転職活動でPM、PMO経験をアピールする際の「書類・面接」の注意点
外資系企業の人員削減が話題となる中、国内のIT人材の採用市場はまだまだ活況が続いており、DXなどのプロジェクト推進を牽引できるPM(プロジェクトマネジャー)やPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)人材のニーズは引き続き高い状況です。
30代、40代であればそれまでのPM、PMO経験を生かしてキャリアアップしていきたいと考える方も多いですよね。
PM、PMOの経験を生かして転職したい場合、一言で「経験をアピールする」と言っても、20代と30代以降では企業からの見え方が全然違うことをご存じでしょうか?
20代であれば「PM、PMO経験がある」というだけでアドバンテージになるため、多少アピール内容がふわっとしていても書類選考を通ることもありますが、30代以降の経験者の場合はそうはいきません。「正しくアピールできているかどうか」で、書類選考通過率が大きく変わってしまうのです。
というわけで本稿では、PM、PMO転職における、職務経歴書の記載内容の注意点についてお話しできればと思います。最後に面接におけるアピール方法の注意点にも触れていますのでぜひ最後まで読んでみてくださいね。
職務経歴書にPM、PMO経験を記載するときのポイント
結論からお伝えすると、職務経歴書は、PMBOK(ピンボック)の分類を軸にご自身の強みを記載すると伝わりやすいです。PMBOKとはご存じの通り、プロジェクトマネジメントのノウハウや手法を体系立ててまとめたもの。PMBOKの「10の知識エリア」と「5つのプロセス」は世界標準のようなものですから、これに沿って「この中のどこを経験してきたのか」「どの知識に強みがあるのか」を説明するのが一番分かりやすいと思います。
例えば、「タイトなスケジュールをしっかり管理した」「炎上し掛けた案件を何とか収めた」など、実務として当たり前のことは書いてもアピールにならないと思っている方が多く見受けられます。しかし、その案件の中でどんな役割を担ってきたのかを企業は知りたいので、これらはぜひ記載していただきたい内容です。「立ち上げ経験が多く統合管理の知識が豊富そうだな」「実行プロセスについてはたくさん書いてあるけど計画プロセスの経験はあまりないのかな。面接で確認しよう」といったイメージが採用担当者の頭の中に浮かぶかを意識してもらえればと思います。
逆に言うと、このように体系的に記載できていないということは「体系的にマネジメントしてきていない」という評価に直結してしまう可能性すらあります。実際に、書類選考NGの理由として「PMとしての視座が低そう」とフィードバックされたこともあります……。
「PMBOKを軸に」という点に気付かずにアピールポイントを記載しようとして、多くの方が陥ってしまうのがマインドアピールです。「こういう考えで取り組んでいた」、「こんなスタンスでマネジメントしている」などは記載してはいけないわけではないですが、あくまでもおまけ。冒頭でもお伝えした通り、20代はそれでよくても、30代以降は「戦力が測れない=評価できない」になってしまいます。
どういう案件をやってきたか見えづらいがために書類で落ちてしまう。これはぜひとも防ぎたいところですよね。私がこれまで転職のご支援させていただいた企業からのフィードバックを見ていると、特に書類選考の段階で人事・現場の方が見ている項目は下記2点かと思います。
①どのくらいの規模感、どこまでの範囲をマネジメントしてきたか
一口にPM、PMOと言っても、予算管理、品質管理、スケジュール管理など、マネジメントされてきた範囲や強みとしてきた部分は人それぞれ。ですから、携わったプロジェクトをただ羅列されても、企業はあなたの強みが分かりません。
案件を時系列で紹介する欄に、それぞれについて「どのような規模感のプロジェクトで、どのくらいの範囲をマネジメントしてきたのか」が分かるように記載しましょう。ご自身で特に強みだと考えている点まで記載されていると、より企業に強みが伝わりやすく、書類選考を通過しやすい傾向があるように思います。
②どの領域、どの業界をマネジメントしてきたか
企業は書類選考の時点で、その応募者の経験を活かせるポジションを判断したいと考えています。特に30代以降の応募者の場合、即戦力としてご活躍いただけそうかという観点で選考を行う企業も多いです。それは単純に「スキルが高ければ高いほど高評価」というものではなく、「得意とする領域のマッチ度」が重視されています。
そのため、担当されてきたシステム領域(人事システム、会計システム、SCMなど)や、業界(小売、流通、金融など)を分かりやすく明記することは大事です。例えば、「金融システムをやっていました」だけではなく、「勘定システムをやっていました」まであると尚良いでしょう。
これらは、職務経歴書のプロジェクト詳細欄に記載するか、自己PR欄の一項目として記載するのがおすすめです。職務経歴書のポイントは、選考する側が見たときにどういうことをやってきたのか具体的に分かること! 「一枚にまとめる」や、「簡潔にまとめる」ことよりも、「具体的」になっているかどうかの視点で見直してみてくださいね。
面接でのアピールする際の意外な落とし穴
続いて、面接ではどのように経験をアピールするかについて少し触れていきたいと思います。
面接でも企業が知りたいのは、「あなたがどんな経験をしてきて、何を強みとしているか」です。それを確認すると同時に、PM、PMOとして基本となるマネジメント力、案件推進力があるかどうかを見極めたいと考えています。
「あなたの強みは何ですか?」「自己PRをお願いします」と直球で聞かれることもありますが、企業や面接官によってはそうでない場合もあります。しかし、それはいろいろな角度からあなたの強みやマネジメント力、案件推進力を探っていると思った方がよいでしょう。
実際にどんな質問形式で見極められているかというケースを2つご紹介します。
【ケース1】職務経歴書に沿って経験を深堀りされる
ベーシックな質問内容となりますが、職務経歴書の記載内容に挙げられている案件の規模感、担当範囲、その中での立ち位置、場合によってはその案件が立ち上がった背景などを詳しく聞かれることがあります。
職務経歴書で読み取りきれなかった「強み」を確認するために質問をされている場合もありますが、その方がどこまで案件の全体像を理解してプロジェクトを進めていたかを見ている可能性もあります。
【ケース2】苦労した案件やこれまでの失敗について聞かれる
こちらも多くの面接で聞かれる質問です。企業としては、主体性を持ってプロジェクトを進めてきた方か、タフな案件を乗り越えたことがあるかなどを確認する意図があります。
炎上案件のリカバリーや、複数のステークホルダーとのハードな調整といった経験は、ご自身では強みと思っていなくても、企業から「強み」ととらえられる可能性は高いです。
これらの質問に面接で対応するためには、「自分が携わってきた案件の全体を把握していること」、「その中での自分の役割を全うするためにどう工夫して行動してきたか」が整理されている必要があります。
瞬時にそれを思い出して端的に伝えるのはどんな優秀な方でも難しいもの。ぜひ書類作成の段階から経験の棚卸しをしておくことをおすすめします。
アピールすべき「強み」を間違えないことが大事
以上、転職活動においてPM、PMO経験をアピールする際に注意すべきことについて説明してきました。基礎的な内容となりますが、ご相談者様に伝えると「言われてみればそうですね」という反応をされる方も多いです。
また実際には、転職を希望される業界や職種によってもアピールすべきPM、PMO経験は変わります。例えば、「コンサルティングファームなら高い視座」、「社内SEなら規模感のマッチ」、「メーカーなら業務知識」などなど。ご自身の数ある強みのうち、どれを一番アピールするかを間違えてしまわないように、ぜひ私たちコンサルタントの力を頼っていただだければと思います。