決算からみる企業の健康状態とは

決算からみる企業の健康状態とは

浅野智哉
2022/ 03 / 23

Web上から気軽に企業の決算情報が取得できる時代ですが、企業研究を行う場合に実際のところ何を見ればよいか・どこに注目すれば良いかイマイチわからないという方も多いかと思います。
(実務で決算や経営企画等に携わっている方は充分にご存知だと思います。)

記載している内容は全て重要なのですが、今回は実際の決算情報のうち代表的な財務3表から特に確認したいポイントをいくつか分けてご紹介いたします。

◼貸借対照表
別名B/Sとも言われ他2表と違い、過去を含めたトータルの財産実績を表している資料です。
企業がどのようにお金を調達して、どのように運用したのかという実績が記してあります。

特に確認したいポイント
1.純資産合計額
2.売掛金
3.棚卸資産(在庫)

1については債務超過の状態またはそれに近い状態にないかがポイントです。
債務超過とは、単純に手持ちの資産よりも抱えている負債(借金)が多くなっている状況です。
△または数値が低いと要注意となります。

2については、売掛金とは売上を計上していながら代金自体は回収されていないものです。
この値があまりに過大であると代金が回収不能となっている疑いがあります。

3については過剰在庫に陥っていないかの確認となります。
過剰在庫は経年劣化による価値の減少や維持コストなどのデメリットが発生する上、黒字倒産のきっかけにもなります。

◼損益計算書
別名P/Lとも言われる1年間にどれだけの売上がでていて、その内の費用を差し引いた利益がどれくらいあるかを表した表です。

特に確認したいポイント
1.営業利益・経常利益

営業利益は本業の収益、経常利益は本業以外も含めた事業全体の収益を示しています。
この値が低い場合は事業の収益性が低い為、要注意です。
仮に△(損失計上)になっている場合は事実上、営業すればするほど損失を出すことになります。

◼キャッシュフロー計算書
C/SまたはC/Fと言われる、1年間の「現金」の動きを記したものです。
具体的には下記3点となります。

・本業でどれだけ現金を産んだかの「営業CF」
・どれだけ投資を行ったかの「投資CF」
・資金調達の状況を表す「財務CF」

その中でも特に確認したいポイントが「営業CF」になります。

資金繰りの観点から非常に重要となります。実際の現金の動きを算出するという点において、前述した項目で見えない部分が明らかになるからです。例に挙げるとすれば先ほど在庫の注意で触れた黒字倒産危機の表面化です。

具体的にいうと損益計算書では売上分に伴った在庫しか原価として計上しません。
つまり、その年に大量の在庫を仕入れて多額の現金を使用したとしても、その内の売れた分でしか経費としか扱いません。損益計算書上では収益が出ていたとしても、実際には現金が殆どなく首が回らなくなっているというケースがあります。

以上が各項目でのポイントとなります。
説明を端折っている部分も多くそれ以外にも重要な項目はございますが、1つ1つの項目だけでなく3表をリンクして考える事が重要です。
また、上記だけでなくその企業の事業性質やフェーズも踏まえて考える必要もございます。

例えば、SaaSのようなストック型のビジネスは現状赤字だとしても、事業性質から黒字化してからの収益安定性は非常に高いものであるとも考えられます。

新型コロナの影響等で不安定な情勢が続きますが、より詳細を知りたい等あればぜひご相談いただければと存じます。