ミドル・ハイクラス転職の「一次面接」の落とし穴

ミドル・ハイクラス転職の「一次面接」の落とし穴

中村 翔
2023/06/15

転職活動の最大の難所と言えば「面接」ですよね。中でもその名の通り「一次面接」は選考の第一関門です。この一次面接という選考フェーズにおいて、企業から割と高い頻度で言われる言葉があります。それは、

「お人柄やスキルは評価できるものの、コミュニケーションに関する懸念が拭えず、今回は残念ながらお見送りとさせていただきます」

というものです。「ミドル・ハイクラス転職でもコミュ力で落とされちゃうの!?」と驚かれるかもしれませんね。でも実は、私の体感では一次面接で落ちる理由のだいたい4、5割がこの理由です。

というわけで今回は、ミドル・ハイクラス層の転職をサポートする立場から、この一次面接とは何なのかを紐解いて、どのような面接対策をすべきかお伝えしたいと思います。

「書類選考は通るけど面接が通らない」「面接で落とされる理由が分からない」といったお悩みを抱える方のお役に立てれば幸いです。

一次面接で落とされる最大の理由は「コミュニケーション力の懸念」

面接で落とされる理由はいろいろありますが、大別すると3つに集約されます。私個人の所感で発生頻度が高い順に紹介すると、①コミュニケーション力懸念、②スキル不足、③人柄アンマッチ、となります。

まず、「③人柄アンマッチ」というのは、要するに企業や組織のカルチャーと応募者の人柄が合うかどうかのこと。選考の終盤、最終面接などで「本当にこの人を仲間に迎え入れたいか」というときに測られることが多く、一次面接ではこの理由で落ちることはそんなにありません。

次に、「②スキル不足」ですが、こちらも一次面接でNG理由になることは少ないです。なぜなら、一次面接の前に書類選考でだいたいのスキルは把握された上で通過しているから。業務に関する詳細なスキルは、現場社員や上司となる部門責任者でなければ測れないので、人事が面接官を務めることが多い一次面接ではそこまで重視されないのです。

となると、実際に会ってみないと測ることができない「①コミュニケーション力懸念」が一次面接で一番引っかかるポイントになるのは明白ですよね。

もちろん、「どの選考で何を見定めるか」は企業によって異なります。面接2回の企業であれば一次面接からスキルも人柄もすべて見られるでしょう。ただ、面接を3回以上設定している企業であれば、一次面接は人事、二次面接で現場上司、最終面接で役員、などそれぞれ見るポイントを変えて総合的に判断することが多いです。

一次面接を担う人事からすると、どんなにスキルが高そうでも、コミュニケーションの部分で懸念を感じてしまうと、業務上のトラブルへの疑念が湧いてしまい、「次の選考官へのパス」はまわしにくいものなのです。逆に、よほどのマイナスポイントがなければ一次面接は通過できるとも言えるでしょう。

「ビジネスシーンにおけるコミュ力なんて、ミドル層なら普通に持ち合わせているんじゃないの?」と思われるかもしれません。しかし、ミドル・ハイクラスの採用だからこそ、やや高めのコミュニケーション力が求められています。

ミドル・ハイクラスの人材を採用するということは、企業としては、「即戦力になってほしい」「事業の中核を担ってもらいたい」「マネージャー候補」という期待を持っています。なので、周囲を巻き込んだり、人を動かしたり、部下を育てたり、といったコミュニケーションの発生は必須。20代の若手であれば、コミュ力含めて入社後に育成しようと大目に見てもらえるかもしれませんが、30代以降ともなれば、今からコミュ力が劇的に高まるとは考えにくい。「自然に受け答えできればいい」はずの面接ですら懸念を感じさせるとなると、企業が採用を踏みとどまってしまうのも仕方ありません。

面接対策はインプットとアウトプットの両面から

では、具体的に「コミュニケーション力に懸念がある」とはどんな状態のことを指すのでしょう? よくあるフィードバックは以下のようなものです。

・話が長い
・質問に対する答えになってない
・端的でない
・かぶせて話し始める
・あいづち、リアクションが不自然

転職者の多くの方は、仕事の場面ではちゃんとできているんです。でも、面接ではこういうコミュニケーションを取ってしまう……。これにはミドル層ならではの要因もあります。

一つは、「面接への不慣れ・慣れ過ぎ」という要因。

例えば、新卒で入社した会社に10年以上お勤めで、これが初めての転職という方だと、そもそも面接に慣れてないため、緊張でうまく話せないことは多いようです。逆に、転職経験が多い方は、経歴がたくさんあるため整理しきれずに話が長くなりがちです。事前に練習するなど対策すれば回避できるだけに、これらの指摘で一次面接を通過できないのは大変もったいないことです。

そしてもう一つは、「面接対策の偏り」です。

面接前の準備と言うと、その企業について詳しく調べたり、応募ポジションの詳細情報を入れるといった「インプット」がメインになりがち。そのため、「上手に伝える」といった「アウトプット」の対策ができておらず、実際に面接の場になって初めて「しゃべれなかった!」と判明することも多いです。

ぜひ面接対策は「インプットとアウトプット両面から」を意識して、我々プロを活用していただきたいと思います。

「結論ファースト」と「具体性」を意識してコミュ力即改善!

最後に、意識するだけで即コミュニケーション力がアップする2つのテクニックをお伝えします。

結論ファーストで答える

ずばり、質問に対して結論から端的に話すことが大切です。例えば、今回の転職理由は何ですか、と聞かれた時には、「転職理由は○○だからです」「転職理由は○点あります」と結論を一言で答える。それから具体的な内容や状況を話すと良いでしょう。

具体的に答える

転職理由や志望動機を問われたときに、「自己成長」「社会貢献」「キャリアアップ」と答えようとしていませんか? これらは耳障り良く聞こえるが実は抽象度が高くてよく意味が分からない、危険なキーワードです。

・もっと成長していきたい(自己成長)
→どの職種でどんな方向に? なぜうちに入ったら成長できると思うの?

・もっと人の役に立つ仕事がしたい(社会貢献)
→逆に社会貢献にならない仕事ってある? 視点が低いのでは?

・キャリアアップしたい
→何がどうなったらキャリアアップなの? 大手ならどこでもいいのでは?

このように、抽象的な回答は面接官に余計な不安を与えます。特にミドル・ハイクラス層では、こうした思考の解像度の低さは致命的です。なるべく「具体的に答える」を意識して、回答を用意しておきましょう。

いろいろと説明してきましたが、お伝えしたかったのは「一次面接ではコミュニケーションで減点されないのが大事」というただ一点です。もしこうした理由から面接で落ちた経験がある方は、逆に言えばそこを直せば通過できるということでもあります。

ぜひ油断せず一次面接に臨んで、内定を勝ちとっていただきたいと思います。