組織サイズから見込まれるキャリアの傾向について

組織サイズから見込まれるキャリアの傾向について

赤嶺貴子
2020 / 7 / 08

面談時に、どのような転職先を希望しているか、と転職者に質問すると、「職種」や「業界」、「上場の有無」「収益の安定性」「風通しの良さ」など様々なご希望を頂戴します。

その際に、「大企業」や「ベンチャー(少人数)」など、組織サイズ(企業規模)にちなんだお好みも多く伺います。

実は、この「大企業」や「ベンチャー(少人数)」他にも「300名くらいの中規模企業がいい」などという、組織サイズに関する企業特徴は、入社してからのご自身の業務やキャリア形成に直結する重要な要素です。

特に意識されてない、どちらでもいい、と思っている方でも、入社前に一度、ご自身の望む業務・キャリア形成とマッチしているかどうか、イメージされてからのご決断をお勧めしたいほどです。

組織サイズを意識したほうがいい理由、また、意識しないで転職すると、どのようなことが起きているかという事例も交えて今回はお話ができればと思います。

※大企業・ベンチャーという組織体への定義については様々な定義や議論が存在しますが、今回は、企業における人数の比較という意味合いで使用しておりますので、割愛させて頂きます。

●ケース事例

・Aさん(大企業→スタートアップベンチャーへの転職事例)

大学卒業後、大企業に入社されて一貫して人事畑(新卒採用・中途採用・労務企画・制度設計改変など)にてキャリアを積んでこられました。業界的にも成熟産業の大企業であることもあり、社内の制度類はほぼ出揃っていて、携わる業務がほとんど改善業務であったため、0から人事組織を立ち上げるスタートアップのベンチャー企業へ転職。
採用・育成など、経営者とリレーションをとりながら人事責任者として0から設計されご活躍されていらっしゃるものの、面談時には、再び大企業で人事のキャリアを積みたいとご相談を受けました。
ご理由としては、現職のスタートアップベンチャーでは、確かに様々な人事関連業務を0から立ち上げることができ、やりがいを感じられるものの、業務の幅が広すぎて人事としての専門性を追求していくのに不安があるとのこと。
伺ったところ、経理業務や総務業務など、バックオフィス業務をほぼお一人で担当されているようです。

・Bさん(中規模企業→大企業への転職事例)

大学卒業後は大企業のグループ企業にて、経理業務を中心にご経験を積まれたBさんは、決算業務やグループ会社の管理など、経理の責任者の次のポジションで幅広くご活躍されていらっしゃいました。また、人事や総務業務の一助ともなり、同社のバックオフィスにおいてはかなりの業務のご経験や人望がおありになった方です。
上場企業での経理の経験を積んでみたい、とのお気持ちから、大手製造業の大企業へご転職され、現在では管理会計のポジションに就かれたのですが、入社前後での業務イメージにギャップがあるというお悩みを面談では伺いました。
そのギャップとは・・・、業務内容についてBさんがイメージしていたよりあまりにもピンポイントでルーティンワークだった、ということです。

●組織サイズにおける特徴の比較

組織サイズの大小によって、業務やキャリアの何が変わるのか。
比較して見られる傾向については以下のように言えるのではないでしょうか。

・大企業(組織規模の大きな企業)

多くの人員がいること、また、組織規模からくる各業務のボリュームが多いため、業務が細分化されている。 入社して1つの業務で専門性をつけ、3年~5年前後で他の業務に異動するというジョブローテーション型を採っている企業が多く、業務の専門性を数年かけて身に着けながら、自分ができる幅を徐々に広げてキャリア形成していく。40歳前後で管理職へ登用される企業が多い。

・ベンチャー企業(組織規模の小さな企業)

人数が少ないため、様々な業務を担うことが多く、経験できる業務幅が大きい。(業務の垣根無く何でもやってほしいという企業が多い。)入社してからは、ご自身の担当業務はもちろん、組織の状況に併せて必要な業務を主体的に遂行しながらキャリア形成していく。早いと20代で管理職経験を積むことができる企業も多数。

●選考での面接官の視点

勘のいい方はお察しになったかもしれませんが、上記の特徴は、実は入社前の転職活動時においても、「入社後に活躍できるかどうか」という観点で、選考のふるいのポイントにもなっています。

<選考での面接官の視点>
・大企業からベンチャーへ転職する場合

業務を選り好みせず垣根をつけずに、幅広く遂行してもらえそうか、その素養があるか。マネジメントができる素養があるか。など
(お見送りの例)前職の大企業では1つの業務経験しかおありでないため、様々な業務で即戦力となれるイメージがわかない。

・ベンチャーから大企業へ転職する場合
1つ1つの業務を3年~5年かけて習得する環境であるため、腰を据えて長期でのキャリア形成のイメージができているか。専門性を磨いていく意識はあるか。
(お見送りの例)前職のご経験から、当該部署で即戦力として活かせるマーケティング経験は一部であり、物足りなさを感じた。

●まとめ

組織の大小により、良い悪いではなく、業務やキャリア形成の仕方に「特徴」があるため、どちらがご自身の意向に近いのかをしっかり描くことが重要になってきます。

また、大企業から大企業への転職なので安心、ベンチャーからベンチャーへの転職だから安心、ではなく、転職先の企業が、現職と規模が異なる場合は、少なからず同種のことが起きる可能性が高く、 転職活動時から少し意識されて、応募企業の選択やご入社の判断をされるとよろしいかもしれません。