宅でも使うことができるので、リモートワークの浸透とともに爆発的に伸びている業界と言えるでしょう。

SaaSサービスには、「カスタマーファースト」「分析しやすく改善が円滑」「事業将来性が分かりやすい」という3つの特徴があります。それぞれ詳しく説明します。

①カスタマーファースト

「買い切り型」ではなく、「サブスクリプション(継続課金モデル)型」が多く、プロダクトを提供してからが他社との競合も含めてスタートになります。そのため、プロダクトを提供してからもユーザーの声を聞き、ユーザーに価値を提供し続けることが不可欠。「ユーザーにとって良いサービスを作る」ことが事業拡大に直結するビジネスモデルとなっています。

②分析しやすく改善が円滑

インターネットを経由して使うという特性上、「誰が・いつ・どの頻度で・どの機能を使っていて、どの機能を使えてないか」といったデータを把握することが可能です。
得られたデータを起点として、ユーザーをタイムリーに助けたり、プロダクトを改善したり、サービス全体の価値を高めたりすることができます。サービス改善のスピード感が他の業界とは格段に違うと言えるでしょう。

③事業将来性が分かりやすい

前述したように、SaaSサービスは一般的に「サブスクリプション型」であることから、売り上げの見込みが立てやすいという特徴があります。例えば、「1アカウント100万円/月」のものを10件年間契約できれば、毎月確実に1000万円の売上を見込むことができる、ということです。
そのため、投資家も投資先として検討しやすく、資金調達のしやすさに繋がっています。

営業担当が3回替わる!? SaaS業界独特の営業ポジション

SaaSサービスについて、基本的な特徴をご理解いただけたかと思います。次に、業界特有のポジション(職種)とその仕事内容についてご説明します。

SaaS業界は非常に独特なポジションに溢れています。例えば、営業職。従来は「法人営業」「個人営業」など、「誰を相手にするか」で分類されていましたが、2019年頃にセールスフォース社が提唱した、営業プロセスごとに担当者を分けるモデルが今ではSaaS業界の営業スタイルの主流になっています。それまで一人の営業担当が担っていた範囲が3つに分かれているため、業界に詳しくない方だと、「営業職で応募したいけど自分はどれに当てはまるの?」と一瞬悩んでしまうんですよね。

それぞれ違いを見てみましょう。

インサイドセールス

マーケティングが集客した見込み顧客に荷電し、アポイント獲得を行うポジション。ミッションは、いかにアポを獲得できるか&顧客へ深いヒアリングができるかです。
多くの場合、電話のみでアポを獲得することが求められるので、信頼関係を築く会話力や、説明力といったコミュニケーションスキルが重要となります。アポイントの設定がゴールのため、受注までのクロージングを行わないことも特徴です。

ちなみに、インサイドセールスにもSDR(展示会参加者や資料請求者への提案)とBDR(顧客リストなどから提案)という2種類があります。

フィールドセールス

インサイドセールスが獲得したアポに赴き、顧客折衝や受注までのフォローを行うのが役割です。商談でのクロージング(受注)がミッションで、契約書の締結や導入までのスケジューリングも担当します。

インサイドセールスが獲得したアポから担当するため、テレアポや商談獲得のための営業活動は行わないのが特徴です。

カスタマーサクセス

サービス導入後の顧客のフォロー、お問い合わせ対応が主な業務内容になります。フィールドセールスが受注した後に登場するため「カスタマーサポート」と混同されがちですが、新機能搭載時の説明や新サービス展開時の提案・説明も担い、クロスセル、アップセルを行うことから営業職の要素も十分あります。

ミッションは受注後のサービス継続。顧客とコミュニケーションを取り、サービス満足度を維持することが求められます。

カスタマーサクセスは、SaaSがサブスクリプション型のサービスだからこそ存在するポジションです。事業の持続的な成長のためには、年間の解約率を10%以下にする必要があると言われており、その実現のために欠かせないポジションなのです。

