納得感のある転職をするために必要な「転職軸」とは
転職エージェントとの面談で「転職軸は何ですか?」と質問されたことはありませんか?
私自身、この質問をエージェントがするのはナンセンスだと思います。転職軸は転職活動を進めていく中で確立するものだと考えているからです。
もちろん、カウンセリングの前から「転職軸はこれ!」とご自身で明確にされている方も中にはいらっしゃいます。それは良いことだと思いますが、大半の方は初回のカウンセリング時には明確には持たれておらず、転職活動を行う中で軸の変化が起きている印象です。
というわけで今回は、ミドル・ハイクラス層のご転職を支援する立場から、納得感のある転職を実現するために重要な「転職軸」についてお伝えさせていただきます。
そもそも転職軸とは
一般的に、転職軸とは「転職先を決める際に一番こだわりたい条件や環境」のことを指します。いくつか例を挙げるとすると下記のような項目がよくあると思います。
・業務内容
・スキルアップ
・働き方
・年収
・事業フェーズ
・開発環境
などなど
これらの優先度やこだわり具合は人によって違いますし、最終的に転職先を決める際の軸の絞り方も人それぞれです。強いて言えばミドル・ハイクラス層の方は「マネジメント職に就きたい」という役職軸や、「年収をもっと上げたい」という年収軸を掲げる方が多いかもしれません。
ご自身の軸を確立させられていないまま転職をしてしまうと、転職先に入社をしてから、「思っていたよりもやりたいことができない」「スキルアップが難しく、年収を上げるのに時間が掛かってしまう」などのミスマッチが起きてしまいます。
それどころか、応募したい企業が見つからず「転職活動が始まらない」なんてことになりかねないのがミドル・ハイクラス転職の特徴でもあります。
なぜなら、ミドル・ハイクラス層の転職では、企業側がそのポジションに期待するミッションを明確に定めていることが多く、若手ポテンシャル層の採用と比べて、求職者と求人のマッチ度合いがより重要になってくるから。
つまり、求職者側に軸が定まっていないと「この求人とマッチしているか」を判断することができず、そもそも応募のスタートラインに立てないのです。
逆に言うと、転職軸を確立することができれば納得感のある転職につなげられる可能性はぐっと高くなります。
では転職軸はどうやって決めたらいいのでしょうか。
企業情報を収集し整理することが大事
転職軸を確立させるために、転職者様に実施いただきたいことを2つほど紹介します。
あらゆる手段で企業情報を収集する
ご自身で企業の情報を調べていただくことはもちろん、面接・面談時に企業から直接情報を取ることも大事です。
口コミサイトなどでその企業の評価を見ることもできますが、実際の面接や面談で企業の担当者から生の声を聞くのとでは情報の正確性が雲泥の差です。その観点から、「面接をたくさん受ける」こともおすすめです。面接を受けていく中で企業の魅力に気付いたり、組織構成や環境、事業フェーズといったそれまで知らなかった要素が気になってきたりすることで、いろいろな角度で軸を検討することができるからです。
また、あらゆる手段の中には「エージェントを利用しての情報収集」も当然あります。エージェントは過去の面接通過者や面接でどんな質問がされたかなどのデータも蓄積していますから、我々とのコミュニケーションでも多くの情報を得ることができます。「この企業のこんな情報ない?」とどんどん要望を出していただければと思います。
ネットで正確な情報を集めるのには限界があるかと思いますので、「あらゆる手段で」情報収集をすることを意識して転職活動を進めましょう。
第三者の助言を聞く
収集した情報を整理し、あくまでも「自分にとって」の軸を確立することが大事です。
ただし、その「自分にとって」を考えるのには、主観だけでなく第三者による客観的な視点も重要だと考えます。あなたをよく知る身近な方や、エージェントから見て「その企業は転職軸に添えているか」を助言してもらいましょう。
最終的に決めるのはご自身ですが、人間の主観は思ったより偏りがあったり、潜在的に気になっている別の転職軸が顔を出したりして意外とスパッと決められないものです。助言をもらうというと他力本願な気がしてしまうかもしれませんが、情報を整理するための「壁打ち相手」だと思っていただくといいかもしれません。
例えば私はよくキャリアカウンセリングの中で、「年収アップと働き方だったらどちらをより重視しますか?」「では働き方と開発環境だったら?」というように、転職者の方の軸を探っていく際に二択方式を使います。そうすると、答えていただくうちに「あれ?開発環境が一番って言ったけど、今第一志望のA社で魅力に感じていたのは年収って言ってたな」など、ご自身では気づいていない矛盾が洗い出されることもあります。
第三者と対話しながらの方が、最終的に自分にとっての転職軸にたどり着きやすくなるのではないかと思っています。
転職軸が変化するのは当たり前
転職活動を始める際は軸がなくて当たり前ですし、選考が進んでいく中で軸が変化していくのも当然だと思います。実は「変化する」だけでなく、「増えていく」パターンも多いです。
実際に私がご支援した転職者の方でこんな方がいました。その方はエンジニアで、初回のカウンセリング時に定めていた軸は「優秀な同僚に囲まれて、最新設備の開発環境で気持ちよく開発できること」でした。その後、複数社の面接を通してさまざまな情報をインプットしたところ、最終的には「コミュニケーションをとりながら開発を進めることができて、キャリアアップが望める環境」を決め手に転職先を決定されました。
当初「キャリアアップ」という軸は全くなかったのですが、とある企業の面接で「将来的には事業責任者、CTO候補に」という条件に触れたことで軸が増えた事例ですね。
このように、面接やエージェントとの相談を通して企業の情報をインプットしていくことで転職軸の変化が起きていきます。そのため、エージェントと二人三脚で軸が何なのかを整理することが納得感のある転職を決めるために必要なプロセスだと考えます。
「そんなにコロコロ変わって大丈夫?」と思われるかもしれませんが、転職活動の最中は、どれだけ変化してもOKと個人的には思います。最終決断を出す際に「この会社に転職するのは●●だから」と納得できる軸が言語化できていればよいのです。
転職活動で得られる情報を整理し納得感のある転職を成功させるために、お気軽にご相談いただければと存じます。