似て非なる職種だらけ! SaaS業界独特の技術系・企画系ポジション

SaaSサービスは顧客が使い続けるだけの「良いサービス」であることが重要と申しました。そのサービスづくりに携わるポジションも業界特有のものがあります。

プロダクトマネージャー(PdM)

よくプロジェクトマネージャー(PM)と間違われるポジションですが、サービス全体の構想から技術的にどのように実現するのか、サービス開発のすべてを統括するのがプロダクトマネージャー(PdM)です。PMとの大きな違いは、クリエイティブの領域(UIデザインやCXなど)まで担当する点と、システムの要件定義からではなく、サービスの企画段階から担当する点です。

最高のサービスをローンチすることがミッションで、エンジニアからPdMになるパターンもあれば、企画畑からPdMになることもあります。

ちなみにPMと表記してプロダクトマネージャーを指す場合もあるため、業界未経験者からすると本当にややこしいですね。

プロダクトマーケティングマネージャー(PMM)

サービスローンチ後からマネタイズを担うのがプロダクトマーケティングマネージャー(PMM)です。ニーズのリサーチや営業戦略の立案・実行まで全体を統括します。
サービスが生み出されてからの売上を達成するのがミッションのため、営業責任者のようなポジションと言えるでしょう。

PdMと非常によく間違われるポジションですが、PdMは「サービスができるまで」を担当し、PMMは「サービスができた後」に業務遂行を行うイメージです。

SaaS業界への転職が向いている人

ここまで、SaaS業界の基礎知識やポジションの特徴についてご説明しました。冒頭で「激推し」とは言いましたが、もちろん向き不向きはあります。SaaS業界に向いている志向の方は以下のような方です。

・その業界や世の中の「負」を解消したい
・新しい概念を創出したい/第一人者になりたい
・スタートアップな組織・プロダクトが好き
・ベンチャー志向、何でもできるようになりたい

SaaS業界自体が新興なこともあり、創業者の意志やビジョンを明確に打ち出している企業が多いです。そのビジョンの実現に直結するサービスを作っているため、中途採用の条件でも「ビジョンへのマッチ度」はかなり重視されます。

ミドル・ハイクラス層の転職者の方は、ご自身が仕事を通して社会をどう良くしていきたいのかといった軸がはっきりしていらっしゃる方が多いというのが私の印象です。SaaS企業が実現したい世界とご自身のビジョンがマッチしていたら、ぜひチャンスと捉えていただきたいですね。

また、一人当たりの業務領域が普通より広かったり、配置転換にも積極的といった風土もSaaS企業ならでは。採用の間口が広いインサイドセールスから入り、その後マーケティングに異動したり、カスタマーサクセスで入社後に商品企画に異動したり、いろいろなキャリアの可能性があります。経験を積んでステップアップしていきたいという方にもSaaS業界はおすすめです。

SaaS業界への転職のコツ

最後に、SaaS業界への転職に興味を持ってくださった方のために、少しだけ転職ノウハウをお伝えできればと思います。

SaaS企業に応募する際は、「業界を志望する理由」をしっかり言語化しておくのが大切です。一般的には「その企業を志望する理由」の方が大事と言われますが、SaaS業界はその独自性の高さからか、「業界への理解度」も重視する傾向があると感じます。

SaaS業界への志望動機や転職理由を考える際には、上記で説明したような基礎知識はもちろん、さらに詳細なSaaSサービスの特徴(例えば、セキュリティリスクや導入コストといったユーザー側のメリットデメリットなど)も押さえておくとよいでしょう。その企業が、SaaSから始まった企業なのか、もとはSaaSじゃなかったけどSaaSになった企業なのかといった違いも選考対策に役立つ知識になります。

私のSaaS愛が強過ぎて長くなってしまいましたが、SaaS業界はまさに「今」おすすめの業界の一つです。なぜなら、人材不足は日本全体の課題ですから、業務効率化に資するSaaSは、国が推し進めたい最重要事業領域なのです。

「よく分からない」という理由でキャリアの選択肢から外してしまうのは大変もったいない! SaaS業界に興味を持った方はぜひ、『type転職エージェント ハイクラス』にご相談くださいね。